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怪談「可死化」

3月13日の金曜日に中目黒トライで上演していただいた自作の朗読劇のシナリオです。演技の上手い俳優さんに熱演していただきました。
先ほどnoteした「父と娘と鏡」よりお客様のウケは良かったような。
(https://www.bungei.org/blank-41)
恐怖×ドラマのあるシナリオを目指しました。
小説的に読んでいただければと思います。


【登場人物】
早希・・劇団主催者
美緒・・早希の友達。看護師
弘樹・・早希の劇団の小道具係

【シナリオ】
SE:外の雑踏音   
   明転していく。
   早希と美緒が立っている。
美緒「あの〜早希ちゃん・・」
早希「何?」
美緒「・・やっぱり、言うのやめとく」
早希「何?気になるよ。言って」
   決意したように、
美緒「私、見えるの」
早希「え!?」
美緒「見えるの」
早希「何が?(怖がりながら)」
美緒「いや・・・・・やっぱり、いいよ」
早希「何?そこまで言って・・」
美緒「だって、信じないだろうから」
早希「(呆れたように)・・信じるよ」
美緒「ホント?」
早希「私、信じやすいんだ。男にもすぐ騙さ
 れるし」    
美緒「わかった。じゃあ言うね」   
早希「うん」
美緒「・・・私、見えるの・・コロナが」
早希「えっ?!」
美緒「・・・私、新型コロナウイルスが見える」
早希「・・・・・そうなんだ。ふーん(愛想
 尽かした感じで)」
美緒「あ!COVID-19のことだよ」
早希「分かってる」
美緒「・・聞いて損しちゃったとか思ったで
 しょ」
早希「・・・・まあ、そうかな」
美緒「信じてくれてないじゃん」
早希「美緒ちゃん、そんなの私だから良いけ
 ど、人前とかSNSとかで言ったら炎上し
 ちゃうよ」
美緒「でも見えるんだもん」
早希「どんな風に見えるの?」
美緒「信じてくれた?」
早希「まだ、完全には信じてないけど」
美緒「こう・・ボワッと、黒っぽい粒子みた
 いなのが、その人の周りに散ってる感じに
 見えるの・・ボワッと」
早希「それがコロナだってなんで思うの?」
美緒「クルーズ船」
早希「えっ??」
美緒「ダイヤモンドプリンセス号」
早希「あ!」
美緒「私、看護師じゃん」
早希「うん」
美緒「横浜勤務じゃん」
早希「うん!・・どう見えたの?」
美緒「最初は船の中の明かりの影響かなとか
 思ったんだけど、ことごとく、ボワが見え
 る人が陽性で、見えない人が陰性だったの」
早希「ホントに?」
美緒「うん、早希だから言うんだからね」
   しばし沈黙。
美緒「で、何の様?こんな所に呼び出して」
早希「あぁ・・」
   今までとは違う冷徹な感じになる早希。
早希「私も見えるんだよね」
美緒「え?!・・何が?」
早希「いや・・・・・やっぱり、いいよ」
美緒「何?そこまで言って・・」
早希「だって、信じないだろうから」
美緒「(呆れたように)・・信じるよ。私も
 こんな話しをしてるんだからさ」
早希「わかった。じゃあ言うね」   
美緒「うん」
早希「私、殺した人の霊が見えるんだ」
美緒「えっ?!・・何言ってるの?」
早希「私、自分で殺した人の霊だけが、見え
 るんだ」
美緒「こ・・殺した?」
早希「私、前頭葉の前を交通事故で強く打っ
 てから、どうしても我慢が効かなくなっ
 て・・まあ病気だよね。ちょっとでも、イ
 ラッとしたら、殺っちゃうんだよね。簡単
 に」
美緒「・・」
早希「弘樹くんいたじゃない?」
   早希が凍りつく。
美緒「まさか」
早希「そう・・殺っちゃったんだよね」
美緒「え!だって、自殺じゃ」
早希「突き落としたんだよね」
美緒「でも遺書があったって」
早希「演劇の小道具に使うって言って作らせ
 たの」
   驚く美緒。
美緒「弘樹くんって・・」
早希「美緒がいる劇団の小道具係・・だった
 よね」
   恐ろしくなる早希。
美緒「何で、そんなこと私に話したの?」
早希「何でだと思う?」
   気味悪く笑う早希。
美緒「・・そんなことないよね」
早希「そんなこと・・あるんだよ」
美緒「うわ!やめて、やめて」
早希「逃げるなよ。刺せないだろ」
美緒「痛い!痛!」
早希「ナイフがかすっただけだろ」
美緒「はぁーはぁー」
早希「走って逃げても無駄だって。私、高校
 時代、陸上のインカレ3位だよ」
美緒「はぁーはぁー」
早希「走ったら血が垂れるよ。ほら追いつい
 た」
美緒「やめて」
早希「一番、好きな殺し方はさ・・両手両足
 縛ってから、ちょっとずつって刺していく
 やつなんだ」
美緒「うわーー」
   絶叫する美緒。
早希「うるさいね。口から切り刻もうか。こ
 れも好きなんだよね。血が吹き出すマグマ
 みたいに見えるからさ」
   息を切らせながら、
美緒「早希、あんたね」
早希「終わりだよ」
美緒「見えるよ」
早希「え?」
美緒「コロナが」
早希「え!」
   不安そうになる早希。
早希「嘘だね」
美緒「本当だよ。ボワッとどころか、クッキ
 リあんたの周りに」
早希「・・・えーんえーん。嫌だよ〜!」
   泣く早希。
   しかし、
早希「・・アハハハハ」
   突然笑い始める。
美緒「何笑っているの?」
早希「嘘泣きでした!」
美緒「・・・」
早希「演技です!アハハハハハ、コロナ大歓
 迎。死ねるもんなら死にたいよ」
美緒「何言ってるの?」
早希「あんた何にも知らないんだね」
美緒「何が?」
早希「美緒、あんた・・もう死んでるんだよ」
美緒「・・・え!」
早希「美緒を殺すのは、これでもう120回
 目なんだよ」
美緒「え!」
早希「霊なんだよ。あんたは。霊だからコロ
 ナも見えるんだよ」
美緒「嘘。最近までクルーズ船で働いてたん
 だから」
早希「役に立ってなかったでしょ?霊なんだ
 から。アハハハハ」
   図星の様子の美緒。
美緒「一番初めに・・生きてる私は・・どう
 やって殺したの?」
早希「うーん・・殺しすぎて忘れちゃった」
美緒「いや〜!」
   美緒が立ち去る。
早希「なんで成仏しないんだよ。何回殺して
 も、何回殺しても私の前に知らん顔で記憶
 なく現れやがって・・。地獄・・」
   苦しそうに涙ながらの早希。
早希「早く本当に死んでよ」
   弘樹が舞台に。
弘樹「早希さん、この小道具でどうっすかね?
 あ!そうそう実は面白い話があってですね」
早希「こいつも134回目・・死にたい(ボソッと)」
   暗転。
                 (終)

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