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自家焙煎珈琲店の良いところと良くないところ:店を始めたい人へのメッセージその13

当店は豆売りのみの、いわゆるビーンズショップではなく、
「売上の主体は豆売りだが、カフェも併設されているタイプの店」です。
ちなみにコーヒー以外のドリンク、焼き菓子以外のスイーツやランチなどのフードはありません。

今回は、自家焙煎珈琲店の良いところと良くないところを、実際に自家焙煎珈琲店を約6年経営してきて感じるところを述べたいと思います。

数値を示して客観的にお話しできる部分はほとんどありません。要は主観、肌感覚です。

でも、この「肌感覚」というものは案外正鵠を射ているものです。

あ、これも肌感覚です。

それでは

1.(カフェと比較して)良いところ

①カフェとくらべ、立地はさほど重要ではない。→家賃(固定費)を抑えることができる。または自宅の一部を改装して店舗にするのも可。
ただし、クオリティの高いサービスと商品を適正価格で提供できることが条件。
ハイクオリティな店と地域に認知浸透すれば、お客様がわざわざ来店してくれる「わざわざ店」になれます。
そうはいってもやはり立地は良いに越したことはありません。
実感です。
立地は悪くても良い、なんて強がるのはやめます。

付記:近隣の同業者には無い品揃えでオンリーワンをアピールできて、さらに近隣の同業者が太刀打ちのできない高い技術力でナンバーワンになれたら盤石です。
せっかく開業するなら地域一番店を目指しましょう。

②カフェほどの床面積は必要ない→固定費を抑えることができる。
豆売り主体ならば、席数は最小限、スタンドバー形式でも可能なので客席スペースはミニマムで済みます。

③売上が席数の制約を受けない→努力次第で売上は青天井。
カフェは席数で一日の売上の上限は決まってしまいますが、豆売りは小売業なので、席数は関係ありません。アイデアと努力と行動力次第です。

④在庫と在庫管理が楽→初期投資が少なく済むし、管理も楽。
冷蔵、冷凍を要する食材がほとんど無いので厨房設備も極めてシンプル。調理器具も最小限。省スペースと初期投資抑制が同時に実現できます。

⑤オペレーションが楽→体力的に楽、少人数で対応可能
フードメニューが増えるほど、オペレーションが複雑になり、営業時間外の仕込み作業も増え、スタッフの負担が増大します。その結果、スタッフを増やす必要が発生して人件費が増大します。計算してみたら、フードメニューを充実させたことによる売上の増加分よりも、人件費の増加分の方が多かったという笑えない状況になります。
それに比べ自家焙煎珈琲店は、メニューに珈琲と焼き菓子しかなければ、フードメニューの調理作業がないので、オペレーションは豆の販売と珈琲の抽出作業だけになります。
ワンオペで十分です。

⑥食中毒のリスクがほぼない→安全で安定した経営ができる。
珈琲豆は、200℃前後からそれ以上の焙煎工程を経るため生物、微生物、菌、ウイルスなどは死滅消滅します。
また、珈琲豆の水分活性は生豆で0.6程度、焙煎豆はさらに0.2程度まで減少するので、仮に生菌やカビが付着しても増殖は不可能です。
つまり、時間の経過により品質や味の劣化はあっても腐敗はしないので、食中毒のリスクとは限りなく無縁です。
フードに関しても、焼き菓子に限定すれば、同様に食中毒などのリスクは相当減らすことができます。
当店で、冷蔵庫保管品といえばカフェ・オ・レ用の牛乳と、アフォガート用のカップアイスクリームだけです。
あ、安全だからぞんざいな管理をしても良いというわけではありませんよ。

⑦フードロスが極めて少ない→廃棄によるダメージが最小限
パンやケーキなら、作ったその日に売れ残ったら基本的に廃棄しなければなりません。
しかし、珈琲豆はそこまで足は速くありません。焙煎後数日は販売可能です。販売実績から販売量を予測して、焙煎量をコントロールすることも容易です。

⑧来店目的が明確で、質の高いお客様が集まる店になる→接客ストレスが溜まりません。
具体例をお話しすると炎上案件になる可能性が高いので差し控えますが、簡単に申し上げれば、店主が望まない、店に不利益をもたらす人間(お客様とは呼ばない)の来店率が少ないです。
私は、人徳のある素晴らしいお客様に囲まれて、毎日幸せです。

⑨客単価が高い→お客様とのコミュニケーションが密になる。関係が深まる。
豆売り主体の自家焙煎珈琲店の客単価は、カフェと比べて平均的に高いです。カフェですと、ランチとドリンクで1,000円から1,500円程度が一般的かと思いますが、当店の平均客単価は2,500円を超えます。
当店でさえこれですから、おそらく自家焙煎珈琲店のほとんどは当店以上だと思います。
売り上げ目標が同じなら、カフェ経営よりも少ない来客数で達成できます。来客数が少ない分ひとりひとりのお客様とのコミュニケーションに時間を使え、親しくなることができます。その結果としてサポーターになってくださるお客様が増え、客単価もさらに増大してゆきます。

2.(カフェと比べて)悪いところ

①軌道に乗るまでに時間が掛かる。
私に限らず、自家焙煎珈琲店の店主が口を揃えておっしゃることです。
本当です。固定客がつくまでにとにかく時間が掛かります。
「濡れ手に粟」はあっても「濡れ手に珈琲」はありません。
私のように商才に乏しく職人気質な店主は、良い物を適正価格で提供しつつ、地道にコツコツ、ひとりひとりのお客様を大切にしてゆくより他に手はないように思います。

②・・・・・・
これ以上は思いつきません。思いついたら追記します。


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