#24 LOOP BLAKE 第2章 腐れ縁 第11話「もう一度だけ会わせたい」

　アメリカ・シカゴシティの春はるの暖あたたかい日差ひざしが燦々さんさんと照てりつける中なか、花屋はなやの現場げんばをようやく離はなれ赤あかいジープの所ところまで戻もどって来きた。三人さんにん組ぐみの親子おやこの姿すがたがあった。

源太げんた「そんで？」

竜賀りゅうが・光男みつお「「ん？」」

源太げんた「二人ふたりは例れいの武器ぶき屋やで日本刀にほんとうを手てに入いれたって言いってたけど、どんな感かんじのモンなの？」

　そう言いわれ光男みつおは左手ひだりてに握にぎっていた刀袋かたなぶくろを持もち上あげ、紐ひもを解ほどいた。

　袋ふくろからは美うつくしい藍色あいいろの漆塗うるしぬりの柄つかが顔かおを覗のぞかせた。

源太げんた「え！？めっちゃ綺麗キレイじゃん！？」

竜賀りゅうが「まだ全部ぜんぶ見みせてないよ……」

　袋ふくろから刀かたなを完全かんぜんに取とり出だし、光男みつおは柄つかを握にぎり鞘さやから刀かたなを抜ぬいた。

　太陽たいように照てらされた藍色あいいろの刃やいばは青あおい光ひかりを放はなち、見みる者ものを魅了みりょうするほど美うつくしかった。源太げんたはあまりの美うつくしさに溜息ためいきを漏もらした。

光男みつお「溜息ためいきが漏もれる程ほどの美うつくしさとはこのことだな…」

竜賀りゅうが「文字もじ通どおり…」

　源太げんたの様子ようすを見みて二人ふたり共ともクククと笑わらいを堪こらえていた。

源太げんた「だって俺おれ日本刀にほんとうなんて竜賀りゅうがの持もってる奴ヤツしか知しらねぇもん！他ほかの日本刀にほんとうなんて見みたことなかったから！」

　源太げんたは人生じんせいで2回かい目めに見みた日本刀にほんとうに興奮こうふんしている様子ようすだった。

源太げんた「名前なまえは！？この刀かたなの名前なまえは何なんって言いうの！？」

光男みつお「ああ…『聖剣せいけん・藍風あいかぜ』って言いうらしい沢城さわしろ大吾郎ダイゴロウって有名ゆうめいな刀匠とうしょうが造つくった七本ななほんの傑作けっさくの刀かたなの一本いっぽんらしい……店長てんちょうからはこの刀かたなをそのお弟子でしさんの大嶋おおしま丈じょうさんって人ひとに渡わたして欲ほしいらしい」

源太げんた「おやっさん責任せきにん重大じゅうだいじゃん！」

光男みつお「そうだな…この刀かたなは大事だいじにしねぇと……」

竜賀りゅうが「もしもヘマしてこの刀かたなを折おったりなんかしようモンなら」

光男みつお「地獄じごく行いきだな…」

　源太げんたは二人ふたりの最後さいごの言葉ことばに背筋せすじが凍こおりつく様ような感覚かんかくになった。

源太げんた「そんな大事だいじな物ものを何なんでおやっさんに渡わたしたの？」

竜賀りゅうが「その店長てんちょうの勘かんらしい…」

光男みつお「ま！これでこの世界せかいでやり遂とげることも決きまったな！何なにが何なんでもこの藍風かたなを大嶋おおしまさんの元もとに届とどける！それが俺おれの役目やくめなんだ！」

