乾いた人生に5色の薔薇を添えて①

約3年前、私はニートだった。

遅く寝て遅く起きるを繰り返す生活に飽きていた。

やることはネットサーフィンや動画を見るだけ。趣味も特に無い私には、興味のない動画を延々と自動再生し、時間を潰すしかなかった。YouTubeはあらゆるジャンルの動画をお勧めしてくれるから選ぶ時間を取らなかった。

おすすめ欄に居座り続けている動画があった。仕事をやっていた時はずっと同じのがあるな、としか思わなかった。ニートになり、時間もあるし見てみようかなと思ったのがきっかけだった。


昔歌番組で、同い年くらいの子がパフォーマンス内で大人ぶりながらクサイ台詞を吐いていたのを見た。最年少デビューと言われチヤホヤされていた。言わされている感満載の棒読み。何だこの人たち、と見ている方が恥ずかしいくらいだった。私は気取っている人が苦手だからそのせいもあると思う。

面影は微かにあった。すっかり大きくなり、声色も低く男性の声そのものだった。

目を疑った。あんなに決め台詞を棒読みして着飾っていた彼らの姿ではなく、そこにはツナギの衣装で意味わからないボケを連発していた。


本当に同一人物か?


彼らに関するほぼ全ての動画を見るのに時間は掛からなかった。

見れば見るほど彼らのキャラクターを理解し始め、一人一人がどんな立ち位置なのか把握できてきた。

中でも一番私の興味を引いた子がいた。

一番の天然で、発言が全く予想ができない。常識という概念がないから、「利久」というお店の名前を「りひさ」と読んだりする。自分の発言で周りが何で笑っているかわからないけど、みんな笑っていて楽しいな、という純粋な笑顔でさらに笑顔の渦を巻く。

彼らの一人ずつの生い立ちや今までの活躍、成長、個性、グループとしての立ち位置、歌、番組など、知りたいことが山のように増えた。もちろん遮るものがない私は、親から就活の状況を聞かれて正直に答えることもできず「ぼちぼちだよ」と言いながら、必要最低限以外の時間を全て彼らを調べるために使った。

続く

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