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主役は自分。一冊の本で人生が動きだす。

こんなはずじゃなかった今日

私は今、何をしているだろうか。

某有名レストランの、リコッタチーズパンケーキが運ばれてくるのを待っている。
隣には、ベビーカーですやすや眠る娘。

話は3時間前に遡る。
会社にいれば前期末で大忙しだが、珍しく何の予定もない。
最近、保育園の見学やら用事が重なっていたので、久しぶりにゆっくりできる。

今日は何をしようか。

そういえば先週末、お出かけ先で通りかけた、水槽のお魚に見入っていたな。
そろそろ水族館に連れてってあげたいけど、勝手に平日2人で行ってしまったら、水族館デビューを逃したパパが悲しみそうだから、やめておく。

娘の朝寝の間、kindleでたまたま見つけた本を読んで、今日の予定が決まった。

子供の才能をめきめき伸ばすには、まずお母さんが幸せになりなさい/堀切トシエ

今まで読んだ育児本とは、違った角度で楽しめる本。

これまで読んだ本は、子ども目線で「これをしてあげましょう」という内容が多かった。

この本は、「お母さんが好きなことをしてニコニコしていれば、子どももよく育つ!」と、完全にお母さんが幸せであることに重きを置いている。


「〇〇ちゃんのお母さん」というアイデンティティだけを持っていませんか?

育児に一生懸命なお母さんほど、陥りやすいのではないだろうか。

子どもが生まれると、気づけば自分がお母さんというキャラクターに変身した人生を生きていて、自分のやりたいことを探したり、自分の欲求を満たすことを忘れがちになる。

そうすると余裕がなくなって、子育てが思う通りにいかないとイライラする。
自分の子どもと他人の子を比べて、不安になってしまう。

でも、その子は私自身じゃない。
私の理想を子どもに押しつけていることが、子どもにとって幸せとは限らない。
だから私は、私のやりたいことを精一杯やって、ニコニコしていよう。

親を越える子、子を越える親

「私のお母さんみたいだな」
読み終えた後に、この本が目指すお母さん像を体現する人として、1番に思いついたのは私の母だった。
母は、自分のやりたいことをとことん突き詰める人だ。
私のやりたいことにも私以上にどハマりして、自分のものにしてしまう。

小学校の頃、ビーズアクセサリー作りにハマった時期があった。
私のブームは長続きしないのだが、ちょうどブームが下火になった頃に母がハマり始め、ついには教室にまで通い出し、アクセサリーの大量生産に至った。

当時はメルカリやCreemaなどの売る手段もなかった。
その結果、実家のぬいぐるみは皆、もれなく母の手作りアクセサリーを身につけている。


高校の時もそうだ。
私が合唱部に入り、コンクールを聴きにやってきて感化された母は、合唱を習い始めた。

通常なら経験者しか入れない合唱団に、たまたま1人初心者が混ぜてもらえたようで、発表会のスケールがとても大きかったことに驚いた記憶がある。

引退と同時にあっさりやめた私とは対照的に、母は15年経った今も、歌のレッスンに通っている。

たしか本の中に、オセロのくだりがあった。
最初は親の方が上手なんだけれど、子どもが夢中になるにつれ、真剣勝負でも歯が立たなくなった、というエピソード。

私と母との間には、その逆転現象が起きた。
合唱部現役の時は、よく母に発生練習や楽譜の読み方を教えていた。
私に娘が生まれて子守唄を歌うようになった今、楽譜が読めなくて、母に移動ド(音階の読み方の一種)を教えてもらっている。

母は自分の人生を生きている。
私を育てながら、新たな趣味を見つけ、パワーアップしてカラフルな人生を送っている。

パンケーキが今日という日にトキメキをくれた

話は脱線したが、そんなわけで私は決めた。
母としての人生を生きるのではなく、娘をもつ自分の人生を生きることに。

スーパーへの買い出しのついでに近所の公園を散歩して帰ろうか、と思っていたが、自分へのご褒美にパンケーキを食べに行くことにした。

帰りに水槽のお魚を見て、買い出しもすればいいじゃないか。


お店に到着する。
娘はうとうと。なんと空気の読める子だ。

実は、ランチタイムに大人1人でここに来たのは3回目。

1回目は、食事の後、デザートにパンケーキと思って張り切ってやってきたが、あまりにもランチが山盛りすぎて、パンケーキの注文自体を断念。

2回目は妊婦時代。
ノンカフェインのドリンクを頼もうと思い、美意識を高めてくれそうな野菜スムージーをセットで頼んだが、背伸びしすぎたのか、口に合わなかった。

3度目の正直の今日、軽い前菜と、本日の主役のパンケーキ、カフェオレを注文。
ちょっとはこなれてきただろうか。

「お待たせいたしました。
ハニーコームバターをよく溶かして、メープルシロップをお好みでかけて、お召し上がりください」

わぁ、ふかふかのお布団のようなパンケーキが到着。
熱々のうちにバターを溶かして、まずはそのまま一口。
ほんのりした甘さとバターが口の中に広がる。
思わず目を瞑って、幸せを噛み締める。

今日を何もない日で終わらせずに、思い切ってここに来れたこと。
娘の寝顔を眺めつつ、美味しいパンケーキを食べられたこと。
自分の人生を豊かに生きるお手本が、すぐそばにいると気づけたこと。

いま、この瞬間を過ごせることにありがとう。

娘が起きたら、一緒にお魚を見て、晩ごはんの用意を買って帰ろう。
一緒についてきてくれて、ありがとうという気持ちと共に。

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