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水の中をめぐる旅【6】 隠岐諸島・西ノ島② 2022年秋

隠岐2日目、今日もすっぽりと高気圧に覆われ、快晴無風。
昨夜干しておいたダイビング器材は、夜露にしっとりと濡れていました。

今日は、西ノ島大橋をくぐり、島の南端•赤灘鼻へと内海を南下。

昨日からのバディであるIさんは、昔、隠岐の各島を巡りながら働いていたことがあるそうで、ここにはちょっと書きにくいような、各島でのローカルな体験(特に知夫里島)を面白おかしく話してくれました。

西ノ島の南端・赤灘鼻は、対岸の知夫里島とは数百メートルしか離れていません。いかにも潮当たりが良さそう。ただ、ここは既に釣り客がおり、隣り合うポイント「モトイチバン」へ。

◆1本目 モトイチバン

平均水深 16.7m
最大水深 29.2m
潜水時間 41分
透明度 12m
水温 22℃  スーツ 5mmウェット(ツーピース)+フードベスト

西ノ島の西海岸は厳しい波風によって浸食されています。ここはやや深めのポイント。最大水深の30メートル近くまで深度を下げていくと、根に魚群が集まっているのが見えます。

Yさんが指差す先には、まさかと思うけどナポレオン?という姿かたちと泳ぎ方の大きな魚影も。
まるで「魚使い」のようなYさんの技で、さまざまな魚の群れが私たちを取り囲み、飽きることがありません。

次第に深度を上げ、浅場へ戻ってくると、朝の光が差し込んで棚を美しく照らしています。中層には、イワシやマメアジが群れ、太陽光線に銀色に煌めいています。その流れる様は、まるで星雲か天の川。

安全停止が終わっても、まだまだ浮上したくない気分。

浮上後、次のポイントへ移動する途中、ガイドのYさんが小ぶりのカンパチを釣り上げ、昼ごはんの楽しみが増えました。

◆ 2本目 ヒラシマ

平均水深 10.0m
最大水深 6.0m
潜水時間 44分
透明度 12m
水温 22℃  スーツ 5mmウェット(ツーピース)+フードベスト

本日2本目は地形ダイビング。波によって断崖に穿たれた洞窟へ潜ります。
地形ダイビングは大好きなのですが、思い起こすとこれまで潜ったポイントの殆どは石灰岩の地形でありまして、このような火山地形で潜るのは初めてかもしれません。また、普段潜るのは洞内が完全に水中のことが多く、ここのように半水面の洞窟というのも、ダイビングで潜ることは、実は少ないように思われます。

それ故か、洞内で水面を見上げた時の風景が新鮮でした。水面上の険しい岩肌が、なにやら織物のよう。
前方を見れば、YさんとIさんが、気持ちよさそうに光の中へたゆたっていきます。

入り口付近には、イカの死骸が。

▲ 哀れな姿のイカ

岩陰に潜む魚たちもいろいろ観察できました。

▲ タカノハダイ
▲ イシガキダイ×3とイシダイ

洞内から出てくると、海底の岩の隙間で、エチゼンクラゲがカワハギに突かれていました。身体に穴が空いています。
もっとも、この穴はすぐに再生するのだそうです。

▲ エチゼンクラゲ

これまでの3本とは趣向の変わった面白いダイブでした。

◆ 西ノ島遊覧!!

西ノ島の西海岸には、矢走二十六穴、大神立岩、滝見の岩屋、国賀海岸、摩天崖…幾つもの絶景が連なっています。
帰路は、往路をそのまま戻るのではなく、西海岸を北上して、これらの見所を巡るコースをYさんは取ってくれました。Iさんが有名なポイントを解説してくれます。思いもかけない贅沢な時間。

DSへ戻り、弁当とYさんが釣り上げたカンパチの昼食を頂いているうち、四国からやってきた私たちと同年輩の男性ダイバーと、NHK松江放送局から取材に来た若い水中カメラマンAさんとアシスタントが合流しました。

撮影班は、Yさんの魚を集める技を、ローカル番組の特集として組むために、取材にやってきたとのこと。
エギジット後に、何かコメント貰っても良いですか?とAさんからご依頼を受け「じゃあ、Yさんをひたすら持ち上げましょうか」と、Iさんと共に、浮かれ気味にボートに乗り込む私。

Aさんは、ドローンを操って、上空からダイビングボートを撮影しています。
今日は陸上と船上のみで、水中撮影はまた日を改めて来島するそうですが、何せこの最高のコンディション。「水中も今日にすれば良かった!」と残念がっておられました。
話しているうち、偶然にも私と同郷とわかり、親近感が湧きます。

◆ 3本目 イグリ

平均水深 13.7m
最大水深 25.9m
潜水時間 54分
透明度 12m
水温 23℃  スーツ 5mmウェット(ツーピース)+フードベスト

今日三本目のポイント「イグリ」は、舟引運河を抜けて島の北海岸へ抜けて5〜10分ほどだったでしょうか、東側を断崖に遮られたポイント。

エントリー直前、水面近くを、エチゼンクラゲが漂っていきました。
因みに「エチゼンクラゲ」は放送自粛用語だそう。今から10年ほど前の大量発生ですっかり悪役イメージが定着してしまい、おかげで福井県越前市のイメージ低下が懸念されるからだそうです。