源太げんた「絶対ぜったいやり遂とげようぜ！」

光男みつお「ああ！」

　そう言いいながら三人さんにん共とも車くるまに乗のり込こんだ。光男みつおは助手席じょしゅせきの最もっとも手てが届とどくところに刀かたなを置おいていた＿＿＿＿

＿＿＿＿ブルガント団だんのアジトにて＿＿＿＿

アレックス「また…醜態しゅうたいを晒さらしたってのか…！？」

スティーブン「ええ……ボブ・カッセルと、ロドリック・サーキース、後あとビル・ゴーントの三人さんにんがやられたそうです。それもゲンタ・サワタリって子供こどもに」

アレックス「！？…昨日きのうトンプソンが言いってたガキの名前なまえと一緒いっしょじゃねぇか……」

スティーブン「ええ……その後ご現場げんばに駆かけ付つけたマクシム連合れんごうのレスリー・コーナーに連行れんこうしてもらえました・・・・・・・・が」

アレックス「そっちに関かんしてはウイリー少将しょうしょうと話はなす！だが！…」

　アレックスは苛立いらだった感情かんじょうを抑おさえきれず声こえを荒あらげた。

アレックス「ソルマン！！」

ノルスタイン「は〜〜い！そろそ〜〜ろ呼よばれーーる気きがしま〜〜したよーー」

アレックス「お前まえにこの命令めいれいをしなければならないのはかなり不満ふまんだが…！！トンプソン兄弟ブラザーズ、そして今回こんかいのサーキース達たちの失態しったいの尻拭しりぬぐいとして例れいの親子おやこをここに連つれて来きてくれ…！！！」

ノルスタイン「まだ部下ぶかは〜〜沢山たくさんいるーーのではあ〜〜りませーーんか〜〜？」

アレックス「今朝けさ、シカゴ全体ぜんたいにかなりの数かず送おくり出だして暴あばれさせている……今いま自由じゆうに動うごけて適能者デュナミストを生捕いけどりにできるミッションを軽かるくこなせるとすればお前まえくらいだ」

ノルスタイン「た〜〜しかにーー昨日きのう今日きょうと同おな〜〜じ子供こどもに我わがそーーしきの適能者デュナミストがふた〜〜組くみもやらーーれているのはで〜〜き過すぎでーーすね〜〜」

アレックス「その理由りゆうも気きになるから調査ちょうさ込こみでやってくれるか？」

ノルスタイン「おま〜〜かせ下くださーーい♪」

　ノルスタインはそう言いい残のこすと身体からだが浮うき上あがり天井てんじょうに吸すい込こまれて行いく様ようにすり抜ぬけて消きえていった＿＿＿＿

　＿＿＿＿ホテル『ローグ』にて＿＿＿＿

　ホテルの正面しょうめん玄関げんかんのガラスを貼はり付つける作業さぎょうを業者ぎょうしゃがやっているのを見みている男おとこがいた。

エリック「悪わるいな！ありがとうね！」

業者ぎょうしゃ「いやいや！こんな時代じだい、こういう受注じゅちゅうが沢山たくさん増ふえたから我々われわれからしたら！こっち側がわからしたらありがたいとしか思おもってないよ」

エリック「やっぱり最近さいきんこういう仕事しごとめちゃくちゃ増ふえてるのか？」

業者ぎょうしゃ「ああ…硝子ガラスを作つくれる適能者デュナミストが以前いぜんは格安かくやすで商売しょうばいしていて、俺おれたち硝子ガラス業者ぎょうしゃは商売しょうばいあがったりだったんだけど……ブルガント団ヤツラが来きてから、都市まちに住すんでいた適能者デュナミストがどんどん減へっちまって俺達おれたち硝子ガラス職人しょくにんの無適能者アンチステージの方ほうに仕事しごとがガンガン回まわってくるようになっちまってなぁ…」

エリック「……そっか……」

業者ぎょうしゃ「まぁ！何なんとかこれは後あと30分ぷんで終おわらせるよ！今朝けさ何なんかアチコチでブルガント団だん関連かんれんの仕事しごとが一気いっきに増ふえちまってな」

エリック「一気いっきに？」

業者ぎょうしゃ「ああ！今朝けさだけでも都市まちの至いたる所ところで55件けんも来きたからな！マクシム連合れんごうの警備隊けいびたいも一気いっきに仕事しごとが来きてアチコチ飛とび回まわってるってさ」

