戦人

アルコールが脳を侵しはじめた時
彼は私にそっと語りかけた

忘れてはならない記憶がある
──彼は私の手を握る
負けた後の後悔、そんなもんじゃない
──哀愁漂う英国歌手の歌を背景に
確かにそれも忘れてはならないものだ
──悲愴な表情をした彼は
勝者の罪こそ、忘れてはならないのだ
──悲壮な覚悟で私に告白した

人間は間抜けで馬鹿で痴れ者ばかりだ
勝利で獲た苦い罪悪感は
甘い享楽に溶かして飲み干してしまうのに
敗北で獲た苦い懺悔は
心身にしっかりと結びつけている

君には学んで欲しいのだ
罪も悔やみも

──センチメンタルな雰囲気が空気を震わせる

重厚な沈黙が私たちの間に立ち込める

彼はふわりと微笑んで
私に次の酒を進めた