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人とつながり、人をつないでいくワケ

地域で活動されている方のご紹介を通じて、京都市東山区エリアで活動をされている方にお話を伺う企画「iINA」。活動に至ったきっかけや地域活動を通じての変化感など「いいな」と思えるストーリーをお聞きし、新しいことに踏み出したい人が、まちの「いいな」につながるアクションに踏み出すきっかけとなるような発信をしていきます。

ー 今回取材させていただくのは、東山区で生まれ育った大野丈(おおのじょう)さん。これまでプロサッカー選手や美容業界のキャリア支援などをされてきた大野さんが、今の活動を始めたきっかけやその思いについてお話を伺いました。

「自分らしく生きる」きっかけづくり

ー 現在のお勤め先のことを教えてください。

今は、株式会社Lean on Meという会社で働いています。ここでは、福祉施設などで障がいのある人を支援している方々をサポートするe-ラーニングを作成しています。時間の制約で正しい知識が学べないことが不適切な支援や虐待に繋がってしまうことが大きな社会問題となっている今、適切な支援を学んでいただいて、離職率も下げていきたいという思いでチャレンジしています。

ー 他にも移住定住に関わるお仕事をされているとお聞きしました。

亀岡市と南丹市・京丹波町の2市1町のエリアの魅力を知ってもらって、移住者を増やそうという取り組みを南丹振興局と森の京都DMOとでタッグを組んで進めています。ただ単に移住者を増やすのではなくて、このエリアで幸せになれるような方に移住してもらえるように、ミスマッチなく進めようとしているところに魅力を感じていますね。

何気ない一言で自分を出せるようになった

ー 子どものときはどんな感じでしたか?

実は僕、小学校まではわんぱくな子どもだったんですけど、多分元々人見知りだったんですよね。中学校に入って急に知らない人ばっかりで、すごく緊張して。本当は喋りたいなと思う子たちとも喋るタイミングを失ってしまいました。大人しく過ごしたければそれでも良いんですが、本当はそうしたくないのに、隅っこで3年の途中まで、大人しく過ごしていました。自分じゃない自分を演じていた感じです。唯一救ってくれたのがサッカーで、よく試合を観に行ったり雑誌を読んだりして過ごしていました。

でもそんなとき、吉川っていうクラスの人気者が、たまたま席替えで隣になって、話しかけてくれたんです。そこから自分を出せるようになりました。本来こんな風に過ごしたいなって思える学校生活を送ることができて、いろんな友だちにも恵まれました。

僕がここ3、4年でなぜキャリア支援をしているのかを振り返ってみると、この出来事が大きかったんですよね。彼は何の意図もなく、たまたま僕が隣にいたから喋ってくれたと思うんですけど、そんなさりげない一言が僕の学校生活を楽しくしてくれて、人生を好転させてくれた。その一言がなければ、自分を押し殺して生きていた人生だったのかもしれません。何気ない一言で自分を出せるようになった経験が、たった一言でも人を救えるんだなと思えたんです。

人に人生が楽しいと思えるようになるきっかけを提供できる。そんなことに喜びを感じられるようになったのは、吉川に声をかけてもらえたからだなって思います。

「大事にしたいこと」の伴走者になりたい

ー キャリア支援はいつ頃から?

30代に入ってからアスリートのキャリア支援をしている会社に勤めたんです。僕にとって初めてのキャリア支援はプロサッカー選手でした。プロって、勝ち上がることに意識を向けられるので、本当の自分の気持ちを封印していくんですよね。サッカー選手ってどうしてもサッカーに打ち込む時間が長く、サッカー以外のことに取り組んだり、サッカー関係者以外と交流する機会が限られてしまい、どうしても視野が狭くなってしまうんです。でもあるとき、半年間担当していた選手が本来サッカーを始めたきっかけだった「身近な人に笑顔になってもらうことを大事にしたい」という価値観を話してくれたんです。

