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未熟な僕が描く点線

賢志くんは旅に出るのだと言って
大きな鞄を持って 歩き始めた

その重さは尋常ならざる様子で
玄関から 少しも離れない所で
賢志くんは力尽きた

すると賢志くんは鞄から
大変 立派な安楽椅子を取り出し
腰掛けて言った

あヽこの椅子を持って来て 本当によかった
そうでなければ
僕は絶望していたかも知れない

薄っぺらになった鞄を
賢志くんは ひょいと掴み
膝掛けに代えた

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