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【オーダーメイド物語】誕生日の物語#06

カラコロと鳴る鐘の音につられ、郵便受けを覗きにいけば、そこには待ち望んだものが届いていた。
アイリスのレリーフが美しい封書を手に取り、その中身を確認。
思わず唇から笑みがこぼれる。
曽祖父の代にはすでにもう、こじれにこじれてしまった血族の関係性だけれど、当主の代替わりを経た今、長きにわたるこのわだかまりを解消すべき時が来たのだ。
「いそがしくなるわ」
あとのすべては、この私の腕にかかっている。
そう思えたら、じわりと内側から力も湧いてくる。

とびきりの時間を披露しよう。

天使が天井画となって微笑む大食堂に、お客様をお招きする。
クォーツの燭台に魔石で光を灯し、花で飾った長テーブルへ、宴の料理をならべていく。
一族の誰もが立ち入ることすら困難となった聖域の狩場で得た百合兎や牡丹羊をメインに据え、天空庭の野菜で彩りを与え、デザートには鉱石の森の果実のコンポートを添えて。
この血が継いだ『食』は、心や体、魂を純化し、清浄なカタチへと整えてくれるから。
私は全ての元凶となった者の後継として、絆の再生に希望を込めてもてなすと決めていた。

一様に固く緊張していたみんなの表情が、料理を口にした途端、驚きののちにほころんでいくまであと少し。

*誕生石・誕生日花*
トルマリネイテッドクォーツ:本領発揮・対立したものの結合
真珠: 長寿・健康・富
アイリス:よい便り・メッセージ・希望
ペンステモン:あなたに見とれています

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▶︎誕生日の物語とは?
あなたの誕生月&日の石と誕生日花をキーワードにつづる少し不思議な物語
正式なリリースの前にFacebookでモニター募集させていただいた34編を順次公開いたします


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