エリック「何なんで今朝けさになってそんな増ふえたんだ？」

業者ぎょうしゃ「さぁねぇ…分わかんねぇ…」

　エリックは硝子ガラス貼ばりの作業さぎょうを任まかせてホテルのトイレに向むかった。トイレで用ようを足たし、トイレから出でようと扉とびらの取手とってに手てを掛かけようとした。

　その瞬間しゅんかん扉とびらの向むこう側がわから壁かべをすり抜ぬける様ようにオレンジ色いろの長髪ちょうはつの長身ちょうしんの男おとこが現あらわれた。

ノルスタイン「はーーい♬ど〜〜もエリック・ブラックさーーんん♩」

エリック「ソルマン・ノルスタイン卿きょう！！？」

　そう言いい終おわるとノルスタインはエリックの首クビをガシっと掴つかみ背後はいごの壁かべまで叩たたき付つけた。

　　ドンッ！

エリック「ガハッ！〜〜くるじい…！！」

ノルスタイン「Mr.ミスターブラック？ワターーシは貴方アナタに今いま〜〜から聞ききたいことがあーーるのですが〜〜お時間じかんよろしーーですかな〜〜？♪」

エリック「ぐ…！！一体いったい私わたしに何なんの用ようだ！？」

ノルスタイン「ン〜〜フフフ♪昨晩さくばんこちーーらに来こら〜〜れていた三人さんにんのおーーやこの話はなしで〜〜す♫」

エリック「！！……それがどうした…！！」

ノルスタイン「我々われわれの部下ぶかがアナ〜〜タのホテルの前まえでそのおーーやこにやられたんで〜〜あーーりま〜〜す♬」

エリック「……それで？…俺おれに何なにをしろと？」

ノルスタイン「そのおーーやこ三人さんにんを今いま〜〜すぐここに呼よーーんでいただけませ〜〜んか♪」

エリック「くっ……もし…その三人さんにんを呼よんだら？…その三人さんにんはどうなる…？」

ノルスタイン「ン〜〜〜フッフッフッフ♬」

　ノルスタインは不気味ぶきみに笑わらうと左手ひだりてから伽鍵礼符キーカードを取とり出だし、礼符カードがオレンジ色いろに輝かがやき出だした。

　そして、そのまま左手ひだりてを壁かべに向むけたまま…

　　ドンッ！！！

　一瞬いっしゅんの激はげしい音おとと共ともに壁かべに大おおきな穴あなを空あけた。

エリック「！！？」

ノルスタイン「このよ〜〜にそのおーーやこの身体からだにお〜〜きな穴あなが抉えぐーーれてしまうかもし〜〜れませんよ？？♬」

エリック「だったら……例たとえ知しってても言いわない…！！」

ノルスタイン「…！！」

　　ドン！

　ノルスタインはその言葉ことばを聞きいた途端とたん恐おそろしい表情ひょうじょうになり、エリックを再ふたたび壁かべに叩たたきつけた。

ノルスタイン「……たかがアンチステーーージの分際ぶんざいでこの〜〜私ワタクシに逆さかーーらうだな〜〜んて一体いったいどーーんな思考回路しこうかいろな〜〜んでしょーーか！！♫」

