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「山頭火全句集」を一章ずつ⑤

「山頭火全句集」を一章ずつ読んでいくこの試み。

今回は「大正四年」の章です。

前の章に比べて長くなったな、という印象です。

その分色々な句があって、山頭火の生活を覗けるような気がして面白かったです。

田舎、とか昔っぽい句も多いのですが、「人々」という言葉が入っていたりすると広い通りを歩いて行く多くの人達、という感じで、都会のイメージがあります。

さて、この章で私が一番気になった句はこちら、

「汽車とゞろけば鴉散る銀杏真裸なり」

「汽車」という言葉が入っていて、私の好きな「大正ロマン」な情景が思い浮かんできます。

なんですが、気になったのは実はそこではないんです。

この句、層雲の三月号に掲載されたらしいんですよ。

銀杏って三月にあるんですか?

秋・・・ですよね。

どうして銀杏なんでしょう?

投稿から掲載まで、もしくはこの句ができてから投稿までのタイムラグのせいかもしれませんが、この句がとても新しく思えたんですよ。

私の場合、もし三月に銀杏が落ちていてもスルーしてしまいます。

いつもその季節の風物詩、みたいなものを探して生活しているので。

でもこの句は春。

春に詠まれたのではなくとも、世に出たのは春な訳です。

だけどその季節に合っていなくても、合っていないからこそ風流に感じられるものってあるんだな。

そう気づかされました。

例えば小説を書いていて、自分の体験をそっくりそのまま写し取りたいけれど季節感のないものがその場にある、というとき。

その季節感のないものを省いたりせずに、そのまま書いた方が却って味が出たり、現実味を帯びることもあるのかな、と思いまして。

自分の書きたいものを常識にとらわれずに書こう。

そう思わせてくれた句です。


それから、この章で急に出てきたなと感じるのが「猫」です。

特に「恋猫」という言葉が入った句が二つ、三つポンポンと出てきて印象に残りました。

恋猫、というのは春の季語で、さかりのついた猫。

という意味なんですね。

辞書で調べました。

存在すら知らなかった言葉です。

俳句って語彙力の勉強になりますね。


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