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【75】北国の空の下 ー 週末利用、自転車で北海道一周 26日目 江差〜落石〜八雲① 2019年4月28日

冷たい風雨の中のライドから一夜が明け、寒冷前線が通り過ぎた道南に、雲ひとつない青空が広がりました。今日は江差からさらに北へ。
そのあと、函館空港まで辿り着く算段も必要です。

▼ 「週末北海道一周」、ここまでの記録はこちらです。


◆ 早朝の江差散歩

4月28日(2019年)、早朝5時。
その前夜は、冷たい風雨に苛まれたセンチュリー・ライドの疲れもあって、さほど呑んだわけでもないのに酩酊し、22時には寝てしまいました。酔いが冷める前に寝てしまったものだから、午前2時頃に目が覚め、その後も高校時代に隣のクラスにいたかわいい女の子が、おばさんになって登場する変な夢を見てしまい、熟睡できぬままに目が覚めました。
お陰で、昨日の疲れが抜けきっていません。

カーテンを開けると快晴。
朝の散歩に出ました。

▲ 朝の江差

日曜の早朝、人影は全くありません。
元乗り鉄として、2014年に廃止された旧JR江差線の跡がどうなっているのか、見てみたいと思っていました。
江差の街は、海岸に面した丘陵に広がっています。ホテルのある高台からは、駅のあった方面に向かって坂を下り、もう一度少し登り返します。桧山支庁の所在地だけあって、立派なホールなども建設されていますが、一方では崩れかけた廃屋も目立ちます。
江差駅の跡地には、ホームと線路の一部、さらに駅名標がポツンと残されていました。市街地から坂を下ってもう一度登り返しがあるような立地では、積極的にご利用ください、とはとても言い難かったろうと思います。とりわけ地吹雪の日など、駅までの道のりで力尽きてしまう人もいたのでは、と心配になってしまいました。
麗らかな春の朝と、鉄道が消えて寂れていく人気のない町。昨夜の変な夢のせいもあり、諸行無常感が先に立つ朝の散歩でした。

▲ 江差駅跡

さて今日は、19時30分に函館空港を立つ全日空便を予約しています。
それまでの予定ははっきり決めていません。
江差から10キロほど先の厚沢部から、渡島半島を横断し、七飯あたりから輪行するか、脚の残り具合次第では自走で函館空港に向かうか。
それとも、さらに30キロほど海岸線を北上し、旧熊石町から雲石峠を越えて八雲に至り、輪行で函館に向かうか。
次回以降のスケジュールを勘案するなら、本当は瀬棚までの70キロあまりを稼いでおくと先が楽になります。しかしその先、旧国鉄瀬棚線の廃線跡に沿って長万部までの長い道を走ってからの輪行で、飛行機に間に合うかどうか…
この渡島半島西海岸エリアは、かつては松前線、江差線、瀬棚線などのローカル線が通じていましたが、今では鉄道の全くない地域。
噴火湾側の主な町とを結ぶ路線バスもあるにはありますが、本数はかなり限られています。町の間も離れており、「週末北海道一周」のルート上では、最もスケジューリングが難しい区間です。
この10連休をフルに使えれば、札幌まで一気に走り切れるのだけれど、明日明後日は仕事が入ってしまいました。その後は毎年恒例のタイへのダイビング旅行が待っています。

朝食をとって出発準備をしていると、テレビのニュースは、上越新幹線が停電トラブルで全線ストップと報じていました。10連休早々、26日の日中の秋田新幹線、同日夜の山形新幹線に続くトラブルです。よりによって、どうしてまた、史上最初で最後かも知れぬ超大型連休の頭に、こんなことが重なるのでしょうか。JR東日本の関係者は天を呪いたいような気分でしょう。

◆ いにしえ街道

チェックアウトした後、古い町並みを復元した一角を軽く走ってみました。
「いにしえ街道」と名付けられた通りには、旧横山家、旧檜山爾志郡役所、また古い民家を活かした雑貨ショップなどがあり、興味を惹かれました。

