コラム | 縁起でもないこと
もしあなたの大切な人が明日死んでしまうとしたら
あなたは何をして どんな言葉をかけますか?
日常で「死」について語るとたまに「縁起でもないこと言わないでよ」と、人は言う。
でもその「縁起でもないこと」が至極当たり前にあっけないほど簡単に起きてしまうのも現実。
「昨日までピンピンしてたのに突然、、」なんてドラマではなく日常で意外に多く耳にする。
それでもきっと大多数の人が自分の身、自分の身の回りの大切な人には…と
目をそらしながら生活しているんだろう。
きっかけは覚えてないが、ある時からよくその「縁起でもないこと」を考えるようになった。
それと同時期に身内や愛猫を失って泣いている夢も頻繁に見た時期でもあった。
それまでは愛猫ひなこも、ゆっくりしたいのに「ニャーニャー」と構ってモードでうるさくて、たまに煩わしいと思うこともあった。
でもね、思ったんだよ。10年後いや5年後でもこんなに元気にジャレてくれるだろうか。
いずれ最期の時がやってくる。
その時にこのコはウチにもらわれて家族になって本当に幸せな人生、いや猫生だったと思ってくれるだろうか。
そんなこと考えるようになってからは、いつなんどきジャレてこようと煩わしいと思わなくなり、それまで以上に愛してあげようと愛しい気持ちでいっぱいになった。
「縁起でもないこと」
明日ひなこが突然目を開かなくなって、今日ひなことジャレた最期の思い出が「煩わしい」という感情で終わってたとしたらきっと一生後悔するだろう。
1人暮らしから、実家に戻り、家族の有難みを改めて実感したことがあった。
当たり前だと思っていたこと本当は当たり前じゃないんだと知った。
そして両親も歳をとり、一緒に生活していると否応なくその「老い」を認めざるを得ないという現実。
それこそ、その「縁起でもないこと」はよりリアルなものとして払拭できず、言いようもない不安が押し寄せることも多々ある。
学生時代、その後もひたすら親に心配をかけた。
今となっては笑い話にできもするが、当時は本当に寿命が縮まる思いをさせてしまったこともきっと数えきれないだろう。
今は心配かけてない、、とは思ってないが、
若い頃に迷惑をかけた分、これからは自分にできる限り全部返したい。
そしてたくさん一緒に笑えるように、たくさんの思い出をこれからも作っていけるように尽力していきたいと思う。
「縁起でもないこと」
死に至らなかったとしても、両親の年齢からして、1年後や、いや半年後、寝たきりになってしまう、認知症になり子供の存在すらわからなくなるかもしれない。
その時はその時で自分にできる精一杯をしてあげたいが、今は両親共に元気でまだ一緒にできることもたくさんある。
そんなこと考えると今、日常で「当たり前」にご飯食べたり、買い物したり、遊びに出掛けたりできることひとつひとつは、本当は当たり前じゃないんだと噛みしめるようになった。
元気で仲良くいられることがとても愛おしい大切な日々なんだと実感している。
いつか最期の時がきてお別れしなくてはならなくなったとき、
その人を愛してたら愛してたほど「もっとこうしてあげればよかった」と悔いは残るだろう。
それでもちゃんと「愛されて幸せな人生だった」と新しい世界へと旅立っていけるように、
そう思ってもらえるようにできたらなと思う。
「縁起でもないこと」を言う、もしくは考える。
これは本来はあまり良いこととして用いられない。
でもきっと必ずしも悪いことでもないんだろう。
ケンカした時、その人に対して優しくなれない時
それが最期のその人との時間だったらどうだろう
「あの時、あんなこと言わなければよかった、、」と、悔やんでももう謝ることさえもできなかったとしたら。
そう思うと少し見え方が変わってくるのではないだろうか。
最後にこの駄文をここまで読んでくれた人に敢えて「縁起でもないこと」を言う。
真剣に考えくれたら幸いなんだけどな。
「もしあなたの大切な人が明日死んでしまうとしたら、
あなたは何をして、どんな言葉をかけますか?」
〜 編集後記 〜
これは数年前にコラムとして書いて、そこそこ反響をいただいたものです。
当時のクライアントさんから、当ブログでの掲載を了承いただいた為、多少の加筆修正をしてお届けさせていただきました。
愛猫のひなこは17歳で天に還りました。
最期の時は家族みんなで自宅で看取り、息絶えるその瞬間は私がギュウっと抱きしめ、
その腕の中で「怖くないよ、心配ないよ、みんなひなこを愛してるよ」って声をかけ続けました。
泣きましたよ、相当。でもこの「縁起でもないこと」を書いたおかげもあり、
毎日を悔いなく全力で愛せました。きっとひなこもそれはわかってくれたと自負できるほどに。
両親は健在です。当時より遥かに老い、やっぱり「縁起でもないこと」の闇の呪縛はもっともっとリアルです。
でも精一杯、愛せています。
明日、明後日、今この文章をカタカタ打ってる1秒後だって突然の最期の時が来ないとは限らないんですから。
もう一度、問います。
「もしあなたの大切な人が明日死んでしまうとしたら、
あなたは何をして、どんな言葉をかけますか?」
毎日、愛しましょう。大切な人を、
そして自分自身も。
ひなた
※掲載した写真はひなこです。
世界一可愛いんだから!
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