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第四十五話 ナンパに喧嘩

『喧嘩』は誰でも経験したことはあるのではないだろうか。夫婦喧嘩、兄弟喧嘩、親子喧嘩、友達との喧嘩、等々、昔を思い出せばほとんどの人が何かしらの理由で誰かと喧嘩をしたことがあるのだと思う。しかし、喧嘩にはしょうもない理由の喧嘩も存在する。(細かくいってしまえば、自分の力を知らしめたい、相手が何かムカつく等)

ある日、私はシマザキ先輩の車でやまちゃんと私の三人でナンパでもしようという事で私のアパートに集まった。するとタイミング悪く仕事の電話が鳴ってしまった。電話の相手はコーイチさんという人で私より3才うえの地元では有名なヤンキーだった。その時は19歳になっていて私から見ればただのシンナー中毒だったのだが、キレると何をするか分からない危ない人だった。コーイチさんはⅠさんの紹介で私の客になった経緯もあり注文が入れば断るわけにはいかなかった。

金がないからシンナーしかやれない、しかもツケで買おうとするから私にとっては厄介な客であった。コーイチさんの場合は外で受渡するのではなくコーイチさんの家まで持っていくことが暗黙の了解になっていた。コーイチさんの部屋に行ってシンナーを渡し帰ろうとすると、「一緒にやってけよ」と言われてしまった。「ちょっと約束があるんですよ」と言うと、「何?どっか行くの?」「やまちゃんたちとナンパ行こうと思って」「俺も行くよ!」と最悪の流れになってしまった。コーイチさんは容姿は悪くないのだが、意味もなく喧嘩するし、女性に対してのデリカシーもないので正直ナンパに一緒に行くのは嬉しくない人であった。

しかし、断って機嫌を損ねてしまうのも問題があるので仕方なく一緒に行くことになった。コーイチさんの友人のマサルさんも合流して5人で車に乗り込んだ。ナンパに成功したら全員乗れないじゃないか、と思ったがそこにはあえて触れなかった。ナンパスポットと呼ばれる場所が県内には何か所かあるのだが、一番近い場所にすることにした。近場でさっさと済ませてコーイチさんたちと別行動できればいいと考えていたからだった。

近場のナンパスポットというのはカラオケボックスだった。駐車場がとにかく広く、ナンパ目的の女の子は、男が声をかけてくるのを車の中で待っているのだ。後はカラオケを歌ってナンパを待っている女の子たちもいる。その店は中央にフロントがあり、ボックスはフロントを中心にコの字型に配置されている昔よくあったタイプの造りだった。それなので、男たちはボックスのガラス窓から女の子を確認し気に入った子や、こちらと人数があえば部屋に乱入していくというスタイルだった。女の子もそれを望んでいるので部屋に入ること自体はなにも文句は言わなかった。後は好みかどうかの問題だった。

どちらにしても、女の子がナンパを待って男の方から声をかけるというのがルールであった。もう一つ大事なルールがあり、順番待ちをしているときには前の男たちが完全に断られるまで声をかけるのは禁止という事だった。この暗黙のルールを破ってしまうと、場合によっては大変なことになってしまうのだ。その日コーイチさんとマサルさんをそこへ連れて行ったのは大きな間違いであったと後で気付くことになる。

今回は毎日の日課のようになっていたナンパのお話でした。次回はタイトルにも書いてある通り大きな喧嘩が起こってしまいます。楽しいはずのナンパでどのように揉め事になってしまったのかを書いていきたいと思います。

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次回に続く

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