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オーディションに落ちることは、必ずしも実力がないからとは限らない

先日、劇団Яeality第8回公演に出演してくれた中田くんとご飯を食べに行きました。

中田くんは=9という劇団の主宰で、現在旗揚げ公演の稽古をしています。
その中で、オーディションの話になりました。
=9は、演出家(中田くんではありません)が合格者を決めたとのこと。私もかなり私の裁量で合格者を決めるのですが、オーディションで何を見ているかがかなり違いました。

何度もオーディションを受けているのに合格がない。そんな人は実力が足りないからなの?
私は違うと思います。

オーディションの合格は相性が9割

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劇団Яealityでは、ほとんどのオーディションが主宰演出である私が決定権を持っています。
今まで明確な合格基準を明言していなかったのですが(よく団員が許してくれたな)中田くんとの話でいくつかポイントがあったことに気がつきました。

・オーディション前に決まっている役者と身体情報が似ていない
・同じ組になる役者と声質が異なる
・役の要素として求められるビジュアルを持っている
・正直芝居が上手いとか見てない

もちろん、全てのオーディションがこのように決定している訳ではありません。「芝居が上手いとか見てない」ってのはかなり特殊だと思います。
でも、オーディションに落ちるのは実力不足だけではないってのは本当だと思う。

ビジュアルは正直何よりも大事

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舞台によっては、オーディション前にメインメンバーが決まっている場合があります。その劇団の団員とかのことが多いですが、一部の役のみオーディションを行うというのはよくあることです。

私が主宰する劇団Яealityも、大半の場合団員と数人のメインメンバーが決定した状態からオーディションがスタートします。
この時、身体情報が似ている役者は不利と言わざるを得ません

ダブルキャストの場合、同じ役を演じる人は身体情報が似ていた方がいいんじゃないの?と思われる方もいるかと思います。
例えば「絶世の美女」みたいな役だったら、美女という身体情報は一致しますが、私の場合それ以外の要素は出来るだけ離れたものを選びます。

ダブルキャストの醍醐味って「同じ脚本が全く違う物語に見える」ことだと思うんですよね。

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これは、劇団Яeality卒業公演(第7回)のキャストブロマイド写真です。
横に並んでいる二人がダブルキャストなのですが、割と雰囲気違います。
見た目も声質も異なる二人をダブルにしがち。ちなみに身長もバラバラです。
この時はオーディションをせず完全に声かけ式でした。
シングルキャストの団員との兼ね合いを考えつつ配役という形です。

決まっているキャストから合格者が決まる場合

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これ以降は劇団Яeality第8回公演のトリプルキャストの写真です。
まず、二人出演者が決定していて一人だけ募集する場合。
決定していた二人の特徴を書き出すと

・二人とも身長は低め(170cm程度)
・一人は声が低く、もう一人は少し高め
・線は細いがしっかりした体つき
・体育会系と文学男子の雰囲気

という感じ。
ここから、こんな人が欲しいなぁと思うのは

・高身長(170cm以上)
・声は高め
・役の雰囲気統一のために体の線が細い
・体育会系でも文学男子でもないタイプ

となります。
合格者は

・身長175くらい
・かなり声が高い
・体つきが細い
・ちょっと遊んでそうなタイプ

となりました。

オーディション募集の時には、「身長が175cmくらいで、声が高めで、線が細い人が欲しいです!」ってなかなか明言されません。
というかこの3つの条件に当てはまるかで合格が決まる可能性があるなら、実力なんて関係ないんです。

他のオーディション参加者との兼ね合いで合格が決まる場合

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続いては、一人だけ合格者が決まっていた場合。
こちらは上の場合よりさらに運要素が多いです。
決まっていた出演者は

・身長小さめ
・華奢
・落ち着いた雰囲気

といった感じ。
この役では役自体が持つ要素として

・相手役の女の子(主人公)よりも華奢であること
・悪役ポジションなのでその演技ができること

がありました。
悪役の演技はできても、主人公より華奢ってどんな条件だよ。。。と思うのですがしょうがない。そしてその主人公は3人ともオーディションでした。
正直運でしかない。

以下はそれぞれペアになった主人公です。
どちらかというと主人公との対比の方が重要で、オーディションの最後が終わるまで合格者を決定できませんでした。

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・同じオーディションで選ばれる役者との兼ね合い
・元々決まっている同じキャストとの違い

