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ライヒェナウのミッテルツェル修道院に再現された“ワラフリッドの薬草園” 𓇗𝕳𝖎𝖑𝖉𝖊𝖌𝖆𝖗𝖙𝖊𝖓 𝕹𝖔𝖙𝖊𓇗

今、人々は先人のメディカルハーブに回帰しつつあります。
ヒルデガルト・フォン・ビンゲンよりも200年も前に、ライヒェナウ島の修道院長ワラフリッド・ストラボが薬用植物について記述し、また実際に植えていました。
聖マリアと聖マルコのミュンスター(大聖堂)の隣に、9世紀に作られたワラフリッド・ストラボ修道院長の薬草園の忠実なレプリカがあります。

修道院の庭には24の区画があり、それぞれの区画に案内板があり、ワラフリッド・ストラボの「Hortulus」(小さな庭)からの抜粋も掲載されています。

シャルルマーニュは、8世紀末に「Capitulare de villis」の中で、王家の庭園で栽培すべき植物についてラテン語で指示していました。
ハーブガーデンは木製のフェンスで囲まれていますが、これは歴史的なモデルに基づいて再構築されたものです。モデルとなったのは、1512年にヴァディアヌス(Joachim von Watt, 1484 - 1551)が出版した「Hortulus」の第2版です。

ワラフリッド・ストラボは、自分の植物についての教訓的な詩「Liber de cultura hortorum」(「Hortulus」(小さな庭)とも呼ばれる)を書きました。これは「庭の手入れについて」と訳すべき園芸に関する書物です。
庭の植物を題材にした詩集で、中世の庭園文化を証明する重要なものであるだけでなく、優れた詩の一例でもあります。

「Liber de cultura hortorum」 には、24の詩で、24の薬草、台所用品、装飾用の植物を韻を踏んで説明していますが、そのインスピレーションはもちろん、彼の修道院の庭から得られたものです。
 また、韻を踏んだ植物図鑑は、ドイツ初の園芸書と言えるでしょう。

ワラフリッド・ストラボは、ギリシャやローマの古代にルーツを持つカロリング朝の教育改革の伝統を受け継いでいます。だから、彼の「Liber de cultura hortorum」(「Hortulus」(小さな庭)とも呼ばれる)はラテン語で書かれています。

▼ ライヒェナウ島

ワラフリッド・ストラボは、810年頃にAlamannen アレマン人のRuadhelmの息子として、ボーデン湖畔で生まれました。少年時代はボーデン湖に浮かぶライヒェナウ島の修道院で学校に通い、15歳でそこのベネディクト会の修道院に入りました。後にサンクト・ガレン修道院の修道院長となるグリマルドのもとで、ワラフリッド・ストラボは古典的なラテン語とギリシャ語の基礎を学びました。フルダの修道院でラバヌス・マウルス・マグネンティウス(大司教、神学者)のもとで学業を終えます。
サンクト・ガレン修道院の修道院長となるグリマルドの仲介により、ワラフリッド・ストラボはアーヘンの帝国宮廷で王の息子シャルルザバルドの教師となった。838年には、皇帝ルイ・ピウスによりライヒェナウ修道院の修道士に任命されました。

彼は、アーヘンで勤務している頃、皇帝の息子シャルルザバルドの宮廷詩人・教育者を務めていた時期(829年~838年)にこの作品「Liber de cultura hortorum」略して「Hortulus」(小さな庭)を書き、師であり友人でもあるサンクト・ガレンの修道院長グリマルドに捧げたのでしょう。

彼の名前 "Strabo"(スクインツ: 目を細める人の意味)は、彼が目の病気だったことを示しています。しかし、それでも彼は、お気に入りの植物をじっくりと観察することができました。彼は正確な観察者として、個々の植物の外観を描写した後、その内面にまで踏み込み、それまでに知られていた植物の治癒力を紹介しています。

全体的にウィットに富んだ詩的な内容で、今日ではエスプリを効かせた詩になっていると言えるでしょう。繊細な僧侶が、カボチャをいかに雄弁に、そしてカラフルに表現できるかを読むのは楽しいことです。

ワラフリッドは、ドアの前にある庭で、雑草が土からはみ出さないように…、植物が渇いてぐったりしないように…など、土から実りを得るために庭への愛情を持って行わなければならない仕事について語っています。
ワラフリッドは、自らの経験をもとに園芸の苦労を語っていますが、「どんな土地を持っていても、どこにあっても、自分の実りを拒む土地はない」と、勤勉さが報われるという、園芸家にとっての慰めの言葉も綴っています。

ワラフリッド・ストラボは、ベネディクト会の基本的な規則である「Ora et labora(祈りと仕事)」に沿って、庭での仕事を説明していますが、と同時に、ベネディクト会の基本的な規則のうち、観照的な部分、つまり、植物の自然に根気よく取り組むことによる平和と喜びについても説明しています。

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