見出し画像

変化に強い人材になるためのリスキリング:個人編ー後藤宗明氏

 Aoba-BBTの番組後藤宗明氏による「リスキリングのステップ(個人編)」というテーマです。今回は、「リスキリングのステップ 個人編」と題し、従業員がどのようにリスキリングを進めていけば良いかについて、具体例や詳細な情報を交えながら解説されています。

 後藤氏は、リスキリングに関する以下の書籍を出版していますが、こちらも非常に参考になります。


 リスキリングは、単に新しいスキルを身につけるだけでなく、変化の激しい時代を生き抜き、キャリアアップを実現するための重要な手段です。しかし、具体的にどのように進めれば良いのか、迷っている方も多いのではないでしょうか。4つのステップに分けて、リスキリングを成功させるための具体的な方法を解説しています。各ステップにおいて、具体的な行動指針や考え方、そして、それぞれの年代における注意点などを詳しく理解することで、リスキリングをより効果的に進めることができるようになるでしょう。

ステップ1:正しいマインドセットを持つ

 リスキリングを成功させるためには、まず「正しいマインドセット」を持つことが重要です。従来の日本の職場では、「失敗は許されない」「指示されたことを正確にこなす」といった価値観が根強く、新しいことに挑戦することや、変化を受け入れることに抵抗を感じる人も少なくありません。しかし、リスキリングにおいては、そのような固定観念を捨て、「成長マインドセット」を持つことが大切です。

 成長マインドセットとは、スタンフォード大学のキャロル・ドウェック教授が提唱した考え方で、「自分の能力は努力次第で伸ばせる」という信念を持つことを指します。成長マインドセットを持つ人は、失敗を恐れず、挑戦し続けることができます。なぜなら、失敗は成長の過程であり、そこから学ぶことでさらに成長できると信じているからです。

 例えば、新しいプログラミング言語を学ぶ際、成長マインドセットを持つ人は、「最初は誰でも初心者だ」「失敗しても諦めずに挑戦し続ければ、必ず習得できる」と考えます。一方、固定マインドセットを持つ人は、「自分はプログラミングに向いていない」「失敗したら恥ずかしい」と考え、挑戦すること自体を諦めてしまうかもしれません。

 成長マインドセットを持つためには、以下の7つのリスキリングマインドセットを意識することが重要です。

  1. とにかくまずやってみる
    完璧主義を捨て、行動することを優先する。

  2. コンフォートゾーンから抜け出す
    安心・安全な場所から一歩踏み出し、挑戦する。

  3. 6割理解のままで突き進む
    完璧に理解していなくても、行動しながら学ぶ。

  4. 何度でも同じプロセスを繰り返す
    失敗しても諦めず、繰り返し挑戦する。

  5. いつでも軌道修正を
    状況に応じて柔軟に対応する。

  6. すぐに成果が出なくても焦らない
    長期的な視点で、継続的に努力する。

  7. 発展途上の自分に自信を持つ
    今の自分に満足せず、常に成長を目指す。

 これらのマインドセットを意識することで、リスキリングに対するモチベーションを維持し、困難な状況にも立ち向かうことができるようになるでしょう。

ステップ2:学習に取り組む

 正しいマインドセットが持てたら、次は実際に学習に取り組んでいきましょう。学習というと、学生時代の「受験勉強」をイメージし、苦手意識を持つ人もいるかもしれません。しかし、リスキリングにおける学習は、試験に合格することが目的ではなく、仕事で使える実践的なスキルを身につけることが目的です。

 そのためには、まず自分の興味・関心のある分野、あるいは、将来性のある分野を見つけ、具体的な目標を設定することが大切です。例えば、「AIを活用したマーケティングスキルを習得し、3ヶ月後に新しいプロジェクトを提案する」「データ分析の専門家になり、1年後にチームをリードする」といった具体的な目標を設定することで、学習のモチベーションを維持しやすくなります。

 目標が決まれば、具体的な学習計画を立て、自分に合った学習方法を選びましょう。オンライン講座、書籍、セミナー、ワークショップ、メンター制度など、様々な学習方法がありますが、重要なのは、継続して学習できる環境を作ることです。忙しい毎日の中で時間を捻出するのは大変ですが、通勤時間や休憩時間を活用したり、早朝や夜間など、集中できる時間帯に学習時間を設けたりするなど、工夫してみることです。

 また、学習を進める上で、分からないことや疑問に思ったことは、そのままにせず、積極的に質問したり、調べたりする習慣をつけましょう。一人で悩むよりも、誰かに相談したり、一緒に学ぶ仲間を見つけたりすることで、モチベーションを維持しやすくなります。例えば、オンラインコミュニティに参加したり、勉強会に参加したりすることで、同じ目標を持つ仲間と交流し、刺激を受けることができます。

