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EAの功罪#4 トランスフォーメーションが大事【業務を変えよう】

昨今、デジタル・トランスフォーメーション(DX)という言葉が賑わっていますが、実は過去にも似たようなデジタル化を推進する潮流がありました。いま思い出すのも恐ろしい、そして、もう二度と関わり合いたくないエンタープライズ・アーキテクチャ(EA)です。

先般、EAというIT開発方法論の概要を述べて、こと日本企業においては組織力学が働くことからなかなか理想通りには行かないことをお話しました。一方でやはりEAは優れた教科書で学ぶべきことが多いことをお話しました。

最終回として、EAフレームから考えるDXの進め方について考えてみます。

EAの功罪#1 理想のIT開発論とその現実【普通の考えではうまくいかない】
EAの功罪#2 地獄への道は善意で舗装されている【誰も失敗を望まない】
EAの功罪#3 企業全体のウォーターフォール開発【そんなの無理】
EAの功罪#4 トランスフォーメーションが大事【業務を変えよう】

①EAフレームのレイヤの順番は大事

まず、EAフレームについて振り返ってみます。

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EAが示す、業務 → データ → 機能 → 技術という4レイヤ構成は、請負契約&ウォータフォール開発の提案依頼書(RFP)の目次と類似しています。

EAの本質は、個別IT開発の手法をエンタープライズレベルに拡張したものなので、ウォーターフォールに馴染みのある方は理解しやすいと思います。ただやはり、ひとつのITでさえ難しいのに、企業全体の業務とITをウォータフォールでリプレイスするのは非現実的です。

非現実的なのですが、このフレームにはとても重要な示唆があります。

それは、各レイヤの順番。
すなわち、業務 → データ → 機能 → 技術といった「順番」です。

② なにごとも順番は大事

少し話は変わりますが、仮にあなたが新しいパソコンを買おうと考えているしたら、どちらの会社の製品を買いたいと思うでしょうか。

A社 : 

我々は素晴らしいパソコンを作りました。美しいデザインで誰でも使えます。(だから買ってください)

B社 :

我々のすることには全て世界を変えるという信念があり、違う考え方にこそ価値があると信じています。
私たちが世界を変える手段は、美しくデザインされ、簡単に使え、親しみやすい製品です。こうして素晴らしいパソコンができあがりました。

両者とも言っていることは同じですが、なんとなくB社のコンピュータを買いたくなるのではないでしょうか。からくりとしては、前者はWHAT / HOW / WHYの順番で記載した文章で、後者はWHY / HOW / WHATの順番で記載した文章です。

かの有名なサイモン・シネックのゴールデン・サークル理論です。

③ IT開発でも順番は大事

ゴールデンサークル理論からも分かるように「順番」は重要で、IT開発においても同様です。IT技術者であれば実感している通り、要件定義 → 外部設計 → 内部設計 → 試験 という工程の流れのなかで、上流のミス・変更があったとき、下流では指数級数的に作業量が増加します。

もうちょっと身近な例えで言えば引っ越しとか。引っ越しでは、住む場所を決め、物件を見て、部屋の寸法を図り、契約した後にインテリアを設置します。ここで「せっかく引っ越しするならオシャレな部屋にしよう!」と思って、IKEAで目についた素敵な家具を買ったけど、いざ設置してみたら寸法が合わずにメルカリ行きになった。みたいな感じ。

そんな感じで順番は重要です。そんなこと分かっていると思いますが、順番に起因した問題がしばしば発生します。

EAでもDXでもよいですが、業務とITを最適化するという話が出ると、大体において業務フローはそのままでITを最適化する議論が先行します。やれ統合すべきだ、いや逆に分散化すべきだ、クラウド化すべきだ、API-GWを入れるべきだ、データ分析基盤をいれるべきだ、べきだ、べきだ。これはあたかも引越し先の部屋の寸法を測る前に、お気に入りの家具を探しているようなものです。

こういった「技術先行」のかたちで議論が進むと、まったく業務にフィットせず、誰にも使わないピカピカのITが出来上がることになります。部屋の寸法を測っていないので当然といえば当然です。

もしあなたの会社で「DXを推進する」という話が出たとき、IT群の理想像を語ることから議論が始まっていたなら要注意です。技術 → 機能 → データ →業務の順番で考え始めるとろくな事にはなりません。あくまで「業務をどう変えるか」から議論を進めていくことをオススメします。

デジタル・トランスフォーメーションでは、デジタルが重要なのではなくて、トランスフォーメーションが最も重要です。

おわり。

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