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新潟の小さな巨人〜本間至恩〜


尋常ならざる俊敏性(アジリティ)



彼のプレイを見る度に毎回このフレーズが僕の脳裏に浮かぶ。

彼とはアルビレックス新潟に所属する本間至恩選手のことだ。

今日は僕がいま心血を注いでいるアルビレックス新潟の中でも、特に期待をしているこの若手選手について書いていきたい。

アルビサポではない方の為に彼のプロフィールに触れると、アルビレックス新潟のユースから昨年トップチームに昇格した地元出身の生え抜き選手だ。

プレイスタイルは左サイドを主戦場とする右利きのドリブラー。いわゆる逆足ウィンガーだ。

身長は164㎝ 体重59Kg。アスリートとしてはかなりの小兵と言えるだろう。風貌にしてもまだまだあどけなさを残す。我がチームの選手ながら、小学生がピッチに入ってきたような錯覚を覚えてしまう。

しかしひとたびピッチに立てばその姿はまさに疾風迅雷。

一人だけ倍速のような動きでドリブルを始める。

そして軽量を活かした高速フェイントと細やかなボールタッチを駆使して相手のマークを剥がす。何度も細かいフェイントを入れて相手の重心を見極めその逆をつくのだ。

彼の走り方には二つ特徴があり一つは歩幅が狭いこと、もう一つは競歩の様に蹴り足をあまり地面から離さないことだ。

だから足の回転が抜群で細かい切り返しがきく。人が3歩で歩くスペースを5〜6歩かけて進んでいる印象を受ける。テケテケテケと効果音をつけたくなる位だ。

そして左サイドから爆発的な加速で中央に切れ込み利き足でゴールを射抜くのが彼の攻撃の型だ。

何よりその型を必殺技たらしめているものこそ彼の最大の持ち味俊敏性(アジリティ)だと思う。

速い。

彼は速い。

とにかく速いのだ。

一人だけ早送りのような動きをする。

動作の一つ一つが速い。上半身のフェイント一つとってもとにかく速い。

その速さとは馬のような足の速さではなく猫のような機敏さを指す。0から100への加速。そして100から0への減速力がズバ抜けて高い。

雑な表現だがキレが凄いのだ。

実際試合中の彼の動きはネコ科の動物じみているようにすら感じる。

アルビレックス新潟は3年前までJ1リーグに所属していた。今思えばその頃の僕はほとんどJ2の選手には興味が無かった。だがそれは間違いだった。身をもって知った今だからこそ断言する。J2のチームにもいるのだ。お金を払ってでも観たいと思わせてくれる選手が。

錬磨と研鑽を重ねて限界まで磨きあげられたプロの技は間違いなく見た者を魅了する。

プロ野球選手のダイビングキャッチを眼前で見た少年がその迫力と美しさに心を奪われその将来を決めてしまうように。

かく言う僕も昨年至恩が初スタメンの試合を砂かぶり席で観戦したことで完全に心を奪われてしまった。

それほどまでに彼のドリブルとアジリティは見るものをワクワクさせる。

これを読んだ方には一度でいいから彼のプレイを生で見て欲しいと思う。

尋常ならざるアジリティという表現が決して大げさではないとご理解頂けるはずだ。

もう一つの彼の魅力に触れたい。

風貌に似合わぬ強心臓の持ち主であるのだ。

一昨年のリーグ戦のことだ。

試合終盤に当時高校生だった彼は投入された。

同点で迎えたロスタイム。

味方が繋いだルーズボールを拾った彼は左サイドから中に切れ込み迷わずシュートを撃った

彼の最も得意な型だ。

放たれたボールは美しい軌道を描きゴールへ。

ビッグスワンは一瞬にして歓喜の渦に包まれ高校生は新潟のヒーローとなった。

特筆すべきはその試合が彼にとってのリーグ戦デビューでありロスタイムの出来事ということだ。

あの場面でシュートを撃つ。

それは試合の責任を取ることを意味する。

彼はそれをやってのけた。

瞬間、至恩には迷いは無かっただろう。

先にも述べたが彼はアスリートとしては本当に小柄だ。

だからゴール前での競り合いやヘディングには勝算がないことを知っている。

その身体の小ささゆえに出来ることと出来ないことがハッキリしている。だから選択肢に迷いがなく判断が早いのだ。

速いうえに早い。

それが僕らサポーターにとっても忘れられない一撃を生み出すこととなったのだろう。

再開幕を迎えるにあたり


今年から十代にしてエースナンバー10を背負った彼は開幕戦はベンチスタートだった。

直近の練習試合を見てもスペインから来た新監督から未だ全幅の信頼を得られていないようだ。しかし彼が個の力で局面を打開出来る稀有なプレイヤーである事実は揺るがない。スペイン人監督の目には伸びしろと同じだけ課題が見えているのだろう。

だから現時点で来週に迫った再開幕戦に彼がスタメン出場するかは分からない。

それでも今年の超過密日程を乗り切るには絶対に彼の力が必要だ。

彼がスペイン人監督の期待に応え今ぶつかっている壁を乗り越えた時。それはあの小さな身体に秘められた特大のポテンシャルが開花する時なのかもしれない。

そのとき彼は間違いなくアルビレックス新潟をJ1昇格へ導く原動力となっているはすだ。

さらには彼の得意な型が絶対の技に昇華された時。全盛期のオランダ代表ロッベンがそうであったように「分かっていても止められない」レベルに達した時。

本間至恩は青いユニフォームに袖を通し日の丸を背負っていることだろう。

新潟の至宝と呼ばれる彼にその日が訪れることを僕は今から確信しているのである。

同時に長く新潟に留めておける器ではないことも理解している。だからその時まで

vamos!本間至恩!




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