って、事前にわかることの方が少ないと思います。

悪役という情報だけ持っていて、完璧に悪役の演技をしたとしても見えない合格条件が立ちはだかるんですよね。
(ちなみにこの役、演技がめちゃくちゃ上手だったけれど、主人公より華奢に見せにくく不合格になった、という事例もあります。
彼女お芝居がうまかったよ。。。十分細くて可愛い方だった。。。でも合格にできなかった。。。ごめんね。。。また応募してください。。。。。)

欲しい要素が決まっている場合

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最後の事例です。
この役は神社の娘のJK役と、一千年前に生きた陰陽師役を兼ねている役でした。
Яealityでは珍しいけど、おそらく一般的なオーディションタイプである
「欲しいビジュアルが決まっている」役です。

この時の条件は

・髪型は短め(一千年前で出家している感じにしたかった)
・身長は160cm以下(作られていた衣装の関係)
・JKにも陰陽師にも見える雰囲気
・黒髪

でした。

このビジュアルを持っていて、なおかつJKではっちゃけ陰陽師でしっとり、みたいな。難易度高い。
でも、こういうある程度合格する人が予想できる役というのは、自分がマッチしていれば合格確率がかなり高くなります。
その上に乗ってくるのが実力なので、遺憾無くオーディションで発揮できればかなり良い線行くのでは?と思います。

ちなみにこの3人のJK役の時は、お節介系・面白系・しっかり系と三者三様になりました。そして一人は初舞台!

ビジュアルの次に大切なのは声質

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ここまで長かったですね。まだ続きます。この先はシュパシュパ行くわよ。

欲しいビジュアルが整ったら、次は組決めです。この組決めで合格者が変わることも多々あるのですが、私が組を作る時に重視するのは声質です。

主人公より華奢とか、体格が良いとかそういう条件がある場合、合格するのは2人1組になります。合格できるペアは募集枠より多いけれど、どのペアを合格させるかみたいな感じになるわけですね。

舞台の特徴として、観客が自由に視点を動かせる、ということが挙げられます。これは別の言い方をすると、見ていない方向でお芝居が動いている可能性があるということです。
特に推しの役者さんが出ている舞台だと、舞台に推しがいたら当然推しを見ますよね?推しがウンウンと頷いてるのかわいー!って思いながら見ると思います(私はそのタイプ)。
その「推しが今日も世界一可愛いタイム」を堪能した上で、お芝居も楽しんで欲しいと思うのです。

ちょっとずれましたが、舞台の見ていない方向でお芝居が動く時、声のみが物語を知る方法となります。この時に、声質が似た役者が同じ舞台に立っていると勘違いが起きる可能性があるのです。

声質がある程度異なっていれば、役者を見ていなくても誰が喋っているのか予測できます。端っこで気になるお芝居をしている人を見ながら、本筋を間違いなく追うことができる、というのはかなり芝居の満足度に比例するのでは?と思うのです。だって見逃すと話がわからなくなるっていうんなら、なるべく見逃さない方法をこちら側からも提供したいんですもん。

この声質も、他のキャストとの兼ね合いもありますが、強いていうならば特徴的な声の人が有利になるかもしれません。
(しかしそのキャラクターと声が合っていないと合格は難しい。。。)

見た目・声質・キャラクターを兼ね備えている人が受かる

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ここまでのお話で、見た目が美しいとか声が可愛いから受かる訳ではなく、相性や周りとの兼ね合いで決まることがあるのがお分かり頂けたと思います。

正直、これは受験者側には全く操作できないし対策もしにくいです。
オーディション前に決まっているキャストが発表されている場合は対策ができる可能性もありますが、体格を良くするとか声を変えるというのは極めて困難です。

オーディションは実力以上に運である、というのはあながち間違っていないと思います。
上記の例は、ただの一劇団での事例ですので、多くの劇団には当てはまらないかと思いますが、多かれ少なかれ上記の判断基準はあると思います。

「またオーディションに落ちた……。なんでだろう……?」と思っている方は、ちょっと違うかもなという役も受けてみたら意外と受かるかも知れません。だって周り次第だもの。

いただいたお金は!!!全て舞台裏のためのお金にします!!!!殺人鬼もびっくり☆真っ赤っかな帳簿からの脱却を目指して……!!!