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枯 れ 花

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悲しみは 涙より多く
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2023年11月の記事一覧

未熟な僕が描く点線

未熟な僕が描く点線

僕は鳩なので 難しいことは知らない

人間共は そんな僕のことを
平和の象徴だとか言うれけど
そんなことは知らない

ただ そんな僕の命を繋ぐのは
どうしようもなく人間共の残飯だ

丸く肥えたし
空を飛ぶことは 歩くよりも疲れる

だから もう 距離を飛ばず長い

未熟な僕が描く点線

未熟な僕が描く点線

君は写真をよく撮った

僕と今日の景色は
君の想い出の候補以上ではない

ならば 灰色のまま泣けばいい

あヽ 存在することが証明 出来ない
あヽ存在しないことも証明 出来ない

信じることは大抵の場合 罪じゃないか

未熟な僕が描く点線

未熟な僕が描く点線

僕は無罪だった

例えば昨日の深夜2時に何をしていたかね
と 唐突に訊ねられても
耐えるだけの回答を僕は持っていた

僕は常に両手に手錠をかけ
誰の目にも明確に 何もしていなかった

だから僕は常に無罪だったが
その様は捕縛された罪人の様だった

未熟な僕が描く点線

未熟な僕が描く点線

列車が すらりとやって来て
僕の鼻先でドアを開ける

聞いておくれな 車掌さん
人さらいが ここにいる

窓の向こうは暗闇で
映る泣き顔の向こう側だけ
遠い景色が飛んでゆく

こいつはどうにも
気の利いた今日に手を振る悲劇か喜劇

人さらいが ここにいる

未熟な僕が描く点線

未熟な僕が描く点線

彼は広所恐怖症だった

果てしない地平を臨んでは
目眩をおぼえ

宇宙の膨張を思えば
吐き気を催した

彼は ある日
押し入れの中で暮らすことを考えた

己の発想の優秀に歓喜し
生活必需の一切をまとめ
潜り込んだ先にあったのは

無限の広さの闇だった

未熟な僕が描く点線

未熟な僕が描く点線

僕と彼は 墓の所有を巡って争っていた

共に所有権を主張する口論は
決着を待たず
二人はいつしか武器を取り果たし
勝敗を分けた時

生きた僕は 死んだ彼を
厳かに墓に埋めた

だから墓は
死んだ彼のモノになった

未熟な僕が描く点線

未熟な僕が描く点線

僕には2つしか手がない

1つは君と手を繋ぎ
1つは君の荷物を持たなければならない

残酷ねって笑ってよ

どうしても
路傍でボロ着た彼に
差し伸べる手が足りない

未熟な僕が描く点線

未熟な僕が描く点線

小学生の頃は
テレビゲームを持っていないことが
辛くて 辛かった

今 持っていないことが
辛くて辛い 色んなモノも

あヽガキだったなぁ… と
思える日も来るのだろう

なるべく早く頼むぜ 神様 仏様

未熟な僕が描く点線

未熟な僕が描く点線

全てのことの断片を記録することが
結局は人生を考える事なんだ
と、言っていた彼は鯨に食われた

僕は葬儀で 鯱の方が良かっただろうなぁ
と、考えていた

それで僕は棺に二十三冊の暦を投げ込んだ

また会おう 賢志くん

鯨の胃袋の中の雑然とした
全てが解決した端で

未熟な僕が描く点線

未熟な僕が描く点線

あの子の肩幅は
僕の腕の中にすっぽり収まっていたから
世界はパズルみたいだねぇ… とか

あぁ 寝物語の下らなさ
もう今 あの子は去ったから

僕は公衆トイレの壁に落書かれた電話番号の
6を8に書き換えるくらいしか
世界に抗う術がない