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【89】北国の空の下 ー 週末利用、自転車で北海道一周 余録:中年は愛車と共に

2020年8月、足掛け5年がかりで走って来た北海道一周の轍は繋がりました。この記事では、旅を振り返って今思うことを綴ります。

▼ 「週末北海道一周」、ここまでの記録はこちらです。


◆ 北海道の未来は…

「週末北海道一周」は、少子高齢化や産業構造の変化によって、縮小する町々を巡る旅でもありました。
集落はあっても人影がない。町はあっても賑わいがない。
黙々とペダルを回し続けていると人と会話する機会がないし、やや人見知りな私の性格もあるでしょうが、人との触れ合いが多い旅ではありませんでした。

▲ 思い出の浜頓別は今…

輪行で散々お世話になったJRも、札幌をスタートした2015年当時と比べると、特急が相当数減便され、乗降客のまばらな駅の廃止も進められました。旅の序盤でお世話になった留萌本線も、根室本線の花咲駅も上厚内駅も廃止されました。
さらに、日高本線の鵡川以遠も復旧工事を断念することが決まりました。列車の来ない駅を守り続けていた人たちのことが、脳裏をよぎります。

▲ ありし日の花咲駅
▲ 古い駅舎が残されていた上厚内駅
▲ 様似駅

大好きな北海道の未来はどうなるのか。
時代変化の中で、例えば炭鉱都市のように、役割を終えたコミュニティが消えていくのは寂しくも不可避としても、その先にある未来はどのようなものか。
月並みではありますが、北海道の四季の風景、水と空気、食の幸、それに幾多の魅力的な道を、国内外の多くの人々に体感してほしい。コロナ禍によりインバウンド依存の観光業の脆弱さが明らかになったとはいえ、北海道はアジアの人々にとって、素晴らしく魅力的な大地であることに変わりありません。
自転車と公共交通機関を活用して旅することで、その魅力をさらに実感できると確信しています。
北海道全域がニセコ化してほしいとは思いませんが、都ぞ弥生の一節を借りるなら、「星影冴かに光れる北を 人の世の 清き国ぞとあこがれぬ」、そんな想いを抱いた多くの人々が、世界中からこの地に集い、旅し、その中からこの地に根を下ろして新たにコミュニティへ加わっていく人々が生まれる。北海道へのIターンを一度は見送ったわたしですが、いつの日か、その一人になりたいと願っています。

◆ 中年は愛車と共に

もう一つ、仕事や人間関係に疲れた中年にとって、北国の透明な大気の中でペダルを踏む週末は、心身の健康を保つ上で大切な時間となることも、また間違いありません。
中年は愛車と共に北の大地を目指すべきだ。

このブログの中で何回か、宮脇俊三氏の「時刻表二万キロ」に触れました。もう50年近くも前の国鉄全線完乗の記録ですが、後日、宮脇氏はある対談で、この著作では中年男の遊びみたいなものを描きたかったのだ、と語っておられました。

宮脇氏の著作によって、鉄道旅行は文化として、というと大袈裟かもしれぬが、大人の趣味として広く認知され、ローカル線の魅力が広く知られるところとなりました。わたしの「週末北海道一周」などを、それと比較しては失礼にあたりますが、中年男の遊び、という同じ根っこから生まれたものではあります。サラリーマンが、週末や連休などの限られた時間をやりくりして、轍を延ばしていくという旅のスタイルも似通っていて、何年振りかで書架から持ち出した時、初めてこの本を読んだ中学生時代より遥かに親近感を覚え、この旅の期間中、折に触れ紐解いていたものでした。

わたしのようにつぎはぎで走るのは言うまでもなく非効率ですが、反面、スタート地点までのアプローチ、一夜を過ごす町の風景、酒場でのひと時など、先を急ぐだけの旅では味わえない楽しみがありました。
そして走り終えてから自宅までは、多くの場合、心は明日からの仕事への憂鬱さより、透明感と充足感に満ち溢れ、次のレグへの期待が膨らむ幸せな道のりでした。

◆ 自転車と成人病

もう一つ、この旅のテーマというほどではないが、高血圧と脂質異常症のお話。
今でも血圧は上がったり下がったり、なかなか改善とはいきません。食べ物の嗜好は簡単には変わらないし、お酒もやめられない。一方、美味しいものを飲んだり食べたりできなくなったら、旅の楽しみも半減してしまうわけで、要は、食べたいものをバランスよく適量に、という心掛けが必要なのでしょう。

一方、コレステロールは、まだ少し高めだが適正範囲に落ち着き、中性脂肪は64と最悪期に比べ三分の一に下がりました。野菜とタンパク質中心の朝ごはん、糖質の過剰摂取に注意、また求職期間中は天気さえ良ければロードバイクで走ったり長い距離を歩いたりしていたことも効果的だったようです。
一般的に、摂取カロリーは気にするが消費カロリーには無頓着な人が多いということを、とあるプロレスラーが話していました。
運動習慣を身につけることは、成人病対策だけでなく、がんの罹患率を下げ、また海馬の発達を促進することで認知症のリスクも下げるといいます。
老後に備えるならば、あれやこれや傷害・疾病保険に加入するより、ジムの会費やちょっといい自転車に投資する方が賢明ではないでしょうか。

とは言え、多忙なサラリーマン生活を送っていると、運動習慣はなかなか定着させられないもの。
55歳の新入社員ともなれば、なおさらのこと。

◆北国の空の下へ– 再訪を夢見て

華やかな紅葉の季節が終わり、底冷えのする京都。
慣れぬ仕事に手間取り、夜も9時近くなって、嵐電に揺られて嵯峨野の自宅に帰る道すがら、北海道の風景が恋しくなることがあります。

北海道一周の轍は繋がりましたが、改めて走りたい道は数多い。
強風ではなく快晴無風のサロベツ原野を快走してみたいし、襟裳への道も若葉溢れる季節に、今度は氷雨ではなく陽光を浴びて駆けてみたい。
次は懐かしい浜頓別や、紋別や、霧多布や、北の湘南・伊達など、今回とは違う町で一夜を過ごしてみたいし、不覚にも通過してしまった有珠善光寺や桧山のシラフラなどにも行ってみたい。

また、わたしが走ったのは、いわば「海の北海道」です。北海道の魅力は、山にも森にもあります。例えば襟裳岬から宗谷岬まで縦断したら、どんな自然の表情が待ち受けているだろうか。札幌から根室まで走るのはどうか‥

「週末北海道一周」はこれで終わるけれど、まだまだいくつもの道と自然の表情が、そこに暮らす人々と共に、北の大地で待っています。

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北海道一周の記録、最後までお読みいただき、ありがとうございました。
その後、ふたたび北海道の土を踏んだのは、2年後のことでした。その旅のことを書き綴って、このマガジンの締めとしたく思います。
よろしければ続きもお読みいただければ幸いです。

わたしは、2020年に勤務先を早期退職した後、関東から京都へ地方移住(?)しました。noteでは、ロードバイクで北海道一周した記録や、もう一つの趣味であるスキューバダイビング旅行の記録、そのほかの自転車旅や海外旅行の記録などを綴っています。宜しければこちらもご覧頂ければ幸いです。


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