エリック「ガハッ！？」

ノルスタイン「こーーん回かいは奴ヤツらの居場所いばしょが分わかればゆる〜〜して上あげようと思おもっていーーましたが予定よていへ〜〜んこーーで〜〜す♪」

　ノルスタインはエリックの胸むなぐらを掴つかみ上あげ、そのままトイレの床ゆかに水みずに沈しずみ込こむ様ように二人ふたり共とも消きえていった。

　そのしばらく後あと、扉とびらの外そとでは。

業者ぎょうしゃ「おーーい！Mr.ミスターブラック！！今いま硝子ガラス貼ばりの作業さぎょう終おわったよ！どこにいるの！」

　業者ぎょうしゃの男おとこは気付きづいていなかった。もうそのホテルにはエリック・ブラックがソルマン・ノルスタインに攫さらわれてしまったことに＿＿＿

　＿＿＿＿そして、赤あかいジープに乗のってシカゴの都市まちから出でて行いこうとしていた藍川あいかわ光男みつおは子供こども達たち二人ふたりに問といかけた。

光男みつお「もうこの都市まちから出でて行いくけど、二人ふたり共とも思おもい残のこすことはないな」

竜賀りゅうが「うん！」

源太げんた「………」

　竜賀りゅうがははっきりと返事へんじをしたが、源太げんたは何なんだか暗くらい表情ひょうじょうのままであった。

光男みつお「源太げんた？どうした？どこか具合ぐあいが悪わるいのか？」

源太げんた「…おやっさん！やっぱり俺おれ！ホテル『ローグ』を放ほうっておけない！」

光男みつお「それは……あそこに戻もどってホテルを守まもりたいってことか？」

竜賀りゅうが「昨日きのうも言いっただろ…俺達おれたちがあそこにいたら…」

源太げんた「そうじゃなくて！あのホテルは昔むかしっからブラックのおじさんとマーカス・ジャッジさんの思おもい出での場所ばしょだから！」

光男みつお「マーカス・ジャッジ？」

源太げんた「俺達おれたちがこの都市まちに来きた時ときにすれ違ちがったあの男おとこの人ひと……あのホテルをエリックと一緒いっしょに育そだててきたんだ」

光男みつお「……」

源太げんた「せめてエリックのそばにマーカスはいるべきだと思おもうんだ」

竜賀りゅうが「そういうことなら俺おれからも頼たのむよ父とうさん」

光男みつお「それはあくまで二人ふたりの問題もんだいであって俺達おれたちは部外者ぶがいしゃだぞ…って言いっても聞きかねぇんだろ？」

　竜賀りゅうがと源太げんたは顔かおがパァっと明あかるくなり俄然がぜんやる気きになってきた。

竜賀りゅうが・源太げんた「「ありがとう！」」

光男みつお「そんじゃしっかり掴つかまっとけよ！」

　車くるまのハンドルを握にぎり直なおし、アクセルを踏ふみ込こみスピードを上あげて三人さんにんを乗のせたジープはシカゴの都市まちの西にしから抜ぬけるルートを変更へんこうして北きたに進路しんろを変かえた＿＿＿

　＿＿＿薄暗うすぐらい洞穴ほらあなの中なかで鎖くさりに繫つながれて、手足てあしが動うごかない状態じょうたいになったエリック・ブラックは今いま自分じぶんがどこにいるのか状況じょうきょうを必死ひっしに掴つかもうとしていた。洞穴ほらあなの中なかには蝋燭ロウソクの火ひの灯あかりが薄気味うすきみ悪わるく揺ゆれているだけだった。

エリック「ここは一体いったい……」

ノルスタイン「ここーーーはブルガ〜〜ント団だんのアジトのーー牢獄ろうごくである暗黒穴蔵シャドウホールで〜〜す♪」

エリック「シャドウホール…？」

ノルスタイン「イエーーース♩ブルガント団だんの裏切うらぎ〜〜り者ものや役立やくたた〜〜ずをここーーでゴ〜〜ウ問モンする為ための牢獄ろうごくでーーす♬」

　二人ふたりの声こえが響ひびき渡わたる洞穴ほらあなの広ひろさに耳みみを傾かたむけ、ここがどこなのか必死ひっしに探さぐろうとした。

エリック「こんな馬鹿バカみてぇに広ひろい牢獄ろうごくに招待しょうたいしてもらえるなんて随分ずいぶんなV.I.Pビップ待遇たいぐうじゃねぇか…」

ノルスタイン「こーーんな場所ばしょに閉と〜〜じ込こめーーているのにヨユ〜〜ですねーー♫」

エリック「………で？こんなとこでパーティーでもしようってか？」

ノルスタイン「ノーーンノーーーン♫貴方アナタとこ〜〜こでパーーティするのはワタ〜〜クシではなくこのーー人ひとた〜〜ちでーーす♪」

　ノルスタインが牢獄ろうごくの檻おりの外そと側がわを指差ゆびさすと、そこにはトンプソン兄弟きょうだいがいた。その二人ふたりの手てにはそれぞれ鞭むちが握にぎられていた。

