水崎ヒロ

自分の考えを知って欲しくて小説や詩を書こうと思いました。 読んでいただけると嬉しいです。

水崎ヒロ

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最近の記事

数える

いち、にぃ、さん、よん 少年は数える 彼の手の平を使って シャボンのように透き通った 夢の数を 1、2、3、4 青年は数える ペンをクルクル回しながら 自分の前に広がった 将来の分岐を 一、二、三、四 男は数える 顔をグシャリと歪ませて 自分の中に溜まり濁った 後悔と懺悔を 壱、弐、参、肆 老爺は数える 記憶を必死にかき集めて 感謝の気持ちを

    • 戦人

      アルコールが脳を侵しはじめた時 彼は私にそっと語りかけた 忘れてはならない記憶がある ──彼は私の手を握る 負けた後の後悔、そんなもんじゃない ──哀愁漂う英国歌手の歌を背景に 確かにそれも忘れてはならないものだ ──悲愴な表情をした彼は 勝者の罪こそ、忘れてはならないのだ ──悲壮な覚悟で私に告白した 人間は間抜けで馬鹿で痴れ者ばかりだ 勝利で獲た苦い罪悪感は 甘い享楽に溶かして飲み干してしまうのに 敗北で獲た苦い懺悔は 心

      • 水害

        バシャ!! 僕の手からスマートフォンが滑り落ちる 慌てて手を伸ばしたが 無慈悲な運命は僕を嘲笑った。 画面も鏡の役目しか果たそうとしない。 店を訪ねれば、データ破損という信じたくない言葉が僕を襲った。 SNS、友達の写真、連絡先、全て消えてしまった。 もう二度と会えない人の連絡先もあったのに 彼女とは、もう二度と関わることができないのか。 僕の諦め切れなかった恋心も 無慈悲に水に流れていった。

        • 同居鳩

          鳩がベランダに巣をつくっていた 気づいたのは今朝 最近時間に追われていたから 全然気づかなかった 僕は久しぶりに ベランダでタバコに火をつけた 鳩は鳴く そう言えば 鳩は幸福を呼ぶと 誰かが言っていた気がする タバコの煙を嫌ってか 鳩はゆっくりと巣の端へ身を寄せた 鳩はじっとこちらを見つめた 僕の辛さを見透かすように 1度ふかしただけで 灰皿にタバコを押し付けた 鳩はそっぽを向いた 自由気ままな鳩が少し羨ましかった 作られた巣をそのま

          通知音

          「今日もスマホの調子悪いみたいやな・・・」 篠崎は、スマートフォンの画面を見て呟いた。 チャットアプリが開かれているスマートフォン。最後に書かれているのは「ごめん。許してくれ。」の文字。それは、篠崎が打ったものだった。しかし、その隣には再送信を試みるためのマーク。 篠崎は謝りたいのに謝れない状態だった。 「ほんま、直接言えたらええんやけど、言えへんからな・・・」 篠崎は、嘆く。二度と会うことはない相手だ。しかし、彼にとって、その相手は大切な人で傷つけてはいけな

          僕の話

          僕は空虚な人間でした。 両親は、物心着く前に別れました。僕は母親に着いて行ったのですが、母親は、心も身体も弱く、体調を崩し、鬱になってしまいました。 そんな母を見て、僕は何も感じませんでした。 僕は、学校で虐められていました。 少人数の学校で、殴られたり、罵られたりしました。 そんな僕でしたが、1年も経てば痛みを感じなくなりました。 僕は知らない人に性的接触を受けました。 その人はすぐに居なくなりました。 そんな事もあり、僕は愛を忘れました。 嬉し

          夢なんて儚いもので 夢なんて叶うはずのないもので 夢なんて自分を殺すことしかしなくて でも夢を持ち続けるのは 貴方が夢を追い続けるのは 夢を信じているからでしょう 夢に憧れを持って 夢に敬意を払って 夢を追いかけつづける そんな貴方が 夢をあきらめませんように。

          貴方へ

          走れなんて言わないから ここまで無事たどり着いて下さい。 叫べなんて言わないから 耳元で囁いて伝えて下さい。 貴方の気分次第に 貴方のことを教えて下さい。

          片頭痛

          ぐわん 突然頭痛に襲われる 普段から馴染みのある 片頭痛だろうと思い ゆっくりと起き上がった じんじんとした鈍い痛みは 天気予報と共に告げる 「今日は雨になるでしょう。」

          高校生

          「あー、病んだ。」 バスの隣の女子高生が呟いた。 刹那、周りの視線が彼女に集中した。 それでも、絶望した表情でスマホの画面を見続ける彼女は、まるで時が止まってしまったかのようだ。 そんな世界を壊したのは、後ろにいた男子高生だ。 「どうしたんだよ。」 「彼氏に振られた。」 「マジか」 彼女は、あの顔からにんまりと笑う。 「まあ、つまんない奴だったから、どーでもいーや」 男子高生はわしゃりと彼女の頭を撫でて、スマホを見はじめる。 彼女も同じようにスマ

          内緒の話

          内緒だよ内緒だよ 小さい頃から使ってきた「正しい」の教科書 こういう時はこうしましょう そういう時はそうしましょう ああいう時はああしましょう どういう時はどうしましょう 「正しい」の教科書は「普通」の教科書 小さい頃から使ってきた「普通」の教科書 こういう時はこうしましょう そういう時はそうしましょう ああいう時はああしましょう どういう時はどうしましょう 「普通」の教科書は「没個性」の教科書 小さい頃から使わされてきた「没個性」の教科書

          内緒の話

          母校

          チャイムが鳴り響いていた校舎は 今は静寂に包まれている 今では緑の防壁によって 人がはいることができない 存在するはずなのに 存在しない 止まった時計が 今も尚 ただ1人で時を刻む

          怪我

          指先から痛みを主張する液体が流れ出た 犯人であるダンボールは 証拠を残さず 堂々と居座っている さながら完全犯罪の現場を目撃したようだった

          夢を見ました ひらひらと花弁にあやされ 夢を見ました さらさらした砂浜に抱かれて 夢を見ました ふわふわと落ち葉に誘われ 夢を見ました ぱちぱちと燃える暖炉の傍で 瞬間的で 主観的で 楽観的な夢でした ・・・・・・ パチリ 私は、いつも通りのベットの上で目を覚ました。 夢を見ていた様だった その夢の記憶は コーヒーに入れたシュガーのように形をなくし 感情を甘くした

          サンタクロース

          走れ 走れ 君に荷物を届けるために 駆けろ 駆けろ 君に想いを届けるために 神速に 迅速に 一陣の風となって 今日という夜に 酔いしれて Merry Christmas!!

          サンタクロース

          失恋

          「失恋しました」 そんな言葉を彼女は僕の目の前で口にした。 彼女は、僕がずっと恋焦がれていた人で。今までいくら願ったか分からないほどの状況。 でも、僕の気持ちは、グルグルとグチャグチャと、渦巻いて、吐き気を誘発させようとする。 「彼のことが大好きだったんです。」 彼女は、涙を浮かべる。 ここで、彼女の涙を拭ってあげることができれば。そう思って僕は手を伸ばそうとした。そんな勇気あるはずもないのに。 「彼は最期まで私の事を気にかけてくれました。」 彼女