ここは、一本目のモトイチバンを、少し穏やかにしたようなポイントでした。
水面から差す太陽光線に煌めく魚影を堪能。

▲ 水底の砂地
▲ ホタテウミヘビ
▲ いい値がつきそうなマダイ

後半は、尾根状の根に沿って深度を上げていきます。

▲ ルリスズメダイ?も群れる根

穏やかな午後。DSへ戻り、器材を洗って水を切っている間にログ付け。

明日もこの好天は続く模様。午前中、1〜2本追加ダイブをお願いしようかな、と真剣に悩みましたが、折角の初めての隠岐、予定通り、陸上も楽しんで帰ることにしました。

「e-Bikeを借りて、あちこち走るといいですよ」と、YさんもIさんも勧めてくれます。一般的な電動アシスト付きママチャリではなく、クロスバイク型で、そこそこ走れるそう。ロードバイク乗りでもある私としては、そういった文明の利器に日寄るのはプライドが許さんのですが、そうはいっても起伏の多い西ノ島、普通のレンタサイクルでは限られた時間で行ける範囲は、かなり限定されてしまうようです。

◆ 4本目 陸ダイブ 🍻 

私が泊まっている別府港周辺は、港湾施設、数軒の宿、数少ないながら飲食店、また個人経営の食料品店などが集まっています。通りは静かで、時折観光客を見かける程度。昨日も今日も、穏やかな夕べです。

▲ 右手の船は、中ノ島へ向かう島間フェリー

旅館の晩御飯は、今日も豪勢でした。偶然、NHKの取材班も同宿。食後、「ご一緒にどうですか」とおかみさんが声をかけて下さり、おかみさん、Aさん、アシスタントのBさんと、食堂で二次会。

今では大型のフェリーや高速船が行き来していますが、昔はもっと小さな貨客船で本土と往来しており、海が荒れがちな冬の航海は大変だったそうです。
夜がふけるまで話が弾みました。

▼ 11月に、NHKの山陰地方のローカル番組で放映されました。
 
私もちょっとだけ登場しています。

◆ 最終日 西ノ島を走る 🚴‍♂️

10月2日、今日も快晴の朝。
荷物は宿で預かって頂き、港にある観光協会でe-Bikeをレンタル。

若い女性の職員から、一通り説明を受けます。
鍵がついてませんが、かけなくても大丈夫ですから、そのまま停めて下さい…とスタッフの女性は付け加えました。ああ、そういう土地柄なんだな、とほっこりします。

14時02分の高速船出航までの限られた時間で、国賀海岸、摩天崖、あともう一箇所くらいは回ろうという魂胆。

E-Bikeの威力は絶大でした。起伏の多い西ノ島、別府港からもう一つの大きな集落・浦郷までの間には尾根越えがあり、その先国賀海岸までは曲がりくねった山道が続いていましたが、さしたる苦労もなく到着。これは癖になりそう。人をダメにするバイクだなあ、なんてことも思いながら、駐車場とトイレがある国賀海岸の駐車場へ到着。
ここから、摩天崖まで徒歩で往復。

▲ 舟引運河
▲ 穏やかな入江を見下ろす
▲ 観音岩(別名ローソク岩)
▲ 摩天崖
▲ 摩天崖の手前から国賀海岸を見下ろす
▲ 左手にはカルデラも見える
▲ 台地上に牛馬が放牧されている

絶景を堪能した後、いったん浦郷へ戻り、赤尾展望所へと登り返しました。
ここはかなり山深く、e-Bikeじゃなかったら、この限られた時間ではとても行けなかったでしょう。

▲ 赤尾展望所より、国賀海岸・摩天崖遠望
▲ 「西ノ島スカイライン」と赤尾展望所への道の分岐点から、内海を見下ろす

このまま「西ノ島スカイライン」を南下して、カルデラを一望できるという鬼舞展望所を目指したいところでしたが、時間がギリギリ、もしパンクでもしようものなら大変なことになるので、浦郷へ戻り昼食。意外と観光客向けの外食産業がなく、地元の人たちで賑わう食堂で定食をいただき、別府へ戻ります。

▲ 西ノ島大橋の上から
▲ まだまだ走りたい気分ではありますが…

14時02分、高速船で隠岐を後にしました。フェリーは適当な時刻の便がなく、帰宅が午前様になってしまうのです。高速船に大きな荷物は持ち込めないので、ダイビング器材や着替えを入れたキャスターバッグは宅急便で送りました。

本当に、素晴らしい旅でした。海も良かったし、陸上も良かったが、何より良き出会いに恵まれました。お世話になった皆様に、心からお礼を申し上げたいと思います。
毎年通いたい海が、また一つ増えました。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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