▲ いにしえ街道

この町並みや開陽丸のレプリカだけで観光客を呼ぶのは厳しいかもしれませんが、地域の皆さんが地元を愛し、一体となって街づくりに取り組んでいる様が窺われ、何ができるというわけではないが応援したい気持ちが湧いてきます。

地元経済界と行政が協力して、風光明媚な海岸線をめぐるサイクルツーリズムなど、もっと推進してはどうかと思いました。しまなみ海道などのポピュラーになり過ぎてしまった感のある有名ルートよりも、ベテランのサイクリストやインバウンドのリピーターにとって、魅力的なコースになる可能性はあるのではないでしょうか。

◆ 美しい海岸線を北上

さほど強くはないものの、向かい風が吹いています。加えて昨日の疲れと寝不足で身体も重い。
市街地を出てしばらく走った時点で、瀬棚まで70キロ走ってさらに長万部まで山を越えるプランは断念。
かといって厚沢部から函館に直行では、この快晴の日にあまりに勿体ないので、間をとって熊石から八雲への山越えを選択。

しばらくは渚を走ります。暖かな朝日を浴びる海の波は小さく、日本海とは思えぬような明るい色です。遠浅のようで、沖合い数百メートルで深い青に変化していました。
行く手には山々が雪を戴いています。たかが渡島半島の山、とたかをくくっていたけれど、今正面に見えている白水山、遊楽部山などは標高1000mを越えています。今日はその山腹を、噴火湾に向かって越えていくことになります。
行く手の海岸線もくっきりと見え、気持ちも晴れ晴れとしてきますが、今日も高巻きを余儀なくされそうな断崖も何箇所か見えています。

▲ 残雪に輝く山懐を、これから越えていきます。

繁次郎温泉というのを過ぎたところから、海岸台地への上りが始まりました。今日は元から速く走る気はないけれど、ロードバイクでゆっくり走ると却ってお尻や肩が痛くなります。しっかりペダルに体重を掛けて尻や掌への負荷を分散させ、真面目に走る方が、結果的には疲れは軽いのです。
そう分かってはいるのだけれど、なんとも身体が重く、ついついサドルにどっしり座って軽いギヤで楽してしまいます。
厚沢部に入ると、ホームセンターやドラッグストアの集積が現れ、函館へ向かう道と分かれる三叉路に行き当たりました。信号待ちの長い車列ができていますが、北へ向かう車は少なく、殆どが山を越えて函館へ向かおうとしています。

厚沢部川を渡って、短いトンネルを抜けると、間もなく次の高巻き。
台地の上に「シラフラ」という道標があったが、立ち寄るのが億劫で通過してしまいました。
ところが後になってグーグルマップで検索してみると、美しい白亜の断崖の写真が出てきて、激しく後悔することとなりました。これまでも何度もあったように、下調べして来なかったが故の見落としです。

乙部の町に向かって下っていくと、湾を隔てた向こう側には、大聖堂のように柱状の岩が立ち並ぶ絶景が見えました。館の岬というらしい。

▲ 乙部漁港より、館の岬

海底に堆積した地層が地殻変動で隆起し、さらに波に浸食されてこのような絶景が形成されるそう。自然の造形とは思えないような、幾何学的な美しさがあります。
そういえば、3年前の晩秋に走った十勝の海岸線にも、館の岬をもっと小規模にしたような、人の歯型状の地形が並んでいる一帯がありました。もしかしたら、同様の過程を経て形成されたのかもしれません。
少し足を止めてこの風景を堪能すべく、漁港の方に寄り道しました。

乙部は、箱館戦争に際して政府軍が上陸した地とのことで、その記念碑と、「北海道の夜明けの地」と銘打った、いかにも地元愛の強い郷土史家が筆を認めたらしき説明版が設置されていました。

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ここまでお読みいただき、ありがとうございました。引き続き、北国の初春を愉しみながら、檜山の海岸線を北上します。よろしければ続きもお読みくださいませ。

私は、2020年に勤務先を早期退職した後、関東から京都へ地方移住(?)しました。noteでは、ロードバイクで北海道一周した記録や、もう一つの趣味であるスキューバダイビング旅行の記録、そのほかの自転車旅や海外旅行の記録などを綴っています。宜しければこちらもご覧頂ければ幸いです。

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