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周囲の期待をことごとく蹴った女性の成したもの――佐藤亜紀『喜べ、幸いなる魂よ』書評
https://www.kadokawa.co.jp/product/322102001022/ 「○○ならこれぐらいのことはしてくれないと」――そんな周囲から期待される役割を担わないのは罪だろうか。佐藤亜…
周囲の期待をことごとく蹴った女性の成したもの――佐藤亜紀『喜べ、幸いなる魂よ』書評
https://www.kadokawa.co.jp/product/322102001022/
「○○ならこれぐらいのことはしてくれないと」――そんな周囲から期待される役割を担わないのは罪だろうか。佐藤亜紀『喜べ、幸いなる魂よ』のヤネケを知ると、むしろ個人に特定の役割を期待することこそが罪だと思うようになる。
18世紀ベルギーのフランドル地方、10歳で亜麻糸商のファン・デール家に養子とし
「おじさん」たちよ、さようなら|松田青子『持続可能な魂の利用』書評
初めてそのMVを見たとき、私の目は釘付けになった。社会への怒りを訴える反抗的な歌詞。ハードな楽曲に合わせ、トランス状態で踊り狂う制服姿の集団。そのうちの誰よりも激しく動き、挑むような強い眼差しをカメラに投げかける中央の少女。圧倒的存在感で私の心を奪った彼女は、松田青子『持続可能な魂の利用』の主人公〈敬子〉が、夢中になって推したアイドル〈××〉と、おそらくは同一人物に違いない。
陰湿なセクハラ
物語に立ちこめる身体の”臭い”|吉村萬壱『死者にこそふさわしいその場所』書評
コンプレックス商材という言葉がある。薄毛、肥満、老化など、誰もが何かしら抱える劣等感を煽って販売される商品のことで、その広告は強烈なインパクトを持つ画像を伴う。
ブルドッグのように弛み切った頬、鼻回りの毛穴からにゅるりと飛び出す角栓、脂ぎった地肌が透けて見える頭頂部、体幹に垂れ下がる凸凹した贅肉……本来は綿密に編集されたモデル・俳優の写真と比べるのが愚かしく、市井の人間は凡そ大差ない加齢を経
「語れない」人物を「語る」ということ|クラリッセ・リスペクトル著、福嶋伸洋訳『星の時』書評
「わたしはある小説の書評を書こうと思う。書かなければならない。小説のほうがわたしのなかで自分の存在を強く示してくるからだ。しかし同時にわたしは評が始まるのを恐れる。虚飾で曲解を招くことのないよう、この文章ができる限り事実のみを綴った、冷酷な報告となることを望む。もうすぐ始まるだろう。迫りくる“期日”にもう耐えられなくなってきた。とは言え、こうして発光するモニターを凝視していると目が霞んで仕方ない―
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