【時効を迎えたあの事件の真相】

今日は嫁ちゃんが、
我が輩の大好物である“トンカツ”を、
機嫌良く作ってくれている。

それだけを考えれば、
今日もまた平和で幸せな1日だ。

ただ、気になるのはそもそもなぜ、
今日は嫁ちゃんの機嫌がいいのだろうか。

それはそれで、嵐の前の静けさというか、
あとで何かをおねだりされる気がしてならないｗ

先に胃袋をしっかりと掴まれることで、
美味しいモノを食べさせてらったという、
既成事実が証拠として刻まれる。

それをネタに光り物や、
カワイイモノを要求されるかもしれないｗ

いやもしかすると、去年と同様にまた、
あの伝説の

”ホワイトデーの前借り”

という、前代未聞の攻撃を食らうかもしれない。

そう、振り返ればアレは確か、
去年のちょうど今頃の時期だったはず。

世間ではまだ、
バレンタインが盛り上がる前のこの時期。

世にも奇妙な、

”ホワイトデー前借り事件”

が起きたのだ。

できれば探偵ナイトスクープにリークして、
世の中に向けて大々的に、
この事件の真相を明らかにしたいところだが・・・。

おそらくそれは難しそうなので、
我が輩が強い気持ちを持って自ら語ることにしよう。

あれは去年の1月。

最寄り駅の商業施設をウロウロしていたとき、
突然、嫁ちゃんがある店に入った。

そこはセレクトショップのようで、
なかなかイイ雰囲気だ。

女性用の服やカバン、小物まで、
嫁ちゃん好みのモノで埋め尽くされていた。

一緒に居た我が輩はふいに、
なんとなくイヤな予感がした・・・。

心の声が叫んでいる・・・。

”ここにいては、なにかマズい気がする”
”早くここから、脱出しなければ・・・”

そう思っていた矢先、
嫁ちゃんがなにかを見つけた。

それは、あるかわいいバッグ。

その瞬間、

『嫁ちゃんeye(アイ)』

が発動した。

説明しよう。

『嫁ちゃんeye(アイ)』とは、
自分がなにか欲しいものを見つけたときに。

それを買ってくれる相手を瞬時に見極め、
その対象に向けて強制的に理屈抜きで、
理不尽なまでの”おねだり力”を発動するモノだ。

狙った獲物を確実にロックオンし、
これに射貫かれた者は、
決してそのおねだりから逃げることは出来ない。

かわいいバッグという獲物を見つけた直後、
我が輩に向けて間髪入れずにそれは放たれた。

この、ゴルゴ１３より精度も威力も段違いに高いと噂の、

『嫁ちゃんeye(アイ)』

が一度、発動されてしまったら。

北斗の拳のケンシロウも、真っ青だろう。

あの名台詞である、

『おまえはもう、死んでいる』

は有名だが。

それに勝るとも劣らない、

『おまえはもう、買っている』

という眼力と、目に見えないプレッシャーを、
ノーガードで体内に叩き込まれる。

それでも我が輩は、
なんとか抵抗しようと必死に試みた。

だが、そんなことはおかまいなしに、
容赦なくトドメの一撃が加えられる。

嫁）
「もうちょいしたら、バレンタインあるやん？」

P）
「おお、そうやな～。」

嫁）
「で、そのあとにホワイトデーあるやん？」

P）
「ホワイトデーあるなぁ～。」

嫁）
「その、ホワイトデーの分で先に買って！」
「それやったらいいやん！ホワイトデーの前借りで！」

P）
「えっ、前借り？なんじゃそれ？」

嫁）
「その代わり、手作りでチョコあげるわ～～」

P）
「お、おおぉ。そやね・・・。ええよ～・・・。」

これが俗に言う、

「ホワイトデー前借り事件」

の全貌である。

つまり、真相はこうだ。

先に『嫁ちゃんeye(アイ)』を撃ち込まれ、
それでもなんとか気力の限り抵抗していたが。

そこに追撃として、

”ホワイトデーの前借り”

という計画を持ちかけられ。

その代わり、
手作りチョコをこちらに流してもらうという、
麻薬取引のような条件を持ちかけられ。

その誘惑に負けてしまう形で、
悪魔的なトドメを刺されたのだ。

結果、我が輩は為す術もなく人生初の、

”ホワイトデーの前借り”

という前代未聞の事件に、
自らの手を染めるしかなかった。

最初から、分かっていた。

あの眼に捕まれば、
それに打ち勝つという選択肢など、
ありえナイのだ。

なぜなら、

『おまえはもう、買っている』

という不可避の未来を、
嫁ちゃんの圧倒的かつ衝撃的な強制力により、
全身で浴びてしまったわけだから。

“蛇に睨まれた蛙”

という言葉があるが、まさに、

『嫁に睨まれたポンタ（P）』

である。

ちなみに、この話には続きがある。

事件が無事に収束し、
どよめきも落ち着く様子を見せ始め。

ゲットした自慢のバッグが、
嫁ちゃんお気に入りコレクションに加わり。

お出かけファッショングッズの一つとして
レギュラー入りし、その光景に見慣れ始めた頃。

ようやくバレンタインデーを迎えたが、
チョコが渡される気配はなかった。

嫁ちゃんは、

『ちゃんと作って渡すからっ！！！』

と言い、我が輩もそれを信じて待ってみた。

だがしかし、ブツの制作に取りかかる様子は、
そこからもしばらく見られなかった。

そして、3月の中旬を迎えた頃、
突然そのときはやってきた。

ホワイトデー間近になって、
待ちに待ったブツが長い時を超えて、
ようやく我が輩の手元に届けられたのだ。

それは前借り事件が起こってから、
実に2ヶ月後の話である。

ホワイトデーを1月に前借りし、
バレンタインデーを3月にずらして、
そもそもの流れ自体を入れ替える。

自分の欲しいものを最速で手に入れ、
掛かる労力は最後へと回す。

まさに、E難度レベルの離れ技である。

世間の一般的ルールと時間の流れを、
根底からひっくり返して自分ルールに書き換える。

これが嫁ちゃんの持つパワーであり、
我が輩がその独創性と独自性を尊敬してやまない、
愛すべき嫁ちゃんという生き物である。

この事件は忘れられないネタであり、
この時期になると必ず、
我が家の話題に上がる一件なのだが。

嫁ちゃんいわくこの件については、

”もう時効を迎えた”

との通達が各所に出ているため。

事件について語るのは、
ここまでにしておこうと思う。

とりあえず今、言えることは、、

『男は黙ってトンカツ！！！』

ではまた、明日に・・・。
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