エリック「なんだテメェらいたのか…」

ジェイコブ「さぁ…答こたえてもらおうかおっさん…」

グレイブ「あのクソ生意気なまいき餓鬼がき二人ふたりと偉えらそうな男おとこ…三人さんにんの行方ゆくえについてな」

　檻おりの中なかに入はいって来きた二人ふたりの目めは竜賀りゅうが達たちへの復讐ふくしゅうに燃もえ上あがっていた。

エリック「残念ざんねんだが…あのホテルの中なかにはあの三人さんにんはどこにもいねぇぞ」

グレイブ「そんなことは知しってんだよ」

ジェイコブ「さっきボブ・カッセルとロドリック・サーキース、ビル・ゴーントがゲンタ・サワタリって餓鬼がきにやられたって情報じょうほうが流ながれてきてたんだからな！」

エリック「……ハッ！…ハーハッハッハッハッハッハ！！こりゃいい！！傑作けっさくだ！！実じつに滑稽こっけいだな！！」

　突然とつぜん大声おおごえで笑わらい始はじめたエリックを見みてイラついたジェイコブはエリックの胸むなぐらを掴つかみかかった。

ジェイコブ「野郎ヤロウ…！！何なにが可笑おかしいんだ！！」

エリック「ハッハッハッハッハ！！可笑おかしいさ！！これが笑わらわずにいられずか？このシカゴの大都市だいとしを支配しはいしているあの・・ブルガント団だんが餓鬼がき一人ひとりも満足まんぞくに倒たおせないどころか！三人さんにん共とも良いいようにやられたんだぞ！？これが笑わらわずにいられるか！！？」

　この言葉ことばを聞きいたジェイコブは顔かおを血ちの様ように真まっ赤かにして、鞭むちを握にぎっている手てをプルプル小刻こきざみに震ふるわせていた。

　ノルスタインは少すこし眉まゆをひそめ、グレイブは怒いかりに顔かおを歪ゆがめていた。ジェイコブは完全かんぜんに逆上ぎゃくじょうしていた。

ジェイコブ「黙だまれ！！ジジイ！！黙だまらねぇとその汚きたない口くちを一生いっしょうきけなくしてやるぞ！！！」

エリック「ハッハッハッハッハ！！これは随分ずいぶん面白おもしろくない脅おどしだな！俺おれを殺ころせばアイツらがここに来きてくれるとでも本気ほんきでそう思おもっているのか？」

ジェイコブ「なぁにぃ…！！？」

グレイブ「貴様キサマと奴ヤツらはグルではない……と、そう言いいてぇのか？」

エリック「アイツらはただ日本にっぽんに帰かえるついでにこのシカゴの都市まちに寄よっただけのただの観光客かんこうきゃくさ…それ以上いじょうでもそれ以下いかでもない…」

ジェイコブ「だったら何故なぜあの餓鬼がき共どもは俺達おれたちと戦たたかったんだ！？」

エリック「それが分わかんねぇからテメェら適能者デュナミストはサイコパスだとか言いわれんだろうが…」

ジェイコブ「！！？何なにィ…！！」

エリック「テメェらがどんな気分きぶんだったかは知しらねぇがな……道端みちばたでいきなり爆発ばくはつなんか起おこしたら、その周まわりに迷惑めいわくがかかるってことも分わかってねぇから…あんな風ふうに喧嘩ケンカを売うられたんだろうが？」

グレイブ「そんじゃ悪わるいのは全部ぜんぶ俺達おれたちだってか？」

エリック「差別さべつを受うけてるなんて主張しゅちょうは、言いい出だしたモン勝がちじゃねぇんだよ……テメェら適能者デュナミスト側がわも完全かんぜんに非ひがあることを認みとめられねぇんじゃずっと主張しゅちょうを潰つぶされ続つづけんのは当あたり前まえだよな？」

