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受心した青年のこころ①カーブ

その日はこどもの大学の合格発表がちかかったから、3月になってまがなく、だったと思う。

早めに帰宅した夫に、食材の豊富なスーパーがある隣町まで、車で連れていってもらうところだった。夕方の…  6時ころだったか。

道中、十字路の先に緩やかなカーブがあって、いつもそこの信号で停まることが多かったが、その日は、すんなりと信号を越えてゆっくりと右にカーブしたときだった。


ほんとうに、珍しくほんとうに、『受心した!』と感じた数少ないケースだと思う。

大概は、自分の感情なのか他人の感情なのか、ぐちゃぐちゃになることが多いし、強烈に強い違和感のある感情に苛まれても、やはりそれがすぐに" 他人のものである "と気がつけれないことが多い。


わたしが、何語の奇声を発したのか覚えてないが、「あっ!」とか「わっ!」とか言ったんだと思う。

すると、夫が驚いてしかも怒ったように「なに、なに、なに、やめて!」と言った。

緩いカーブを曲がろうとしているときだったので、「猫、ひきそう!」とか「人が飛び出す!」とか言われそうでビビったよ、驚かせないで、と注意された。


「ごめん、ごめん。今、なんか、キタ。…  喪服、大丈夫? 」


こういう唐突なわたしの台詞にすでに慣れてしまっている夫は、なぜ急に喪服?とは質問してこない。「太ったから、(サイズ)はいるかなぁ…」と、普通に返答する。

けれども、わたしは、得体のしれないサワサワ感で落ち着かない。とにかく落ち着かない。

そのあとのスーパーでの買い物もうわの空で、自分の心に受心してしまったナニカを、ただひたすら脳内で追いかけていた。


↓つづく

↓『受心』とはどんな感じのものか書いてます。

↓受心  episode2