ステップ3:スキルを実践する

 学んだスキルは、実際に使ってみなければ定着しません。インプットした知識をアウトプットする機会を意識的に作りましょう。例えば、社内勉強会で発表したり、ブログやSNSで発信したり、副業やボランティア活動で実践したりするのも良いでしょう。アウトプットすることで、自分の理解度を確認できるだけでなく、新たな気づきや課題を発見することができます。

 アウトプットの方法は様々ですが、重要なのは、自分が楽しみながら継続できる方法を選ぶことです。例えば、プレゼンテーションが得意な人は、社内勉強会で発表する機会を積極的に設けると良いでしょう。文章を書くのが好きな人は、ブログやSNSで学んだことを発信することで、多くの人に情報を共有することができます。また、実践的なスキルを身につけるためには、副業やボランティア活動など、実際にスキルを活用できる場に参加することも効果的です。

ステップ4:新しいチャンスをつかむ

 リスキリングによって身につけたスキルは、新しいキャリアや仕事のチャンスを広げる可能性を秘めています。まずは、自分のスキルを棚卸しし、強みと弱みを客観的に把握、そして、将来性のあるスキルをさらに伸ばし、アピールできるような職務経歴書を作成することです。職務経歴書には、これまでの職務経験だけでなく、リスキリングを通じて得られたスキルや資格、成果なども具体的に記載することで、企業に自分の価値をアピールすることができます。

 また、社内だけでなく、社外の人脈も積極的に広げることが大切です。転職エージェントに登録したり、業界のイベントに参加したり、オンラインコミュニティに所属したりすることで、新しい情報や人との出会いが得られます。人脈を広げることで、自分に合ったキャリアパスを見つけたり、転職のチャンスを掴んだりできる可能性が高まります。

 さらに、リスキリングによって得られたスキルや経験を、積極的にアピールすることも重要です。面接やプレゼンテーションの場で、自分の熱意や将来性、そして、リスキリングを通じて得られた成長を伝えることで、採用担当者や上司に良い印象を与えることができます。具体的なエピソードや実績を交えながら、自分のスキルや経験をアピールすることで、より説得力が増します。

年代別リスキリングの注意点

 リスキリングは、どの年代でも始めることができますが、それぞれの年代によって注意点があります。

  • 20代: 自分の可能性を広げるために、様々な経験を積むことが重要です。

  • 30代: 専門性を高め、キャリアの選択肢を広げるために、リスキリングを積極的に行うべきです。

  • 40代: マネジメントスキルを習得したり、新たな分野に挑戦したりするチャンスです。

  • 50代: これまで培ってきた経験やスキルを活かしながら、新しい技術や知識を習得することで、キャリアの幅を広げることができます。

まとめ

 リスキリングは、決して簡単な道のりではありません。しかし、正しいマインドセットを持ち、計画的に学習を進め、実践の機会を積極的に作っていくことで、必ず新しいキャリアを切り開くことができます。今回の内容を参考に、ぜひリスキリングに挑戦し、自分自身の未来を切り開いていきましょう。

 リスキリングは、個人にとっても、企業にとっても、大きなメリットをもたらします。個人は、新しいスキルを身につけることで、キャリアアップや転職のチャンスを広げることができます。一方、企業は、従業員のスキルアップによって、生産性の向上やイノベーションの創出につなげることができます。

 リスキリングは、これからの時代を生き抜くために不可欠なスキルです。ぜひ、今回の内容を参考に、リスキリングに挑戦し、自分自身の未来を切り開いていきましょう。

人事の視点から考えること

 今度は上記を人事の視点から深堀りし、企業がリスキリングを成功させるための具体的な戦略と、その根底にある考え方について解説します。

1. 組織文化の変革:リスキリングを促進する土壌作り

 リスキリングは、単に新しいスキルを学ぶだけでなく、社員一人ひとりが主体的に成長し、企業全体の変革を牽引していくための取り組みです。そのためには、従来の「指示待ち」や「失敗を恐れる」といった組織文化から脱却し、「学習し続けること」「挑戦すること」「互いに助け合うこと」を奨励する文化を醸成することが不可欠です。

