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「来たるべき新しい時」

ここ数ヶ月で、世界はだいぶ変化したね。
もう今までの世界には戻らず、いいも悪くもこのまま進んでいくんだろうなぁ…ってのが実感だ。

スタートのチャイムがなった今、世界はひとつの空間に入って席に着き、同じ教室内で皆、同じ授業の講座を受けている。テーマは「来たるべき新しい時」。

過去の大変化の時、例えばスペイン風邪などのパンデミックの時にどうだったのか歴史を掘り返し、傾向や動向を再検証し、今できる対策を考えてそれぞれがノートに書き込んでいく。

発表されるのは各国なりの方法。先生は決まった答えを押し付けることなく、生徒たちがひとりずつ発表するのを頷きながら聞いている。

ここで授業が始まる時に、「テーマ」があっても「柱」を何とするかは特に決められてはいなかった。だから何を最重要とするかは国によって違い、当然導き出される答えはその柱に沿ったものとなっていた。

ノートの中身を覗き込んでみると、そんな柱となる、国別の重要なものランキングが生徒ごとに書き込まれていた。人命を最重要とするか、はたまた経済を最重要とするか…そこから次は自然環境だったり、医療、芸術、仕事、コミュニケーションから幸福度、尊厳、見栄やすり替え、やってる感に至るまで…様々なものがランク順に書き込まれている。

各生徒たちが出す答えに、正解や不正解はないのかも知れない。何故なら先生も答えを知らないからだ。だけどその発表内容から、その国が「何を最重要としているか」や、その重要度の順位が垣間見えている。

授業風景を教室の後ろから見ている私たちは、ただの傍観者ではなく、各生徒と同じ国に住む家族だ。自分の国だけでなく他国の発言も含め、愛を持って見守りたいところだ。

私の周りから、各国の発表の度に歓声が上がったり、ブーイングがおきたりしている。私は自分の国が発表する度に、少しうつむいてしまっていた。もしかしたらこの授業が終わるまでに、私は虚しさのあまり教室を飛び出してしまうかも知れない…

だけど教室には鍵が掛かっていて、授業が終わるまでは誰一人として外に出ることはできなくなってるのを私は知っていた。もはや完全に決着がつくまで、祈る気持ちで授業を見続けるしかないのだ。

勢いよく始まった授業も終盤に差し掛かり、生徒も私たちも心底疲れ切っていた。果てしなく長い時間が経過し、混沌としながら課題を論争していた生徒たちはやがていつしか、ひとつのゴールを目指すようになっていた。

どうかこの授業が、どの生徒や観覧者たちにとっても、素晴らしく意義あるものになりますように…今ではここにいる誰もがそう心から願っていた。

時計の針はカチリ、カチリと音を刻みながら、やがて0時を迎えようとしていた。ゼロ、始まりでも終わりでもなく、はたまた無限でもない。それはこの世の時であるのかさえも全く想像がつかない。

教室の黒板にはただひとつ、「可能性」という文字が大きく書かれてあるだけだった。

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