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教員の離職率はどのくらい?

教員はブラックな労働環境の職業と話題になっています。しかし、しばしば『民間はもっと大変だ』『民間の離職率に比べたら教員は楽だ』などとも言われます。実際、仕事が過酷が故に離職しているであろう人の割合はどうなっているのか、データを読み解いてみました。

教員の退職者数(令和3年度)

総務省の統計から引用します。教員(教育公務員)の退職者数の表がこちらです。退職者数の合計は84,904人です。これは、定年退職、講師の雇い止め、自己都合退職など全てを含んだ数値です。仕事が過酷で辞める人は自己都合退職に該当するはずなので、自己都合退職者数の部分を赤で囲ってピックアップしてみます。

年代別教員の退職者数

すると、仕事が過酷が故に辞めた人の数は、20代:5,537人、30代:4,571人、40代:2,376人、50代:1,751人、と推定できます。

教員の離職率はどのくらいか

では、自己都合退職を選択した人は全体の何割ほどでしょうか。令和2年度のデータですが、教員の年代別構成割合がわかるデータがあります。

年代別公立学校教員数

こちらの全体数から割り算をすることで、離職率を算出することができます。結果、教員がブラックであることが理由の離職率は以下のように推定できました。

  • 20代:5.2%

  • 30代:2.6%

  • 40代:1.6%

  • 50代:0.8%

概ね、若手の離職率は高く、年齢が上がるにつれて離職率が下がっていることが分かります。

他職種との比較

さて、以上の離職率は高いのか低いのか、どう判断したら良いでしょうか。

公務員一般職との比較

総務省の統計には公務員一般職の離職数のデータもあります。

年代別公務員一般職の退職者数

こちらをみると、公務員の一般職としても、20代後半から30代前半で自己都合退職が多い同じ傾向が見てわかります。教員が特殊ではなさそうです。仕事が過酷が故に辞めたであろう人の数は、20代:8,472人、30代:7,779人、40代:4,051人、50代:2,898人、と推定できます。

平成30年の総務省統計ですが、公務員一般職(全地方公共団体)の年齢別構成人数のデータから自己都合の離職率を算出してみます。年齢別人数のデータの区切りが悪いのでおおまかな推定です。

年代別公務員一般職の数

一般職公務員の自己都合離職率は以下のように推定できました。

  • 20代:5.5%

  • 30代:4.1%

  • 40代:1.6%

  • 50代:1.3%

民間との比較

参考程度になりますが、総務省の令和3年度雇用動向調査との比較もしてみます。この調査では日本の主要16産業(建設業、運輸業、宿泊業,飲食サービス業、生活関連サービス業,娯楽業など)での年代別離職率が明らかになっています。民間なので雇用の流動性が非常に高く、かつ全ての離職者を網羅しているため単純比較はできません。ここでは、年齢毎の離職率に注目したいです。

令和3年度雇用動向調査

すると、概ね、20代は20%程度、30代では10%程度の離職率だということが分かります。民間では入職が公務員より早いため、19歳以下が最も離職率が高く、20代前半から緩やかに下がっていく傾向があります。分布としては職種全体としても教員(教育公務員)としても、若いうちの離職率が高いという共通点がありそうです。

まとめ

教員の離職率を探ってみました。結果、離職率は若手で5%ほどであり、年齢が上がるにつれて下がる傾向があることが分かりました。公務員の一般職と同様の傾向だと考えられ、教員の離職率に特殊性は見いだせませんでした。民間との比較でも、離職率の推移は同様であると考えられました。

ただし、5%という数値は、100人いた同期が毎年5人ずつ辞めていくような状況です。専門知識を身につけ倍率の高い試験を突破した教師がそのような割合で辞めていってしまうのは、実感としては離職率が高いような印象があります。

また、今回は経年比較をしていません。教員のブラック労働環境が話題になったのはここ10年ほどです。今まで低かった離職率がここ10年ほどで急に上がっている可能性もあります。経年比較可能なデータも参照してみる必要はありそうです。

引用文献

第9表の1 団体区分別、職員区分別、退職事由別、年齢別退職者数及び退職手当額(PDF)

(参考資料3)公立学校年齢別教員数(文科省)

第1 調査結果の概要(総務省)

-令和3年雇用動向調査結果の概況-(総務省)


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