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#エモいってなんですか?〜心揺さぶられるnoteマガジン〜

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理屈ではなく何か感情がゆさぶられるそんなnoteたちを集めています。なんとなく涙を流したい夜、甘い時間を過ごしたい時そんなときに読んでいただきたいマガジンです。
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#短編

【小説】桜木町で、君の姿を

私の名前は「あみん」 変わってる名前だ。 親が昔はやった歌手から名づけたのだ。 一番ヒットしたのは『待つわ』という曲。 サビの歌詞はこう。 両親的には 忍耐力のある子に育つようにとの思いをこめたらしい。 そのせいもあってか 私は待つのが得意だ。 今日も私は待っている。 何を? 私の“運命”の人を。 私の運命の人は この桜木町のどこかにいるかもしれないのだ。 範囲広すぎ? そうかもしれない。 それでも私は待ち続ける。 奇跡が起こるのを。 * あれは今から三年前

いとしき隣人へ

ずいぶん前のことだけれど、そばにいてくれるだけでいい人がいた。 話を聞いてくれるだけでいい。 ご飯を食べるときに同じテーブルにいてくれるだけでいい。 横断歩道のないところを一緒に渡ってくれるだけでいい。 泣いてる私のとなりに座ってくれるだけでいい。 文句の止まらない私に大量の副流煙を吸わせても、やる気が出なくてもだもだしている私にスマホゲームの音を聞かせても、締め切り前に必死にレポートを終わらせようとしている私の目の前で寝ていてもいい。 そこにいてくれるだけでいい。 私に

誰々みたいに書きたい

 僕は太宰になりたい。私は谷崎みたいになりたい。自分は。あたしは。  そうやって、誰かになりたい、誰々みたいに書きたいと言ってものを綴る人の態度が、私は嫌いでした。  その誰かはもう存在するのに、そんな誰々になって、いったいどうするんでしょうか。それにそもそも、その誰々と同じように書くなんてことが、本当にできるでしょうか。自分はその誰かではありません。同じように綴ろうとしたって、それがなんでしょう。誰も太宰にはなれません。谷崎のようになんて、紡げるはずがありません。三島な

【短編小説】石狩あいロード 1/4【Illustration by Koji】

短編小説「石狩あいロード」の第1話です。 この短編小説はKojiさんとのコラボ企画の作品です。 幸野つみが小説を書き、それに対してKojiさんにイラストを描いていただきました。 全4話。第1話は約3000字。全体で約20000字。 それでは第1話をお楽しみください。 物語の始まりです。 ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ 石狩あいロード 第1話 小説:幸野つみ × イラスト:Koji ◆ ◇ ◆ ◇ ◆  帰りたい。  心の中で誰かが呟く。 「帰りたくない」  日差しの

君のことなんか、大好きでしかない

「で、これからどうするの?」 君が静かに、探るように放った一言に私は何も言えなかった。私はどうしたいんだろう。私は君とどうなりたいんだろう。目の前にはただ君が好きっていう刹那的な感情と君に抱かれたいっていう欲望が綺麗に二つきっとほとんど同じ大きさあるいは質量で並べられている。でもそれは目の前にしかなくて、数メートル先には何もなかった。暗闇、違う、そんなネガティブすぎる表現じゃなく、空虚あるいは煙に近い。見えそうで見えないもの、形のないもの、実態を掴めないもの。君のことなんか

結婚したかったかもしれない幼なじみの近況

が、急にFacebookで流れてきてハッとした。 ワールドワイドなあいつらしく、何度目かの海外旅行に出かけた写真が複数掲載されていた。 ていうか、Facebook開いたつもり、まったくなかったのだけど。 スマートフォンの誤作動でいつのまにかFacebookの新規投稿画面が開いていて、 しかも謎のひらがな呪文が羅列されていて、 あやうく乗っ取りみたいな投稿をしてしまうところで、 やれやれと慌てて投稿画面を閉じたら、 レンの知らない写真が目の前に表示されていた。 幼なじみ

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