「いま、だ来ぬ」上演日

今週の土曜日、8/6の17:00~、大学院の春学期につくっていた演劇公演、「いま、だ来ぬ」の上演があります。
一度、7月の中旬にやろうとしていた公演の振替公演です。

今まで、幾度となく手元のチケットはただの紙切れになってきたし、作り手側としても大なり小なりコロナの影響を受けてきましたが、いったん「中止」という形は初めて。
大学施設を使った公演ということで、実質的なダメージはないのだけれど、だからこそ、この機会に「上演」というものについて考えてみたいなあと思い。
上演=本番に向けて稽古を重ねるという演劇ならではの性質について、思考を書き留めておきます。

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頭の中でぐるぐるしていることが二つあって。
まず一つは、授業の中で先生や他の履修者の方と話したこと。

演劇は本番日が決まっていて、そこに向かって稽古をする。
仮に稽古が本番までに仕上がらなかったとしても、本番の日時はやってくるし、基本的には「本番」に間に合わせなければいけない。

演劇の稽古って、「本番が来ること」を前提として、そういう未来があることを前提として、成り立っている。

よくよく考えてみると、それって不思議だよね、と。
不確かな未来のために、今、そして数か月の時間を捧げている。

じゃあ本番が来なかったとしたら、全ては無駄なのかと言うと、決してそんなことはないし、稽古固有のものはたくさん生まれていて(私は稽古の時間がすごく好きです)。でも、本番があるからこそ稽古は行われるのも事実。

もし「本番のない稽古」というものがあったとしたら?その作品づくりは、きっと終わりを迎えづらいのではないかな。
本番という終わりがあるから、そこまでに作品を仕上げようと稽古を進める。けれど、作品は稽古を重ねれば重ねるだけ変化していくもので。ここが「最高地点」だと言えるようなものでもないから。
だから、「時間」という終わりを、「期限」を決めることで、なんとか一つの形に落ち着かせるのかな。


もう一つが、演劇の稽古で何をしているかって、「繰り返し」をしているんだ、っていう話で。
これは、友人きっかけで考え始めたことなんですが↓

ここで公開されていたトークの中で、上演の「繰り返し」という性質についてフューチャーされています。

でも私これまで、びっくりするくらい、上演でも稽古でも、「繰り返し」をしているという意識がなかった。このトークを読んで、初めて気が付いたと言ってもいいくらい、この当たり前のことをなんだか認識していなかったとうか。

言われてみれば確かに、同じ台詞を何度も口にして、同じ動きを何度も反復して、という行為が演劇なのだけれど、私の中では、【一度として同じことを繰り返しているという感覚がなかった】のです。
(流石に家で一人で台詞ぶつぶつ言いながら覚えてる時なんかは繰り返しの自覚があったけれど、それは稽古というよりは「反復練習」という感覚。)

その理由としてはおそらく、稽古をしている時(本番でさえも)私は常に、もっと良いパフォーマンスを模索しているからだと思う。どう身体を使えば、どんな間でどれくらいのスピードで、どんな言い回しで言葉を発すれば、【もっと良く】なるのか。そう考えながら稽古していると、同じ動き・言葉でも、繰り返しているという気がまるでなくて、繰り返しているということが背景に追いやられていたのではないかな。

でも、【もっと良い】なんて曖昧で。(さっきもチラッと書いたけれど、何が良いのか、わかりやすい正解があるわけでも、そこを目指しているわけでもないからこそ、難しいんですよね。)
何も考えていなかったとしても、稽古や上演、その全てが同じになる、なんてことは起こりえないわけで。

じゃあなぜ、【繰り返しではない・違う】と感じるのかと言えば、それはきっと、「繰り返している」からこそ、ではないでしょうか。

稽古は、「繰り返しているのに、繰り返しにはならない」し、「繰り返しているわけじゃないのに、繰り返しでしかない」もので。
演劇っていうのは、反復の中に(意識的にも無意識的にも)立ち現われてくる「一度きりのもの」を見出す作業なのかもしれません。


演劇の稽古は、本番という未来を目指して、繰り返しを続ける。
そして上演は、【終わりのない繰り返し】をある種強制的に終わらせて、人(観客)に届ける。
観客に届けることで初めて、演劇は稽古から一つの作品として立つことができる。
「終わり」が必要な理由は色々あるだろうけれど、きっと大きくはこれだと思う。

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こんなことを考えながら、「未だ来ぬ」上演日に備えています。
演劇は、「今・ここで」上演をしている/観ている ことが重要だと思っていたけれど、実は「未来」に依存しないと成り立たないらしい。

というわけで、どうか無事に上演~終演できますように!
学内外問わず、予約不要でご覧になれますので、もし良ければ〜。

※学外者の方も予約不要になりました!


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