ジェイコブ「さっきから聞きいてりゃ好すき勝手かって言いいやがって！！そんなに殺ころされてぇか！！？」

エリック「殺ころしたけりゃさっさと殺ころせよ…こんな老おいぼれの生命いのち一ひとつ奪うばって気きが済すむんならな…そんなことでお前まえらの心こころが満みたせるんだったらな！」

グレイブ「心こころを満みたす？一体いったい何なにが言いいたい？」

エリック「お前まえらブルガント団だんがやってることをずっと続つづけていても絶対ぜったいお前まえらが思おもい描えがいている様ような幸しあわせはやって来こねぇってことさ…」

グレイブ「俺達おれたちがやっていることが間違まちがっているとでも…？だが忘わすれたとは言いわせねぇ！！俺達おれたち適能者デュナミストを一番いちばん最初さいしょに迫害はくがいし始はじめたのは紛まぎれもなく無適能者オマエらだろ！！！お前まえ達たちがそうさせたんだ！！！真まっ先さきにな！！！」

エリック「……ああ、その通とおりだな」

グレイブ「ようやく無適能者キサマらの過あやまちを認みとめたか…」

エリック「俺おれは思おもい知しったよ……お前まえらが俺おれのホテルを襲おそった夜よる…あの子供こども達たちと話はなしたよ…こんな人生じんせい枯かれかけのジジイの心こころに寄より添そってくれた時ときの喜よろこびを……」

ジェイコブ「……何なにが言いいたい？」

エリック「どれだけ人ひとを傷付きずつける能力チカラを持もとうがそれが幸しあわせに繋つながることはないんだってな…本当ほんとうの幸しあわせってのは人ひとが互たがいに理解りかいし合あえた時ときに生うまれるんだってことを……俺達おれたち無適能者アンチステージに本当ほんとうに足たりなかった物もの…」

グレイブ「………」

エリック「それはお前まえ達たちの心こころに寄より添そおうとする優やさしさ・強つよさ・勇気ゆうきそのものだってことさ」

ノルスタイン「おお〜〜〜なーーんともかんど〜〜う的てきなおはなーーしですね〜〜♪」

　二人ふたりがエリックの話はなしに耳みみを傾かたむけていると突然とつぜんノルスタインが声こえを上あげてきて、三人さんにん共とも飛とび上あがるほど驚おどろいた。

ノルスタイン「そーーんな夢ゆめものが〜〜たりなお話はなーーしで我ワレわ〜〜れが動うごくとでもおーーもいで〜〜すか？♫」

エリック「……はっ…お前まえはどんなことを言いわれようが自分じぶんの目的もくてき達成たっせいの邪魔じゃまになる意見いけんには最初ハナから聞きく耳みみを持もたねぇってか？」

ノルスタイン「おお〜〜酷ひどい言いわれよーーうで〜〜すねーー♩」

エリック「どんな世界せかいにも黒幕フィクサーってのがいるもんだがお前まえはその典型てんけいだなソルマン・ノルスタイン？」

ノルスタイン「ン〜〜〜フッフッフッフッフ…♫…さぁトンプソン兄弟きょうだいこの男おとこの口車くちぐるまにの〜〜らずにじーーんもんをお願ねがいしま〜〜〜すねぇーー♪あの子こど〜〜も達たちが我々われわれのどーーほ〜〜を再ふたたび襲おそうかもしーーれませ〜〜ん♬必要ひつようなじょ〜〜ほ〜〜を早はやーーく集あつめなければ〜〜♪」