 経営層と連携し、リスキリングの重要性を全社的に浸透させることから始めましょう。例えば、以下の内容です。

  • トップメッセージ
    CEOや役員が、リスキリングの重要性や企業のビジョンを明確に示すことで、社員の意識改革を促します。

  • 社内報やイントラネット
    リスキリングの成功事例や、新しいスキルを習得した社員のインタビュー記事などを掲載し、社員のモチベーションを高めます。

  • 表彰制度
    リスキリングに積極的に取り組んだ社員を表彰することで、学習意欲を促進します。

また、社員が安心して学習に取り組める環境を整備することも重要です。

  • 学習時間
    就業時間中に学習時間を設けたり、学習休暇制度を導入したりすることで、社員が時間を確保しやすくします。

  • 学習支援
    オンライン学習プラットフォームの導入や、社内メンター制度の構築など、社員が効率的に学習できる環境を整えます。

  • フィードバックの機会
    定期的な面談や1on1ミーティングなどを通じて、社員の学習状況を把握し、適切なフィードバックを行います。

2. 個別最適化されたリスキリングプログラムの設計:社員一人ひとりの成長を支援

社員一人ひとりのスキルレベル、キャリア目標、学習スタイルは異なります。そのため、画一的なリスキリングプログラムではなく、個々のニーズに合わせたプログラムを設計することが重要です。例えば、以下の内容です。

  • 若手社員
    基礎的なビジネススキル(ロジカルシンキング、コミュニケーションスキルなど)や、最新のデジタルスキル(プログラミング、データ分析など)の習得を支援します。

  • 中堅社員
    専門性の向上に加え、マネジメントスキルやリーダーシップスキルの習得を支援します。

  • ベテラン社員
    これまでの経験や知識を活かしながら、新しい技術やトレンドを学ぶ機会を提供します。

また、社員が主体的に学習を進められるよう、以下のツールや制度を導入することも有効です。

  • スキルアセスメント
    社員の現在のスキルレベルを客観的に評価し、個々に必要なスキルを明確にします。

  • パーソナライズされた学習プラン
    アセスメント結果に基づき、個々の社員に最適な学習プランを作成します。

  • 自己申告制度
    社員が自ら学びたいテーマやスキルを提案できる制度を設けることで、主体的な学習を促します。

3. 学習成果の可視化と評価:モチベーション向上と継続的な学習を促進

 リスキリングの成果を可視化し、適切に評価することは、社員のモチベーション向上と継続的な学習を促進する上で非常に重要です。例えば、

  • スキルバッジ制度
    特定のスキルを習得した社員に、デジタルバッジを発行することで、スキル習得を可視化し、達成感を高めます。

  • ポートフォリオ作成
    学習成果をまとめたポートフォリオを作成することで、自身の成長を振り返り、今後のキャリアプランを考えるきっかけにします。

  • 社内発表会
    リスキリングを通じて得られた知識やスキルを、社内で発表する機会を設けることで、社員同士が学び合い、刺激し合う環境を作ります。

 また、人事評価においても、リスキリングの成果を適切に評価する必要があります。例えば、目標設定の際にリスキリング目標を組み込んだり、評価項目にリスキリングの成果を反映させたりすることで、社員の学習意欲を高めることができます。

4. キャリアパスの提示:リスキリング後のキャリアビジョンを描く

 リスキリングは、単にスキルを身につけるだけでなく、キャリアアップやキャリアチェンジを実現するための手段でもあります。人事は、社員がリスキリング後のキャリアビジョンを描き、目標に向かって努力できる環境を整える必要があります。

例えば、以下の内容です。

  • 社内異動制度
    リスキリングによって習得したスキルを活かせる部署への異動を積極的に推進します。

  • 新規事業への参画
    新しいスキルを持つ社員を、新規事業の立ち上げメンバーに抜擢することで、挑戦の機会を提供します。

  • キャリア相談窓口
    キャリアコンサルタントによる相談窓口を設置し、社員のキャリアプランニングをサポートします。

また、社外との連携も視野に入れましょう。例えば、以下の内容です。

  • 他社との人事交流
    他社の社員と交流する機会を設けることで、視野を広げ、新たなキャリアの可能性を探ります。

  • インターンシップ
    他社でのインターンシップを通じて、実際に異なる職種や業界を体験する機会を提供します。

  • 転職支援
    社内でキャリアアップが難しい場合、転職支援サービスを提供することで、社員のキャリア形成をサポートします。

まとめ

 リスキリングは、個人と企業の双方にとってwin-winの関係を築くための重要な取り組みです。人事は、社員の主体的な学習を支援し、成長を促進する環境を整えることで、企業全体の競争力強化に貢献することができます。今回の内容を踏まえ、自社の状況に合わせたリスキリング戦略を策定し、実行に移すことで、社員の能力開発と企業の成長を両立させることができるでしょう。


リスキリングの4つのステップを写真風にリアルに表現したものです。各ステップは実際のシナリオや環境に基づいており、それぞれが明確にラベル付けされています。このプロフェッショナルでモチベーショナルなデザインは、リスキリングを成功させるための実践的なガイドとなるでしょう。


 こちらも是非ご覧下さい(企業におけるリスキリング)。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?