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地方都市の新たな魅力に出会う ブロンプトンとローカル線の旅#7 倉敷のジャズクラブと片上ロマン街道①

せっかく関西で暮らし始めたんだから、もう30年ほども行ってない倉敷へ行きたいなあ、としばらく前から思っていたところ、6月3日土曜(2023年)、倉敷にあるジャズクラブで、山中千尋トリオのライブがあることを知りました。
これを機会に行ってこようか。そう思い立ち、1週間前に問い合わせたところ、無事にライブの予約が取れました。
京都からならば、金曜に仕事を終えてから一度自宅へ戻り、旅装を整えてから出発しても、21時頃には倉敷へ到着できて、土日は丸々現地で過ごせます。

ブロンプトンを連れて行くかどうかは、お天気次第と思ってましたが、どうやら土日とも好天に恵まれそう。
岡山県内にはちょっと気になっているサイクリングロードもあり、しからば、とブロンプトンと共に旅立つことといたしました。

◆ 100年に一度の豪雨の中を…

そうして迎えた2023年6月2日金曜、出発の日。
沖縄・奄美へ襲来した台風2号が梅雨前線を活発化させ、全国的に災害級の大雨。
京都も、線状降水帯の発生により、熱帯のスコール並みの豪雨が昼頃から半日以上も続くという恐ろしい天気予報が出され、出発が危ぶまれる事態となりました。

そんな中、私の勤務先では、午後からの交通機関混乱を見越し、午前のみで終業となりました。この時点では、京都市内はまだ「普通の土砂降り」くらいの感覚。鉄道は、運転中止の路線が増えてはいるものの、肝心の嵯峨野線と山陽新幹線は定刻通り運行。しかし、東海道新幹線では「運転見合わせ」が発生しているとの気になる情報も。

斯くなる上は、新幹線が完全に止まる前に行動すっぺ、と、帰宅して速攻でブロンプトンを連れて飛び出そうとしました。ところが愛用のレインウェアが見つからず、まるで家探しか空き巣のように引き出しを引っかき回してようやく、もう存在すら忘れていた古い雨具を発見し、嵯峨嵐山駅まで土砂降りの中をブロンプトンでダッシュ。

こんなことで多少手間取っても、速やかに輪行準備を整えられるのがブロンプトンの良さ。嵯峨嵐山駅のホームへ階段を降りてゆくと、ちょうど14時07分発の京都行きが定刻で入線してきました。
インバウンドの戻りにより、最近の嵯峨野線は、観光公害の象徴的事例として報道されることが増えています。今日もこんな大雨の中なのに、嵯峨嵐山駅のホームには外国人観光客の姿が少なくありませんでした。

車内で、少し乗り換え時間の余裕を見て、14時43分発の「ひかり」をスマートEXで予約。次の「のぞみ」に乗っても倉敷着は20分ほどしか変わらないので、少し旅費を節約したのです。

京都駅に到着した「ひかり」からの降車客は、恐らく約90%が外国人。
この大雨で、日本人は遠出や出張を手控えている影響もあるかもしれません。岡山へ向け出発した車内の乗客も、3分の2は外国人に見えました。
車窓には大粒の雨が水平に近い角度でいく筋も糸を引いています。
新大阪を過ぎると、車内は一気に静かになりました。

西明石で「のぞみ」の通過待ち。思ったよりも早く、雨が上がった様子。
山から水蒸気が立ち上っています。

ところが、この時間帯、関東・東海・紀伊半島などでは6時間で11回の線状降水帯が発生し、100年に一回未満という極めて稀な豪雨に見舞われていました。スマホのアプリには、新幹線が順次運転を見合わせているという通知が立て続けに入ってきます。
その後まもなく、東海道新幹線と山陽新幹線との直通運転は全面ストップとなり、京阪神では関東への帰宅難民が溢れる事態になったのです。

東日本・中日本のこのような状況にもかかわらず、私が乗った「ひかり」は姫路に近づき、駅手前の市川を渡ります。川は濁流と化していますが、河川敷まで冠水するほどではありません。

姫路からはまた、ものすごい人数の外国人観光客が乗車してきました。

16時02分、定刻に岡山着。在来線ホームへ降りてゆくと、朝から運転を見合わせていた伯備線の特急「やくも」の運転が再開され、再開後最初の列車が向かいのホームから出雲へと走り出していくところでした。