ジェイコブ「お、おお！！」

グレイブ「………」

　グレイブは鞭むちを構かまえ、エリックに向むかって鞭むちを振ふり下おろした。

　　　バチィィ！！！

＿＿＿＿シカゴの都市とし北部ほくぶ＿＿＿

竜賀りゅうが「＿＿＿ってかなぜまず情報じょうほう収集しゅうしゅうをせずに何なんの宛あてもなく人ひとを探さがそうとしてんだ俺おれら？」

源太げんた「まぁとにかく良いいじゃねぇか北きたを探さがせば良いいんだよ北きた！」

光男みつお「こういうの行いき当あたりばったりって言いうんだぞ源太げんた？」

　ジープでとにかく北きたに向むかう途中とちゅうで源太げんたがお気楽きらくに言いい放はなって、他ほかの二人ふたりはげんなりしていた。

源太げんた「まぁ北きたに向むかって進すすんでいく途中とちゅうですれ違ちがっていく人ひとに片かたっ端ぱしから聞きいていけば良いいんだよ！」

竜賀りゅうが「あのな…そんなやり方かたでやっていてマーカス・ジャッジさんに会あえる確率かくりつ何なん％パーセントなんだよ」

光男みつお「……いやもうここまで来きた以上いじょうは絨毯じゅうたん爆撃ばくげき作戦さくせんとまではいかないが手当てあたり次第しだい聞きいていった方ほうが良いいかもしれん」

源太げんた「さっすがおやっさん！話はなしが分わかるね〜！」

竜賀りゅうが「…しゃーない！手当てあたり次第しだい聞きいていくか…」

　三人さんにんは道みちを歩あるいている通行人つうこうにんを見みつけたらすぐに声こえをかけていこうとした。

　しかし、シカゴの都市まちと比くらべ遥はるかに歩あるいている人ひとの人数にんずうが少すくなかった。なので見みつけ次第しだいすぐ話はなしかけるのはできたのだが、圧倒的あっとうてきに母数ぼすうが少すくないという事態じたいに陥おちいってしまっていた。

光男みつお「そうですか…ありがとうございます。時間じかんを取とっていただいて！」

通行人つうこうにん「…オイ、アンタ…そんなに人ひとを探さがしているんだったらシカゴシティに行いってみたらどうだ？こんなとこをあたるよりあっちなら情報じょうほうが集あつまるぜ？」

光男みつお「シカゴの都市まちから出でて来きたんですよ、その人ひと……あの都市まちが危険きけんだからってことで…」

通行人つうこうにん「ああ…道理どうりでな……あの都市まちから逃にげて来きた奴ヤツを探さがしてるってことかい？」

光男みつお「え…ええ」

源太げんた「おじさん何なにか知しってるの？」

通行人つうこうにん「いや！アンタらの探さがしてる男おとこについてじゃなくてな……あのシカゴの都市まちについての噂うわさなんだがな…」

　その通行人つうこうにんの男おとこが周まわりをキョロキョロと見回みまわして辺あたりに他人ひとがいないかを確認かくにんしてから光男みつおに向むかって囁ささやく様ように話はなしかけた。

通行人つうこうにん「あの都市としには悪わるい噂うわさがあってな……どうやらマクシム連合れんごうとブルガント団だんが裏うらで繋つながっているんじゃないかっていう噂うわさが…」

光男みつお「！！…その話はなし詳くわしく聞きかせてくれませんか！？」

通行人つうこうにん「しーーっ！！！」

　光男みつお、源太げんたそして竜賀りゅうがはその話はなしについて顔かおを真まっ青さおにして聞きいた。しかしその男おとこは口くちの前まえに人差ひとさし指ゆびを立たてて静しずかにするように訴うったえかけた。

通行人つうこうにん「声こえが大おおきい…！！！」

光男みつお「…すみません…！！」

通行人つうこうにん「はぁ……俺おれが聞きいた話はなしだが、この話はなしを聞きいた以上いじょうはもうシカゴには関かかわるな…もうあそこは無適能者アンチステージの住すめる安全あんぜんな都市まちなんかじゃなくなるんだからな」

竜賀りゅうが「それってもうシカゴには戻もどってくるなってことですか？」

通行人つうこうにん「ああ……もうあの都市まちは伽霊能力ギアルスキルと金かねの力ちからに負まけた欲望よくぼう渦巻うずまく絶望郷ディストピアになっちまったんだよ」

　その話はなしをする時ときの男おとこの顔かおがどことなくマーカス・ジャッジに｜似にていると源太げんたは思おもった。この人ひとも今いまの世界せかいに絶望ぜつぼうしてしまっているのだろうか＿＿＿＿

