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『くるま麩 四回巻』パッケージのプランニングとデザインについて

新潟県新発田市にある宮村製麩所の四回巻くるま麩。
こちらの商品のリパッケージに携わらせていただきました。

リパッケージを提案した経緯

実は最初にお話をいただいた時は、
「ギフトボックスのデザインを新しくしたい」という相談でした。

これに、わたしたちは「リパッケージ」をご提案をさせていただきました。
つまりクライアントの希望に「NO」といった形になるわけです。

もちろん理由はあります。
当時はコロナ禍真っ只中。外出・旅行などの自粛が増えている時期でした。とはいえ、コロナが落ち着けば、観光・お土産需要が戻ってくることもある程度予測できたため、ギフトボックスという既存客に向けたデザインよりも、新規顧客の獲得を目指せるもの、そして、さらに企業や商品を広めていけるものを作れないか、という思いがありました。

宮村製麩所さんの麩を初めて食べたのは、新発田市内の旅館でした。本当に美味しくて、そのあと見つけるたびに購入しました。1回でも食べれば、もう1度絶対に食べたくなる、他商品も食べてみたくなる。そんな宮村製麩所さんの商品をもっともっとたくさんの人に知って欲しい、食べてほしいという気持ちから、リパッケージを提案するに至りました。

「くるま麩」を選んだ理由

リパッケージする商品として「くるま麩」を選んだ理由は2つ。

1つは、代表商品であること。「くるま麩」は宮村製麩所、そして新潟を代表する麩として、TVなどで紹介されることも多く、お土産を購入するときの1つの選択肢になりやすいと考えました。

もう1つは、少入数の商品がなかったこと。現状のくるま麩パッケージは15枚入しかなく、お得だが「多すぎて使い切れるか心配」や「調理法が1種類くらいしかわからない」とのお客さまの声もあったそう。そこで、枚数を減らし、1回で使い切れるタイプのものを出すことで、使い切れるか心配に思っていた人にも気軽に購入していただけるのではないかと考えました。

コンセプトは「広告になるパッケージ」

リパッケージにあたり、3つのねらいを設定しました。

(1)リパッケージ商品+他商品の売上アップ
まずは、リパッケージするくるま麩の売上アップ。合わせて、同商品から「くるま麩」そのものを認知してもらい、15枚入くるま麩の売上アップもねらう。

(2)新規顧客の獲得
くるま麩パッケージから商品・企業を認知してもらい、新規顧客の獲得を目指す。

(3)企業の認知度アップ
くるま麩パッケージから商品・企業を認知してもらい、企業そのものの認知度・イメージアップを目指す。

ねらいを踏まえたうえで、設定したコンセプトは「広告になるパッケージ」。
企業のイメージをよりアップさせ、くるま麩パッケージだけでなく、他商品の売上増加にも繋げられるようなデザイン作りを目指すこととしました。

2つの課題点と解決策

クライアントからヒアリングをし、
見えてきたくるま麩の課題点は2つありました。

1つ目は、戻し時間が長い(30分〜1時間半以上かかる)。麩というと、お味噌汁に入れるとすぐに柔らかくなるイメージですが、実は、くるま麩はそういった麩に比べて、戻し時間が30分〜1時間以上と長め。この時間は短いようで長い。忙しい人、子育て世帯などにはなかなかハードルが高いと考えました。この課題に対しての解決策は、「ターゲットを絞る」。購入してくれそうな層をしっかりリサーチし、その層の心をつかむデザイン、PRをしていくことで、より効果を得られると考えました。

2つ目は、調理法がわからない。これに対しては、「パッケージにレシピを同梱する」。
実は、宮村製麩所さんのHPでたくさんのレシピが紹介されていました。これはぜひ見てほしい!と思い、HPへの誘導も考えましたが、とはいえ、料理をしながらスマホなどでレシピ検索するのは、ちょっと億劫。けれど、手元にレシピブックがあれば、眺めているうちに作りたくなったり、気持ちを掻き立てる材料になると考えました。そうゆうわけで、シンプルにパッケージにレシピブックを同梱することにしました。


ターゲット・ペルソナの設定

課題点からターゲット・ペルソナは下記に設定しました。

▶︎ 20代以上の男女
メインターゲットとしては20代以上の男女を設定。詳細は下記人物像。
年齢:20代以上/独身
性別:男女
居住地:東京
趣味:料理、洋服、インテリア、アート
性格:仕事の日・休みの日ともに、パートナーとの時間も大切にしながら、自分の時間も大切にする。また、良いもの・美味しいと思うものは、少し高価であったとしても購入する。
利用するSNS:Instagram、Twitter
情報源の種類:WEB、雑誌(POPEYE、BRUTUS、&Premium、GINZA)
時代背景:コロナのため、外出の自粛やテレワークが進んだ。家にいる時間が増え、TV・雑誌では「おうち時間」を特集。趣味をじっくりと楽しむ人や、家で料理をする人が増えた。

好きなこと・興味があることにお金をかけることができ、継続的に購入してもらえる見込みがある層と考えました。SNSの利用率・発信力も高く、口コミにより、さらに多くの人に認知される可能性もあり、この層をメインターゲットとしました。

▶︎ 観光客
1人あたりの購入個数が多くなることが見込まれます。購入者が再度包装しなくても、お土産用・プレゼント用として成立するデザインを目指します。

▶︎ 外国人
日本の食文化に興味がある、もしくはお土産を探している外国人観光客が興味を持つ「日本らしい」デザインも必要と考えます。

▶︎ ベジタリアン・ヴィーガン
宗教上などの理由で肉を食べない人や、ヘルシー志向・ダイエットのためなど、肉の代替品は増加傾向で、今後さらに麩の需要は高まると考えます。

コスト面も考えたパッケージの形状

パッケージをデザインしていく過程では、形状も重要です。
企業の広告になるデザイン、かつ、お土産用・プレゼント用としても成立するものを目指していたため、どんな形状にするか悩みました。

重視したことは、高級に見えること。とはいえ、形状・包装にお金をかけすぎれば、クライアントの負担にもなりますし、消費者にも価格転嫁されてしまい、嬉しくない状況になってしまいます。

高級に見え、かつ、コストも抑えられるパッケージを目指して、印刷会社と紙取りや紙紐の長さなど、様々なことを相談・計算し、形状を決定しました。

風格と新しさを感じさせるデザイン

くるま麩パッケージ・表面
くるま麩パッケージ・裏面

企業、商品ともに長い歴史があるため、その風格を感じさせるデザインに。「くるま麩」という商品ロゴは、昔からあったかのような文字を制作。イラストと組み合わせることで、現代的でありながら、歴史も感じるものにしました。

レシピブック・表面
レシピブック・裏面

レシピブックを一目見て、「美味しそう!作りたい!」と思ってもらえるもの、眺めているだけで楽しくなれるものを目指しました。レシピは、和・洋・スイーツと豊富に紹介。同商品は1つで1レシピ作れる枚数になっているため、繰り返し商品を購入し、様々なレシピを楽しんでもらいたいと思っています。


『くるま麩 四回巻』パッケージ
creative direction : himaraya design
art direction+design : himaraya design
illustration : ヒラノトシユキ
client : 宮村製麩所

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