通知音

「今日もスマホの調子悪いみたいやな・・・」
篠崎は、スマートフォンの画面を見て呟いた。

チャットアプリが開かれているスマートフォン。最後に書かれているのは「ごめん。許してくれ。」の文字。それは、篠崎が打ったものだった。しかし、その隣には再送信を試みるためのマーク。
篠崎は謝りたいのに謝れない状態だった。

「ほんま、直接言えたらええんやけど、言えへんからな・・・」
篠崎は、嘆く。二度と会うことはない相手だ。しかし、彼にとって、その相手は大切な人で傷つけてはいけない人だった。

「こんなこと、俺が言えることやないけど」
篠崎は、前の文を消して、文字を打ち直す。

「誕生日、おめでとう。俺がどうなろうとも、君が幸せであることを望んでいます。今までありがとう。最期に、君が俺のことを忘れて、ブロックして、このメッセージを君が読んでいないことを願っています。」

ピロン

女のスマートフォンから通知音がなる。女は内容を確認したあと、静かに泣きながら彼の証拠(アカウント)を消した。