　＿＿＿とある花屋はなやの店内てんないにて、

メリッサ「ねぇお母かあさん？」

母親ははおや「どうしたのメリッサ？」

メリッサ「あの人ひと…私わたし達たちを助たすけてくれたあのお兄にいちゃんこの都市まちから出でて行いっちゃったのかな？」

母親ははおや「さぁ…どうなのかしらね？でも生いきていれば必かならず会あえるわよ…」

メリッサ「…そうだね！」

？？？「すみません！」

　母娘おやこで話はなしているところへ白色しろいろの制服せいふくを着きている男おとこが店みせの外そとで立たっていた。

母親ははおや「あら！マクシム連合れんごうの人ひとが…！今日きょうの徴税ちょうぜいの件けんについてだわ…」

連合員れんごういん「こんにちは！」

母親ははおや「こんにちは！今日きょうの徴税ちょうぜい分ぶんですね？」

連合員れんごういん「ええ！いつもありがとうございます！」

　そして母親ははおやはお金かねの入はいった封筒ふうとうをマクシム連合れんごうの連合員れんごういんに手渡てわたした。

連合員れんごういん「……はい確認かくにん完了かんりょうしました」

　そして連合員れんごういんは封筒ふうとうを光ひかりの輪リングの中なかに入いれ、自身じしんもその場ばから瞬間しゅんかん移動いどうした＿＿＿＿

　＿＿＿＿北きたに向むかうと徐々じょじょに人ひとが増ふえてきて話はなしを聞きける機会チャンスも増ふえてきた。

光男みつお「………そうですか…お時間じかんとっていただきありがとうございました」

　光男みつおは道みちですれ違ちがった人ひとにマーカス・ジャッジの情報じょうほうを聞きいていったがまだヒットが出でていない。源太げんたも人ひとに聞きいてきたところだった。

源太げんた「おやっさん！全然ぜんぜんダメ！！」

光男みつお「ここまで来くるとこの場所ばしょには情報じょうほうがないのかもしれないな……場所ばしょをもっと変かえた方ほうがいいかもしれん」

源太げんた「うん…」

　二人ふたりはさっき道端みちばたであった男おとこの話はなしを聞きいて焦燥しょうそう感かんに駆かられていた。急いそいでマーカスに会あわなければ、もしかしたら……。そんな想像そうぞうが冷静れいせいさを失うしなわせてしまう。

光男みつお「…ところで竜賀りゅうがは？」

源太げんた「ああ、それなら確たしかあそこらへんで」

竜賀りゅうが「父とうさーーん！！！源太げんたーー！！！見みつかったぞーー！！！マーカス・ジャッジの居場所いばしょ！！」

光男みつお・源太げんた「「！！？」」

　思おもわぬところで竜賀りゅうがが当あたりを引ひいたのに驚おどろいて目めを丸まるくした。急いそいで駆かけ寄よって竜賀りゅうがが話はなしかけていた男女だんじょカップルに話はなしを聞ききに行いった。

光男みつお「マジか竜賀りゅうが！？」

竜賀りゅうが「うん！この二人ふたりが知しってるって…」

光男みつお「マーカス・ジャッジって人ひとどこにいるか知しっているんですか？」

女性じょせい「ええ…今朝けさ泊とまってたホテルの近ちかくに昔むかしお金持かねもちのお客きゃく向むけの宿やどがあると、ホテルマンの人ひとに紹介しょうかいしてもらったのよ」

男性だんせい「そこを昔むかし運営うんえいしていたのがエリック・ブラック、マーカス・ジャッジって言いわれていたらしい」

光男みつお「そのホテルの名前なまえって…」

男性だんせい「確たしか…レイク・ジェニーバのホテル『アーチ』って名前なまえだったはず…今いまは全まったく違ちがう名前なまえで、経営権けいえいけんが別べつの人ひとが運営うんえいしてるんだがな」

光男みつお・竜賀りゅうが・源太げんた「「「ありがとうございました！」」」

　そのホテルの名前なまえを聞きいた三人さんにんは条件じょうけん反射はんしゃ的てきに車くるまに駆かけていった。

To Be Continued