初級者・中級者がやりがちな重大ミスを防ぐ方法 クリエイターの為の批評コラム
前回はこちらですが、今回は予告と違う事を書きます。
物語制作に限らず、初級・中級で必ずやるべき事というのがありまして、それは「作品を完成させる」です。やろうと思えば作品はいつまでも手を入れる事ができます。アーティストで絵画制作の場合よく言われるのが、「いつ筆をおけばいいのかわからない」というもの。限られたキャンバスの大きさの中にいつまで、どのくらい描き込めばよいのか。実際やっている人の話を漏れ聞く所、本当に際限がないらしいですね。
又は、自分の実力以上のものを作ろうとして途中で投げ出してしまう、というケース。辛い。それも大抵、自分ではこの位できると思ったし、途中までは上手くいっていたのに、って感じで。
その辛さの原因と解決法は後で書くとして、ここでは何故完成させないといけないのか、について先に説明します。
作品を完成させられなかった場合、単純に作業の種類が完成させた場合よりも少なく、その分経験が少なくなります。特に「完成かどうかを判断する見切り、決断」の経験が欠けてしまい、「作品作り」の最後の締めの感覚と経験が得られず、コツやノウハウが蓄積されなくなってしまいます。作品作りは終わりに近づく程それまでの経緯が作品をどう作り上げてきたか、方向付けてきたかが分かり、それが最後の瞬間にどんな出来映えとして完結するのかを知る経験が「完成」によって得られるのですが、それが蓄積されないと自分がかつてやったそのやり方が最終的にどうなるのかわからないので、又新しく作った作品で前と同じ事を結果が読めないまま繰り返す事になってしまいます。
折角使った方法・対処法が機能するのか分からない。時間も労力もかけたのに。
作品の感想や印象も分かりません。完成していれば欠点があっても次に生かせるのですが。
それだけ「終わらせる」という事は難しいのでもありますが、これが出来ているとどうなるか。単純に途中でほったらかしの時と較べて経験が多くなります。完成させた達成感もあり、工夫した点の効果の出方、程度も分かる。人に見せれば感想ももらえて参考に出来るかも。やろうとした事がきちんと伝わっているかも確認しやすく、何より完成させた事でもうその作品をどうするかについて考えなくてよくなり、その為に使っていた意識のスペースが空いて代わりに達成感のエネルギーが流れ込んで来るようになります。そのエネルギーは次の作品作りやその準備に使えるし、意識の空いたスペースには新しい知識や技術、練習する為のプランや新作のアイディアなんかを入れる事ができます。
作品は必ず完成させましょう。長い目で見ればそれが圧倒的に有利です。力がつきます。
とは言っても完成させられずに挫折する事もあるので、完成させられない原因と対処法をここに示しておきます。
大方の原因は、実現不可能な目標を立てたか、力はあるのにやる気がないか。やる気がない人はやらなければいいのが作品作りなので、何故実現不可能な目標を立ててしまうのか、に絞って説明します。
物語制作の初級・中級の場合、実力以上の目標設定という失敗は最も避けるべき事でありながら同時に最も起こりやすい失敗でもあると言えるかもしれません。
何故なら、実践経験の不足故に自分の実力が分からないだけでなく、同時に課題の難易度が分からないからです。出来る事しかやらなかったり出来ない事ばかりやっていたら自分の実力を正確に測る事はできませんが、深刻な事は課題の難易度の測り方を身に付けていない事です。自分の程度が分かってきても、課題の程度が分からないままだとやはり、無茶な課題を無茶と分からずやり始め、全力を出し切ったにも拘わらず途中で投げ出してしまい、得られるはずの経験やノウハウを取り逃がした代わりに挫折感や疑念を植え付けられる事になります。
随分酷い目に遭う事になります。
そこで、課題の難易度の測り方ですが、まずは何故課題の難易度を見誤ってしまうのかを説明します。
とりあえず簡単な事からやってみる段階を経てなんとなく基本が身に付いてきたかなという初級から中級の人は、経験上「自分の力」が感覚的に理解できるようになってくるはずです。数値化すると人によって基準がまちまちになるかとは思いますが、とりあえず感覚的に「これで力を50位使ったかな」とか「ここまでで自分の6割ちょっと位かな」とか。
