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教員に特有の退職パターン

5月頃になるとあまりの業務の過重負担から『仕事を辞めたい』『つらくて仕事を辞めた』などの声が初任の先生から聞かれます。教員は6ヶ月未満で退職する人の割合が一般職公務員よりも多いのではないか…。そう考え総務省の統計を調べてみました。結果、6ヶ月未満の退職率が高いパターンが見られました。

教員の6ヶ月未満の退職率

総務省の統計から引用します。教員(教育公務員)の退職者数の表がこちらです。退職者数の合計は84,904人です。これは、定年退職、講師の雇い止め、自己都合退職など全てを含んだ数値です。6ヶ月未満での退職者数の部分を赤で囲ってピックアップしてみます。

教員の6ヶ月未満の離職者

すると、6ヶ月未満で退職した教員の数は、20代:1,195人、30代:587人、40代:429人、となりました。

では、その時期に退職を選択した人は全体の何割ほどでしょうか。令和2年度のデータですが、教員の年代別構成割合がわかるデータがあります。

年代別公立学校教員数

こちらの全体数から割り算をすることで、6ヶ月未満での退職率を算出することができます。以下のように推定できました。

  • 20代:1.1%

  • 30代:0.3%

  • 40代:0.3%

新規採用の若い教員のうち、1%は6ヶ月以内に辞めてしまうことが分かりました。30代、40代では変化はありません。

公務員一般職の6ヶ月未満の離職率

総務省の統計には公務員一般職の離職数のデータもあります。

公務員一般職の6ヶ月未満の離職者

公務員一般職との比較をしてみましょう。6ヶ月未満で退職した一般職公務員の数は、20代:614人、30代:460人、40代:329人、となりました。

平成30年の総務省統計ですが、公務員一般職(全地方公共団体)の年齢別構成人数のデータから自己都合の離職率を算出してみます。年齢別人数のデータの区切りが悪いのでおおまかな推定です。

年代別公務員一般職の数

一般職公務員の6ヶ月未満の退職率は以下のように推定できました。

  • 20代:0.4%

  • 30代:0.2%

  • 40代:0.1%

比較結果

教員は6ヶ月未満で辞めてしまう人の割合が、特に20代の初任者で高いことが分かりました。これは、実感と一致します。仕事に着いても早々に辞めてしまう、辞めざるを得なくなる、などは過酷な労働環境ゆえのパターンと言えるのではないでしょうか。

これはなぜでしょうか。おそらく、20代の方は社会に出て初めて着いた仕事が教員であると思われます。初めての職業に選ぶには、教員はあまりに過酷な長時間労働であることが一因でしょう。教員は仕事について何も研修がなくいきなり現場で一人前の働き方を期待されます。さらに、若手には『若い人がやらないと』『若い人に経験させよう』と他の人が敬遠するような業務が振られがちです。文科省の調査により、若い人ほど時間外勤務が長く、平均で60時間を軽く超えていることが示唆されています。

また、初めての職業としては、仕事のいろはが分からないのに誰も同僚が仕事を教える余裕がないこと、も原因と考えられます。これは、教員は教壇に立ったら初任者でも一人前として扱われてしまうこと、同僚の先生は多忙で新卒若手を気遣う余裕はないこと、学校全体で疲弊していて初任者を育てる土壌が失われていること、などが原因と考えられます。

まとめ

教員の6ヶ月未満での退職率を探ってみました。教員は6ヶ月未満で辞めてしまう人の割合が、特に20代の初任者で高いことが分かりました。勤務を始めた数ヶ月が過酷すぎて乗り切れずに辞めてしまう人が多いと考えられます。それ以降の自己都合退職率は公務員一般職も教員も変わらないようです(こちらの記事を参照)。

せっかく仕事に着いた人が、数ヶ月で辞めてしまうようでは、人材の無駄遣いをしていると言わざるを得ません。過酷な労働環境に適応できる人だけを選別するような働かせ方で良いのでしょうか。

引用文献

第9表の1 団体区分別、職員区分別、退職事由別、年齢別退職者数及び退職手当額(PDF)

(参考資料3)公立学校年齢別教員数(文科省)

第1 調査結果の概要(総務省)


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