ポックル
「ポックル、おはよう」
僕のご主人さまは毎朝カーテンを開けるとき、声をかけて撫でてくれる
それが僕の1日の始まりだ
今住んでいるところは朝陽が入る陽当たりのいい窓があるところ
最初は手のひらに乗るくらいの大きさだった僕は今じゃご主人さまくらいある
ご主人さまの旦那さまは、俗にいう「転勤族」で今の家は6つ目のお家だ
だから今回の引っ越しも慣れっこだった
でもご主人さまは毎回毎回
「ポックル大丈夫かな?もう引っ越すの慣れたかな?新しいとこで馴染めるかな?ちゃんとまた元気になるかな?」
って心配する
ご主人さま
心配なのは僕じゃないよ
僕は知ってるよ
お引っ越しをする度に
慣れた土地を離れて、お仕事をやめて、お友達とお別れして
またまったく知らない土地で、新しい生活を楽しく過ごせるようにいろいろ調べて、新しいお仕事を探して、
「今度の場所は、どんな人いるかな」って新しい出会いに期待と不安を持って
旦那さまが仕事へ行っちゃえばひとりぼっちで孤独を感じてるたびに
なかなか授かれない小さな命を思うたびに
遠く離れてしまった家族や友人たちと会えない寂しさを感じるたびに
旦那さまがいないところで泣いているの、僕は見ているよ
旦那さまが大変なの、わかっているんだよね
自分の悩みは誰かに相談しにくい悩みだからって相変わらずネガティブなご主人さま
でも僕の前では弱音はいていいんだよ
僕は観葉植物のカポックだけど
ご主人さまに名前つけてもらって、声をかけてもらって嬉しいんだよ
だからせめて僕はご主人さまに元気になってもらいたくて
「あっポックルすごーい!たくさん新芽出たね!ここのお家も大丈夫だね!」
って嬉しそうに笑いながら葉っぱを撫でてくれるご主人さまを見て安心するんだ
ご主人さまが気づいてたらいいな
すぐ近くにいつもご主人さまの幸せを願っている僕がいることに