本当は料理が嫌いではなかったのかもしれない

週末になるとスーパーで食料品を買い込む。

それは大人になってから長い長い間行っていたが、楽しんで買い物をしたことはなかった。週末以外はまともに料理をしていなかったし、その週末すら惣菜や冷凍食品をレンジでチンで終わらせることが多かった。

かつて、母から「料理を手伝いなさい」とよく言われたが、それが苦痛で仕方なかった。母は料理がとても上手な人であったが、私と食の好みが異なっており素材選びや味付けで反発することが多く「それだったら手伝う必要ないでしょう」と母からも料理からも逃げていた。

母は病気が悪化し始めてから一層料理に取り組んでいた。ただ思考や味覚などが歪んでしまったからか、冷蔵庫にあるものを相性とか色合いとか味とかを全く考えずに鍋に入れて煮込んでしまう。「それを合わせたら味がおかしくなるよ」と助言しても聞く耳を持たなかった。今思えば耳を持たなかったわけではなく、理解ができないほど病気が悪化していたのだと思う。最初はその料理を無理して食べていたが長くは続かず、罪悪感はありながらも捨てるしかなかった。だからといって私は仕事をしていることを理由に料理をせず家族はそれぞれ勝手に好きなものを食べていたし、私自身はチョコレートなどのお菓子を夕飯にすることが多くなっていた。

私は心が歪んでいたのだと思う。

先日母が亡くなったが、日々の習慣は変わることなくそれぞれ勝手に好きなものを食べている。週末にスーパーに行き食料品を買い込むところまでは変わっていないが、今は料理を少し楽しめるようにになった。普通の人にとっては当たり前のことだと思うが私にとって楽しく料理をすることは当たり前のことではなかった。私はもしかすると料理が嫌いなわけではないかもしれないと思った。抑圧されていたものが解放され、心で絡んでいたものが解けたのかもしれない。そして母が楽しそうに料理をしていた姿は葛藤はありながらも私の中に受け継いでいるのだと思った。


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■料理が楽しく感じるようになったきっかけ

料理が楽しく感じるようになったきっかけは恋人のダイエットスープ作りをマネしはじめたからと思う。

週末に近くなると「来週のスープの具材と味付けはどうしようかな」とワクワクしている。先日お互い作ったスープの食べ比べをした。私が作ったものを恋人に食べてもらうことなんてないと思っていたので、味見してもらうまでは不安で仕方なかったが「とてもおいしい」と言ってもらえて少しだけ自信がもてた。恋人のつくったスープは丁寧に手間をかけたもので、私にはマネができないようなおいしいものだった。少しでも近づきたいと思いながら今日もスープを作った。ちなみに今日のスープはロールキャベツをコンソメで煮込み、大豆、れんこん、里芋、シャウエッセン、パプリカと素材は和洋混在しているが、個人的にはかなりおいしくできた。

■最近ハマっているお料理系Youtube

そんなわけで、今まで見たことがなかった料理系youtubeを見るようになった。こういう動画は見ただけで作った気になるところがまたいい。またその通りに作ることはほとんどないが、こういうものを入れるんだとか参考にしている。

<ばくばクック>

最近ハマっているのが「ばくばクック」。おからパウダーを使用した低糖質スイーツレシピ動画が多く投稿されており、現在ダイエットモードでスイーツ大好きな私は非常に気になっている。また使用している材料の種類が少なく今すぐ手軽に作れるため、料理があまり好きでなかった私でも「作りたい」と思わせてくれる。どことなく映像がおしゃれでまた語り口調がやさしく癒やされる。

とはいえ、まだ料理が好きというところまでは気持ちが上がりきれていない。もしかすると食べてほしいという気持ちが好きにつながっていくかもしれない。

そして、なぜか恋人に「あーんして」と妄想している私がいた。