そういう感覚を確かめながら、目の前の課題を80%までこなしたとしましょう。もし力を50使った場合「それで80%まで来たから、この計算だと100%まで完成させるのに後12.5、トータルで62.5の力がいる」「自分の力は70あるから、頑張ればいける」という感じになったとします。
しかし、実際にやってみるとそうは行きません。80%から先はそれまでと違い急に大変になります。力を5費やしても8%進みません。10費やして5%も進みません。12.5で完成するはずが90%にも達せず、70全て使い切ってもまだ90%にも届かず。最後の1割が、という段階にさえ辿り着けないまま、途中で投げ出す事になるでしょう。
この時、何が起こっているのか。
使う力の量に対して、「0~80%までの進み具合」と「80~100%までの進み具合」がまるで違うのです。4倍違います。マジで。
0から始めて10%、20%、25%、30%、33%、と節目節目で使った力の量を測りながら進めていくと、「かけた力の分だけ進む」という感覚が事実そのままなので、そういう感覚が確かなものとして感じられます。実際その通りなんですが、それも80%まで。理由は分かりませんが、80%から100%までの仕上げ段階に入ると途端に進み方が悪くなり、力の使い方のペース、濃度、爆発力、集中具合などを変え、大量に投入しなければ目立った進み方をしなくなります。
「百里を行く者は九十を半ばとす」と言いますが、作品作りの場合は80で半ばが来ます。力を50使って80%まで来たら、完成まで必要なのは全体で100の力。残り20%の為にこれまで(80%まで)に使ったのと同量の力が必要な計算になり、心の準備が出来ていないとその唐突な困難さに面食らい、焦りと戸惑いで心乱され、心身共に無用に疲弊させてしまいます。挙句、「そもそも今の自分の実力では不可能な目標だった」と思い知らさせるのでは、流石にあんまりではないでしょうか(そうは言っても、世界は無慈悲だったりしますが)。
なので、そうならないように、又、完成させる事で得られる経験の全てを確実にその手に掴む為に、「80%まで」と「仕上げ段階」の違いを把握し、完成までに必要な力の量を正確に弾き出せるようになりましょう。
さて、作品作りが80%まで来ました。使った力は50、自分の力の総量は70、残り20では完成させられません。目標を下げましょう。今取り組んでいる作品をマイナーダウンさせる手もありますが、新しく別の作品に挑んでも構いません。その目標は最初から無理だったのですから、まだ20の力が残っている内に撤退しましょう。出来れば完成度40%で使った力が総量の1/4を越えたかどうかをチェックできると良いです。その内に少し手をつけてみると「あ、これ無理っぽい」と分かるようになり、構想段階で「無理だから違うので行こう」と即断できるようになります。それは十分な数を「完成させる」経験によって得られるものです(完成させる程「最後まできちんと作る大変さ」を味わう事になるので、実力以上の力が必要な仕事を見分ける力がついてきます)。
不思議なもので、自分の力をどのくらい使ったかというのは意外と正確に分かるものです。半分というのはかなり分かりやすい指標でもあって、最初の内は80%まで作って半分以上力が残っているかを目安にするのが早道かと思います。完成させられない原因は「必要な力の総量を低く見積もってしまう事」で、それは「途中から力を使う量と進み具合が大きく変わる事」「なのに80%まではすいすい進んでしまう事」が陥らせる罠です。やっていて仕上げ段階に入り、辛くなった時、自分の力が半分以上残っているかを確認しましょう。なければ少しでも力が残っている内に別のもっとやりやすい目標に切り替える。半分以上あるなら適正な難易度なので頑張ってやり切る。ほとんどの人はやってる最中に成長したりしないので、完成させる事での成長を目指した方が伸びが良いと思います。
次回は、この話を発展させるか、元の路線に戻すかです。
続きます。
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