そこで、人ってみんなその人なりに大事にしたいものがあるけれど、身近な人から期待されたり、周りと比較したりして、自分が大事にしたいことを封印してしまうことに気がついたんですね。

僕がそのことに気づけたのは周りの人や吉川のお陰だったけれど、なかなか自分が大事にしたいことに気付くきっかけがない人もいて、僕はそんな人が大事にしたいことに気づく伴走者でありたいって思いました。

キャリアを僕が与えることはできませんが、ちょっとでも人が笑顔になるためのきっかけを作ることはできる。そのスタンスは彼との出会いからですね。

ー素敵な体験ですね。初めてのキャリア支援ということですが、そこに踏み出すことになった大きな出来事があったんですか?

僕の人生の中で一番落ち込むタイミングが30歳頃だったんです。特別何か理由があったわけではないんですけど、急に会社に行くのが嫌になって。友だちに相談してみても、友だちは、もっと大変な状況で頑張っているんですよね。そんな話を聞くと、「自分はこんなにもいい環境で働いているのに不満を感じるなんて、社会の不適合者なのかな」って思ってしまって、どんどん自分を追い込んでいったんです。

僕は多分、粘り強く頑張り続けられなくて、すぐに逃げちゃおうって思う人間なんですよ。そのときも今振り返ると防衛本能だったと思うんですが、一人になるとマイナスに考えてしまうので、それまで行ったことないセミナーにたくさん参加したんです。そのとき感じたのは、僕は、成功とか年収とか、表面的なもので話をされてもあまりワクワクしない。逆に、自分の幸せのために行動して、その志のもとに自然と仲間が集っている人に惹かれることに気づいたんですよね。

それが自分の状況と重なって、「じゃあ今の僕は目の前の仕事が自分事になってないからワクワクしないんだろうな。僕はもっと自分の大事にしたいことを追求していきたいんだな。僕はこれからの人生、なにか利害関係なく困ったときに助け合える仲間がそばにいる方が絶対に幸せなんだろうな」って思ったんです。

そう考えて自分の人生を振り返ったら、「あ、僕は行動できていないな」って、すごく痛感しました。いろんな人に会って「世の中ってこんな仕組みなんだ」、「こんなことしてる人もいるんだ」と、自分の無知を知り、これからもっといろんな人に出会って、いろんなことを知っていこうと好奇心が醸成されたんです。

そこからの生き方の軸として、自分があまり興味ないことをどんどん行動していこうって思ったときに、たまたま100人委員会(※1)の募集を見つけたんです。まちづくりは詳しくなかったですが、そこで岡本さん(※2)や全く知らない世界でチャレンジしている方たちとの出会いがどんどん広がっていって、まちづくりや人のキャリアに関わりたいという想いにつながっていきました。そこが僕の転機でしたね。

※1 100人委員会:京都市未来まちづくり100人委員会の略称。2008年~2016年まで開催しており、京都の未来のまちづくり全体に関するテーマについて市民が議論しあって様々なプロジェクトが生まれた。
https://www.facebook.com/kyoto100/
※2 岡本さん:東山いきいき市民活動センターのセンター長。100人委員会の運営に携わっていた。

ーしんどかった経験が転機になったんですね。

人って、すごく落ち込んだときは大きな転機なのかなって僕は思いますね。
振り返ると、中学時代に落ち込んでたときも、吉川の一言で一気に上がったんですよね。悩んだときは「もっと本来の自分はこうありたい」っていうものが見えてる。

だから光の先が見え始めた瞬間はすごくいいシグナルであるはずなんですけど、一人で向き合うのは苦しいので、一緒に山に登ってあげる人が近くにいれば、悩みながら成長していって、きっとその人にとって、本当にありたい自分であるための大きなチャンスに立てるんだろうなって思えるんです。

僕はいろんな人に出会って、そこで自分の価値観を知って、もっと自分をこうしたいなって思えた。一人で考えていたらどんどん苦しくなる体験もしたので、そうやって苦しんでいる人に伴走したいという想いから、キャリアとか、人に関わることにもつながってるのかなと思います。僕じゃなくても悩んでいる人をちゃんと受け止めてあげれる存在が一人でも増えていければすごくいいなと思います。

人のつながりが可能性を引き出してくれる

ー 大野さんにとって、人とつながることの意味って何ですか?