岡山の次の駅、北長瀬では、利発そうな女子中学生たちが大勢乗ってきて、みな頭を寄せ合って試験勉強。同じ学校と思われる男の子たちはタブレットでゲーム。
空が明るくなって来ました。

◆ 雨上がりの倉敷

16時36分、倉敷着。
当初の予定では、17時に仕事を終え、一旦帰宅してから出発し、到着は21時半頃の予定でした。それが大雨で仕事が半ドンになり、しかもダイヤが乱れる前に移動できて、思いもよらず、今宵は倉敷のいい店で一献が可能になりました。こんなことで幸運を消費して大丈夫か、と心配になるほど。
駅前に出ると、まだ小雨が残っていました。ブロンプトンを組み立てて、駅前通りを走り、美観地区の入り口にある「ドーミーイン倉敷」へ。

ドーミーインは、かつて出張族だった頃は、いくつかの都市で定宿にしていました。転職してからは出張がほとんどなくなり、また最近は旅のサブスク”HafH”で泊まれる宿を選ぶことが増えたこともあり、久しぶりの利用。
…もともと、天然温泉の大浴場、ゆとりのある客室、クオリティの高い朝食バイキング、夜鳴きそばのサービスなど、コストパフォーマンスが非常に良いホテルチェーンだったけれど、何だか、以前と比べてもサービスレベルが更に上がっている印象。ロビーにはフリーのコーヒーやジュースが置かれ、旅装を解いて一風呂浴びようかと大浴場に行ってみれば、洗濯機も無料、またマッサージチェアも無料。
その分、宿泊料金も少し上がっているのかもしれないが、今回の私のプランは2泊で計14千円弱と、十分にお得。但し、その代わりキャンセル不可。それも本日中に倉敷入りできるだろうかと、散々気を揉んだ理由の一つなのでした。

風呂に入って少し昼寝したのち、フロントでお勧めの店を教えてもらい、黄昏の美観地区へ。
全国に、街並みが保存されたり復元されたりしている場所は数多い。しかしその中で、美観地区の「きれいさ」は群を抜いていると感じられました。建物の意匠が統一されているだけではない。道はアスファルト舗装ではなく、石畳かコンクリート。倉敷川の護岸も石積み。電線は全て埋設され、宵の空が広い…
ホテルで教えてもらった店は、大将が一人で忙しそうに切り盛りしていました。日本酒の品揃えが豊富で、料理は一人で色々頼める適度な分量、値段も手頃ないいお店でした。

店を出ると、急激に気温が下がったようで、半袖では肌寒い。梯子したい気分もなくはなかったが、最近、ちょっと飲み過ぎでもあり、自重。
満月の下、人気のない夜の美観地区や、倉敷駅へ続くアーケード街を当て所もなく歩き回りました。

▲ 夜の美観地区もまた美しい

🔲美観地区の一日

◆ 快晴の朝

翌朝、6時前に目が覚めました。カーテンを開けると外は快晴。
早く外へ飛び出したい。

昨夜歩き回った印象では、このエリアは自転車で回るほどの広さではなく、いろいろな店を覗きながら歩くのが楽しそう。ブロンプトンには留守番してもらうことに。

朝食をしっかり食べて、部屋に戻って出かける支度を整えたところ、つけっぱなしにしていたテレビから、哀愁を帯びた汽笛が聞こえました。
NHK松江放送局で制作された、木次線の四季とそれを取り巻く地域の人たちを追ったドキュメンタリーでした。

一昨年の初秋の旅が甦ります。

あの時、木次線の駅はどこも、地域の人たちからとても大切にされている印象を受けました。この番組に登場したのはまさに、過疎化の進むこの地域で、鉄路を愛し支え続ける人達でした。

番組を最後まで観てから、温かな余韻を胸に、朝の美観地区を歩き出しました。

▼ ブロンプトンと旅した木次線の記録はこちら

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ここまでお読み頂き、ありがとうございました。引き続き、爽やかな初夏の倉敷と、山中千尋トリオの素晴らしいライブを堪能した1日のことを描いていきたいと思います。

▼ こちらのマガジンで、ブロンプトンを連れて、地方都市とローカル線を旅する記録を綴っています。

私は、2020年に勤務先を早期退職した後、関東から京都へ地方移住(?)しました。noteでは主に旅の記録を綴っており、ロードバイクで北海道一周した記録や、もう一つの趣味であるスキューバダイビング旅行の記録、また海外旅行のことなども書いていきます。宜しければ↓こちらもご笑覧下さい。



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