中級者がやるべき抽象的メソッドの具体化演習 クリエイターの為の批評コラム

前回に続いて物語制作中級者がやるべき事の話。


魅力的なキャラクターを作る、という段階から次のテーマ、「キャラクター同士の関係や特徴の組み合わせと、それがドラマ性や世界観とどうつながっているのか」に移ります。大体において物語は個々人が孤立しているわけではなく、繋がりがあります。チーム戦であったりコンビであったり、あるいはまず仲間集めから始まったり。そこで特徴の組み合わせが発生し、キャラクター同士の何らかのやりとりがその方向性を見せていく事になるのですが、この時既に、世界観に観点を移さなければならなくなっています。というのは、コミュニケーションがどのように為されるか、そこで行き来する内容はどのようなものになりうるかは、世界観に左右されるからです。

携帯電話や恒星間通信などの特殊な技術が使用可能か、あるいはただ話すだけでよいというほとんどの場合にせよ、何を話題にしているかという点は、現代日本や近未来、異世界や中世、推理物か恋愛物か、宝探しか怪物退治かで違ってきます。前回書き忘れましたが「逆転、意外性のある特徴の組み合わせ」で出来たキャラクターの行動や反応は、場合によって相反するように見えながらどちらかが虚偽という事もなく両方真実という事がありえます。優しそうに見えて冷たかったり、ある面で非常に強く頼りになるのに大した事ないものが凄く苦手で震えてしまうなど、落差はあれど矛盾はありません。ギャップ萌えですね。

こういう要素を具体化する時、世界観にフィットした物を設定しなければなりません。物凄く当たり前の事ですが、一応押さえなければならない点なので。勿論、時代や場所、舞台が現代でも日本でもないケースでは、社会構造や物事1つ1つに対する認識や反応の仕方が変わるはずで、単純に常識が違います。基本的人権はあるのか、貨幣や労働の概念はあるのか。冒険者になって地下迷宮に潜ってドラゴンを倒してお宝ガッポリせしめるようなストーリーはシンプルで素敵ですが、これを現代社会に持ち込むと銀行や宝石店に乗り込んで警備員を無力化し、金目の物を奪って逃げる強盗です。世界観に応じてストーリーのイメージが全然違ってしまう。こういった相性や効果は覚えておくべきでしょう。こうなるとキャラクターメイキングの際にまず世界観が決まっていた方が、その世界観における役割の具体的な名称が確定していたりして便利そうです。

物語を作る時にまず世界観から作る場合(今そういう方がどのくらいいらっしゃるのか不勉強故把握しておりませんが)。作りながら「この世界観でどんなストーリーが描かれる(べき)だろうか」「この世界観を最も活かせる主人公とはどのような存在だろうか(特殊な世界観ほど幅広い立場、階層の存在にアプローチできる主人公が望ましい{作品で描ける物事の幅が広い分、より多くの魅力を伝えやすくなるし、主人公が触れる事で世界の隅々まで充満した魅力を描き尽す事が出来る})」を常に頭のどこかに引っ掛けておかねばならないくらい、他と世界観の関係を意識する事が重要です。世界観だけ出来上がってその魅力の伝え方が分からないのではもったいない。そして世界観だけ共通したバラバラのエピソードより登場人物が一貫している方が物語らしいので伝わりやすい。そのような存在の方が、最終的に「世界の謎」にアクセスできる者になり得る為、物語を膨らませやすくもあるでしょう。

ストーリーやキャラクターから作るタイプの中級者でしたら世界観はまず大雑把に「ジャンル物」として捉え、あまり凝らずに徐々に世界観を付け足したりしながら展開に合わせて見せていくやり方がいいかもしれません。適度に、少しずつ、必要な設定が明かされていくように、必要なキャラクターなり道具なりを配置し、利用しましょう。『ハンター×ハンター』では念能力とその特徴の解説は修行や戦闘の最中に行われ、一気に全てを説明しようとはしませんでした。世界観的にはおかしな事ですが、物語の語り方としてはとても正しいと思います。

世界観は説明する必要があるので、下手なやり方ではつまらなくなりがちです。そこで受け手を飽きさせないように、魅力的なシーンと共に解説しましょう。そのキャラクターのその特徴が、その世界観の中でどのようなものなのかが上手く説明できれば、受け手はそのシーンを楽しみながらキャラクター達を理解していく事でしょう。

ストーリーから物語を作る時、いきなり全ての筋書きが一辺に脳裏に浮かぶ人は少ないのではないでしょうか。「これだ!」というワンシーンがパッ、と浮かぶ事はあっても。いきなり全てが見えるなら多分世界観もキャラクターも同時に出来上がっていると思いますが、ワンシーンだとその前後、そのシーンに至る過程とその後にどうなるかという展開を考える必要があります。それによってキャラクターを作るきっかけを得る事も出来るでしょう。

ストーリーには形や典型、パターンとバリエーションがあり、それをおおまかに覚えておけば大体使えるようになります。全てのパターンを丸暗記する事が可能かは知りませんが、丸暗記するより一部の典型や類型を分離した要素として捉え直し、バラバラになったストーリー上の各要素をキャラクター性や世界観に応じて組み合わせ、あれこれ組み替えられる方が物語作りには活かしやすいのではないでしょうか。その方が早く、何人かで集まって色々と案を出す際にはやりやすいと思います。

キャラクターにしろ世界観にしろストーリーにしろ、何らかのモチーフ、トレードマークとなるような何かが物語をイメージ付けるでしょう。髪型やアイテムや科白、風景や建築物やガジェット、展開の仕方やシーンの区切り方や物事の始まり方など、物語やその場面のムードを作るものは様々なレベルで描く事が出来、特に話の流れの作り方はワンショットでどうにかなるものではなく構成や積み重ねによるものですから、これが出来ると力がある、という実力を測るある種のバロメーターにもなっているのではないかなと。

中級者の場合はそこに至る幾つか手前で、展開の仕方を色々リサーチして自作に取り込んでみたりあれこれ工夫しながら、キャラクターや世界観との相性を体感として理解していくくらいが丁度良いのではないでしょうか。いきなりハイレベルな事をやるのは無理ですから、ベタなものからバリエーションをつけてリズムや効果を感じ分けつつ数をこなして向上する事をオススメします。まぁ、反復がテーマですからね。このシリーズは。

ストーリーを反復するなら、同じ世界観、同じキャラクターが似たような事をするのが手っとり早い。『魔界都市〈新宿〉』とか『スレイヤーズすぺしゃる』、『ドラえもん』『サザエさん』、他、所謂一話完結形式の連載作品を作るつもりで、その世界観、そのキャラクターに出来る事を色々とやらせてみましょう。なかなか面白くならなかったら要素を付け足すとか新キャラを出すとかゲストキャラを絡めるとかして、やれる範囲で工夫しましょう。世界観を付け足しても構いません。その内予めストーリーがこうなりそうだと分かると先に世界観の方をいじったりするようになるでしょう。

世界観の説明仕方はメディアによってかなり異なります。漫画なら詳細な説明抜きでも描けばそれでいいケースがありますが、小説だと短篇でもそこそこの字数を使って説明する事を求められるかもしれません(長篇だとまず間違いなく要求されるでしょう)。世界観から作るのではない場合、キャラクターからなら、そのキャラクターはどんな世界観の中で一番輝くのか、ストーリーなら、そのストーリーはどのような世界観でなら魅力的に見えるのか、また物語全体、作品全体をどのように見せたいのか、その印象があるならそれを軸に、全てを組み立てていく指針とするよう心掛けましょう。

次回はストーリー・プロットを軸に進めたいと思います。

続きます。



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