見出し画像

薬学部卒業後の多様なキャリア

薬学部の卒業生は、「調剤薬局や病院などの医療機関」で薬剤師として働くイメージが強いですが、実際には幅広い分野で活躍しています。6年間の学びを生かせる就職先は医療機関以外にも多数存在するのです。

薬剤師の国家資格を持つことで、様々な選択肢が広がるのが薬学部卒業生のメリットです。ここでは、医療機関以外での代表的なキャリアをご紹介します。

<製薬企業>

・医薬情報担当者(MR)
MRは、製薬企業に所属し、医師や薬剤師を対象に、自社製品の適正使用を促進するための情報提供活動を行います。新薬の有効性や安全性、適応症などの情報を正確に伝え、処方促進につなげることが主な役割です。最新の臨床データを駆使して説明するほか、副作用情報の収集や競合他社製品の動向分析なども担当します。営業活動とは異なり、医療従事者との信頼関係構築が何より重視されます。

・研究開発職
創薬のための基礎研究や、前臨床・臨床開発に従事します。薬理学的知見に基づいた新規化合物の創製、動物実験による安全性評価、さらには治験における有効性と安全性の検証など、製品化に向けた一連のプロセスに関与します。生物学・化学の専門知識に加え、統計解析力、プロジェクトマネジメント能力なども求められる高度な職種です。

・臨床開発モニター(CRA)
治験における被験者の権利と安全性を守り、データの信頼性と品質を監視することがCRAの役割です。治験実施計画の確認、実施医療機関への立入検査、モニタリングなどを通じて、プロトコル遵守状況を確認します。GCP(医薬品臨床試験実施基準)をよく理解し、コンプライアンスを徹底することが重要です。臨床開発に関する豊富な経験が求められます。

<公的機関>

・国家公務員薬剤師
薬価基準の改定や、製薬企業への製造・品質管理監視指導のほか、薬剤師国家試験の見直し、資格取得後の研修制度検討なども担当します。医療用医薬品に関わる重要な業務を、中央官庁で行います。幅広い視野と高い専門性、公平性が求められます。

・地方公務員薬剤師
保健所勤務の場合は、地域の保健・衛生管理が中心です。施設の新規開設許可審査、立入検査、食品の規格基準検査、健康危機管理、医療供給体制整備などを行います。公立病院勤務であれば、外来調剤、病棟業務、医薬品管理など、臨床現場で薬剤師としての役割を担います。衛生研究所勤務の場合は、感染症や食中毒予防のための検査・研究が主な業務となります。

・麻薬取締官
麻薬やあへん、覚醒剤など、違法な薬物に関する情報収集と流通経路の捜査に当たります。使用者の逮捕、押収物の鑑定、更生支援業務なども行います。薬物の専門知識と法執行力が必須で、危険を伴う現場活動も少なくありません。

<その他>

・ドラッグストア勤務
ドラッグストアでは、一般用医薬品(OTC薬)の販売に加え、健康食品や化粧品などの商品陳列、販売促進、在庫管理なども担当します。薬剤師は、薬に関する専門知識を生かし、お客様への適切な商品選択のアドバイスや健康相談にも対応します。セルフメディケーションの重要性が高まる中で、その役割は拡大しています。

・化粧品・食品メーカー
化粧品や健康食品などの製品開発に携わり、原料の安全性評価や品質管理、製造工程の監視などを行います。高度な専門知識が求められるだけでなく、消費者の立場に立った商品企画力やマーケティング力も必要とされます。最近では、メーカー側に従事する薬剤師が増えています。

・コピーライター
製薬会社や医療機関向けに、医薬品や医療機器の広告・宣伝用の文章を制作します。新薬の製品概要や臨床データを的確にわかりやすく表現する能力が欠かせません。また、医療従事者向けの説明書やパンフレットの作成なども担当します。高い文章力とともに、薬学の専門知識も重視されます。

・開発業務受託機関(CRO)
製薬企業から治験業務を受託するCROでは、プロトコル策定から実施・モニタリング・データ解析までの一連の業務を請け負います。CRAとしての経験を持つ薬剤師が多数活躍しています。医薬品開発の各段階に精通しており、GCP基準の遵守や業務の効率化に貢献しています。

・学校薬剤師
学校内の薬品管理や、児童生徒の健康相談、学校環境衛生の維持管理などを行います。緊急時の対応や、救急薬品の適切な保管と使用法の指導なども重要な役割です。児童生徒との信頼関係を構築し、健全な成長を見守ることが求められます。

・大学講師
大学の薬学部や薬科大学で、将来の薬剤師を育成するための教育に従事します。講義のほか、研究室での研究活動指導や学生の臨床実習の監督なども務めます。自身の専門分野での研究実績とともに、教育能力と人格が重視されます。基礎と臨床の両面を見据えた指導力が必要とされます。


以上のように、薬剤師の国家資格は、医療分野にとどまらず、様々な業種で活かすことができます。新しい分野で活躍する薬剤師も増えており、多様なキャリアを選択できるのが薬学部の魅力なのです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?