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オフィスひめの通信 56号

執筆:西澤真生(ひめのともみクリニック医師)
発行月:2018年5月

今度こそ花粉症を治したいあなたへ―善玉菌をもっと応援しよう―

 今年の春は急ぎ足でしたね。厳しい寒さが終わったと思ったら桜も例年より咲き急ぎ、スギやヒノキも一気に花粉を飛ばしたようです。これまで花粉症から縁遠かった方にも多く症状が見られました。さて、花粉症やアレルギーを治したいと様々な体質改善を試みてきた方、成果はあがっていますか? なかなか変化が見られないという方は善玉菌への応援が足りないのかもしれません。
 生まれてきた時、ヒトの腸の中は無菌の状態です。今いる腸内細菌は、口に触れるもの、口から入るものなど外界から少しずつもらい育ててきたものです。つまり、腸にいる菌は人生の歴史そのもの。一人ひとり違った特徴を持っています。良い菌、悪い菌、日和見菌 註1)のバランスも人それぞれですから、菌のバランスを最適にする正解も一つではありません。今住んでいる良い菌を応援し悪玉菌が増えないように努力をしていきましょう。成果が出ない方は特に次の点に注意して努力を積み重ねてみましょう。

■ 善玉菌が住みやすい環境を作ろう
せっかく摂った善玉菌も腸内で増えることが出来なければ意味がありません。餌となる食物繊維やオリゴ糖を摂って善玉菌が生育しやすい環境を作りましょう。

■ 悪玉菌に加担していませんか?
あなたが糖分や炭水化物を食べたくなる時、悪玉菌が陰で操っている可能性があります。悪玉菌と呼ばれる菌は糖分が大好き。「糖断ち」で悪玉菌を兵糧攻めにしましょう。

■ 効く菌は人それぞれ・・・色々試すしかありません
持っている菌との相性もそれぞれ、善玉菌の役割も多種多様です。あなたが治したい症状によって効く菌が変わります。善玉菌を入れるもよし。自分の善玉菌を増やすもよし。自分に合った方法を見つけましょう。

■ 摂り方にも気を付けて
「生きた菌をカプセルなどで」がお勧めの基本路線。ヨーグルトだけに頼るのは要注意!摂りすぎると、知らず知らずに乳成分に対してIgG型のアレルギーになっていることもあります。

■ ストレスは大敵!
ネガティブな感情やストレスが善玉菌を減らし悪玉菌を増やすというデータも! そして悪い腸の状態は脳や 自律神経にも影響を与えます。ストレスコントロールには特に気を配りましょう。

 春は変化の季節。ストレスに負けず、腸内細菌を味方につけて元気に乗り切りましょう。

註1)日和見菌・・普段は特に良い働きも悪い働きもしていないように見えるが、善玉菌が増えると良い性質に変わり悪玉菌が増えると悪い性質を持つとされている菌。まだ働きが未解明の菌も多数あり。


ー食物繊維ー

 消化酵素で分解されずヒトの栄養成分にはならない食物繊維。でも腸の中では様々な有用な働きをしています。善玉菌の餌になるのはもちろんのこと、コレステロールや胆汁酸を吸着して再吸収を阻害し、排泄を促進します。血糖値の急上昇を防ぐことで  糖尿病、高脂血症の改善にも役立ちます。
 食物繊維は便の硬さを調節し容積を増やすことで快便を促します。便を滞留させないことで毒性のある代謝物がより排泄されやすくなり、発がんを予防する効果もあります。
 食物繊維は大きく分けて次の種類があります。

 特に高分子の食物繊維が効果的だと考えられています。繊維質の多い野菜の他、きのこや海藻、糸寒天、昆布水など、毎日の食事に上手に取り入れていきましょう。


ービタミンDについてー

 ビタミンDはちょっと不思議なビタミンです。食べ物から摂取するだけでなく、体内で合成することが出来るのです。合成には紫外線が必要です。摂取または合成したビタミンDは肝臓で25(OH)ビタミンD(一段階目の活 性化)となり、貯蔵されるかビタミンD結合蛋白と結合して血液中を運ばれます。そして腎臓や作用する場所で1,25 (OH)2ビタミンDというさらに活性の強い形に変わります(二段階目の活性化)。活性化を抑制したり活性の弱い形に変換したりすることにより、活性型のビタミンDが増え過ぎないようにして調節しています。
 活性化されたビタミンDは細胞の核の中に入って核内受容体に結合します。この結合体は、遺伝子に直接働きかけて目的とするたんぱく質の合成を調節していきます。このような作用の仕方はビタミンA(レチノイン酸)、甲状腺ホルモン、性ホルモン、ステロイドホルモンと共通しています。それぞれが結合する核内受容体も構造が似通っていることから核内受容体スーパーファミリーと呼ばれています。
 また、ビタミンAとビタミンDは相互に働きかけをすることもある為、ビタミンAとビタミンDを一緒に補うとさらに効果があがります。
 ビタミンDというと骨に関する働きが有名ですが、骨に関係する働き以外にもたくさんの作用があることが分かってきました。
 例えば…

  • 細胞の増殖抑制・常細胞への分化誘導作用 ⇒ ガンを予防する

  • 小腸粘膜上皮細胞の成熟

  • 細胞の接合部(タイトジャンクション)蛋白発現

  • 抗菌ペプチドの発現調節

  • 遺伝子レベルでのインスリン分泌刺激 ⇒ 糖尿病の改善

  • 免疫力の強化・免疫バランスの調整 ⇒ 花粉症が軽減した人も!

などです。
 
 ビタミンDは脂溶性ビタミンですし、ホルモンと似ているというとたくさん摂って大丈夫なの?と不安な方もいるでしょう。でも心配は無用です。ホルモンのような働きをするからこそ二重三重に安全弁がかけられています。私たちが食品やサプリメントなどで摂取するのは「活性化されていない」ビタミンDです註2)。必要な時、必要な場所で、必要なだけ活性化されています。ビタミンDをたっぷり貯蔵して必要な時に使えるようにしましょう。25(OH)ビタミンD濃度検査はビタミンDの貯蔵や運搬の状態を推定するために有用な検査です。

註2)骨粗鬆症の治療などに使われるビタミンD製剤は活性化型ビタミンDを薬の形にしたものですので用法を守って服用してください。

※刊行当時の内容のまま掲載しているため、現在の状況とは異なる記述もあります。

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