二つあって、一つ目は、自分とは全然違う生き方・あり方の人と出会うことによって、自分が全然気づいてなかった新しい価値観や気づきをもらえることです。自分が持っている、おそらく潜在的な可能性を引き出してくれるのはやっぱり人なんだろうなって思います。僕は30歳まで、すごく小さい枠を見て生きてきたんだと思います。どこか食わず嫌いで、体験もしていないことを自分にはできないって勝手に思い込むところがあったんです。でも、100人委員会で全く自分が知らない生き方とか、いろんなチャレンジをしている人を見させてもらって、それまで時間の無駄だって感じてたボランティアだって、自分がこうなりたいっていう一つの手段なんだって思うようになりました。

二つ目は、僕の活動全てのベースになってくるんですけれど、僕のやりたいことってその人がもっと自分らしく生きることのきっかけ作りに寄与することなんですが、僕が全てを解決する必要はないと思っています。いろんな人とつながってると、その人の可能性をもっと引き出すことができる人につなぐことができるし、結果的に僕がやりたいことが実現できるよねって思うんです。

ー人とつながることも、人をつなぐこともされてるわけですよね。

僕自身も知らないことをもっとそこから教えてもらえるから、やっぱり人の出会いとかつながりって大事だなって。ただ、そのためには僕も相応の人間でいないといけないのでもっと自分も勉強しないといけないし、頑張らないといけないなと思ってます。本当に僕は運が良くて。吉川との出会いもそうです。会社を辞めて100人委員会に出会ったのも、色んな人との出会いのおかげだったので。

誰もが同じ選択肢を持てる社会を

ー ではこれから先、40代で実現したいことはありますか?

一番やりたいのは、障がいのあるなし問わず、同じ選択肢を持ってもらうことです。たとえばサッカーのクラブチームに入ろうとしたとき、障がいを持っているお子さんだと、コーチ陣が配慮事項を分からず、受け入れられないことが当たり前にあるんですね。なので、サッカーをできる選択肢をちょっとずつ広げていけるようなことにチャレンジしたいなと思ってます。やっぱりサッカーは僕にとって大きな存在ですから。

いま働いているLean on Meでも同じ世界観を持っているので、旅行とか、余暇活動とか、健常者と一緒に同じように選んでいけることで誰もが笑顔になる社会に近づけられるよう、事業を成長させていきたいです。

ー ありがとうございました。最後に、これを読んでくださってる方に一言いただけますか?

人って、周りに気を遣って、自分が本当に大事にしたいことを横に置いてしまうことってあると思うんです。それは別にいいと思うんですけれど、ただ、自分の胸に手を当てて考える機会を大事にしてもらいたいんです。自分が無理しすぎずに幸せになってもらうと、周りも幸せになるんだろうなって。

その中でもし、何か自分のスキルを活かして貢献したいと思ったときに、同じような思いを持っていたり、応援してくれる方がいると、自分の思いがエネルギーに変わっていろんなアクションにつながっていくと思います。

僕の場合、岡本さんをはじめとしたいろんな方に人や活動を紹介してもらって、一気にチャレンジできたりとか、自分も頑張ろうって思えたんです。だから、東山いきいき市民活動センターに遊びに来てもらえれば、なにかのきっかけを掴めるんじゃないかなと思っています!

Facebook: https : https://www.facebook.com/profile.php?id=100008600268777
株式会社Lean on Me HP:https://leanonme.co.jp/

インタビュー動画

インタビューの様子を撮影したので、ぜひご覧ください!

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