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L.E.T.における種々の「メッセージ」を使い分けてコミュニケーションを効果的にする

 L.E.T. (リーダー・エフェクティブ・トレーニング) では、リーダーが効果的なコミュニケーションを行うために、さまざまな「メッセージ」を適切に選択し、使用することが重要とされています。
 ここでは、各メッセージを横串で捉え、使用目的と、それが適切である具体的な状況について考察します。

 行動の窓モデルから見た場合、主として以下の黄色の部分を指します。この使い分けはL.E.T.においても肝となります。



1. I-Mメッセージ(アイメッセージ)

使用目的
 I-Mメッセージ(アイメッセージ)は、自分の感情やニーズを相手に伝えるために用いられます。このメッセージ形式は、相手の行動が自分に与える具体的な影響や、その結果として自分が感じる感情を明確にするために非常に有効です。アイメッセージを使用することで、相手に自分の立場や感情を理解してもらい、共感や協力を引き出すことが期待されます。これにより、より建設的でポジティブな対話を促進することができます。

適切な状況

  • 自分の感情を相手に伝える時
     例えば、相手の行動によって自分がどのような影響を受け、その結果どのような感情を持っているかを伝える際に適しています。これにより、相手に自分の視点を理解してもらうことができ、相手との間に共感を築くことができます。例えば、「あなたが会議に遅れると、私は全体の進行が遅れてしまい、イライラしてしまいます」といった具合です。

  • 行動の変更を求める時
     相手の行動を変えて欲しい場合、その理由を具体的に伝える必要があります。アイメッセージを使用することで、非難や批判ではなく、自分のニーズや感情を中心にしたコミュニケーションが可能になります。これにより、相手が自分の行動を見直し、改善する動機を持つ可能性が高まります。例えば、「あなたが報告書を期日までに提出してくれると、私の仕事がスムーズに進み、ストレスが減ります」といった具合です。

2. A/L(アクティブ・リスニング)

使用目的
 アクティブ・リスニング(Active Listening、A/L)は、相手が問題を抱えている場合に、その問題を深く理解し、相手が自分の考えや感情を自由に表現できるようにサポートするために使用されます。A/Lを通じて、相手の言葉や感情をそのまま受け入れ、共感を示すことで、相手が安心して話を続けられるようになります。これにより、相手が自分の内面を探求し、自分で問題を解決する力を引き出すことができます。

適切な状況

  • 相手が問題を抱えている時
     A/Lは、相手が何か問題を抱えている場合に、その問題を解決する手助けをするために非常に有効です。相手の話を丁寧に聞き、その内容と感情をフィードバックすることで、相手が自分の問題をより明確に理解し、解決策を見つける手助けをします。例えば、相手が仕事のストレスについて話している時に、「あなたが仕事のプレッシャーについて話してくれてうれしいです。あなたが感じていることは理解できます」とフィードバックすることで、相手が安心して話を続けられます。

  • 相手の気持ちを深く理解したい時
     A/Lは、相手の行動を変えるのではなく、相手の気持ちや考えを深く理解することを目的としています。このアプローチにより、相手が自分の内面を探求し、自分で問題を解決する力を引き出すことができます。例えば、相手がプロジェクトの進捗について不安を感じている場合、「あなたがプロジェクトについてどのように感じているかを教えてくれてありがとう。その気持ちは理解できます」と言うことで、相手が安心してさらに自分の考えを共有できるようになります。

3. Y-Mメッセージ(ユーメッセージ)

使用目的
 Y-Mメッセージ(ユーメッセージ)は、相手の行動や態度についての指示や評価を伝えるために使用されます。しかし、L.E.T.ではこのメッセージの使用は推奨されていません。なぜなら、Y-Mメッセージはしばしば相手を非難するような表現になりやすく、効果的でない場合が多いためです。相手に対して指示や要求をする時に、相手が防御的になったり、抵抗を感じたりすることが多く、コミュニケーションが円滑に進まなくなる可能性があります。

基本的には避けるべき状況
 L.E.T.の理論では、Y-Mメッセージは避けるべきとされています。これは、相手を非難するリスクが高く、効果的なコミュニケーションを阻害する可能性があるためです。相手を指示や批判するのではなく、I-Mメッセージを使って自分の感情やニーズを伝える方が効果的です。例えば、「あなたはいつも遅刻してばかりで困ります」というよりも、「あなたが遅刻すると、私のスケジュールが乱れて困ります」と伝える方が良いです。

4. メソッドⅢ(No-Lose対立解決法)

使用目的
 メソッドⅢ(No-Lose対立解決法)は、対立が発生した時にお互いのニーズを満たす解決策を一緒に見つけるための方法です。これにより、双方が納得できる解決策を見つけることを目指します。この方法は、対立を建設的に解決し、関係を強化することを目的としています。メソッドⅢを使用することで、対立が解決されるだけでなく、対話を通じてお互いの理解が深まり、信頼関係が強化されます。

適切な状況

  • 対立が発生した時
     メソッドⅢは、対立が発生した時に使用することで、お互いのニーズを理解し合い、満たす解決策を一緒に見つけることができます。この方法を使うことで、双方が納得できる解決策を見つけることが可能です。例えば、プロジェクトの進行方法について意見の相違がある場合、メソッドⅢを使ってお互いのニーズを理解し合い、双方が満足できる解決策を見つけることができます。

  • 協力が必要な時
     対立が生じており、双方が納得できる解決策を見つけるための協力が必要な場合にも、メソッドⅢは非常に有効です。この方法を使うことで、双方が協力して解決策を見つけることができます。例えば、部門間のリソース配分について対立がある場合、メソッドⅢを使って各部門のニーズを理解し合い、協力して最適な解決策を見つけることができます。

5. 宣言的I-M、予防的I-Mおよび感謝のI-M

使用目的
 
宣言的I-M、予防的I-Mおよび感謝のI-Mは、自分の考えや希望、仕事に関する抱負などを伝えるために使用されます。いずれも、行動の窓における、問題のないエリアにて使われます。これを使うことにより、将来的な問題を予防することができます。また、日常のコミュニケーションを円滑にするために使います。宣言的I-Mは、相手との関係を強化し、相互理解を深めるために非常に有効です。

適切な状況

  • 自分の考えを伝えたいとき(宣言的I-M)
     宣言的I-Mは、相手の行動や相手について伝えるI-Mではなく、自分の考えや希望、仕事に関する抱負などを問題のないエリアで伝える時に使用します。これにより、日常のコミュニケーションが円滑になり、相互理解が深まります。例えば、「私はこのプロジェクトに対して非常に意欲を持っています。皆さんと協力して成功させたいです」と伝えることで、チームの士気を高めることができます。


  • 将来的な問題を予防する時(予防的I-M)
     予防的I-Mは、将来的に問題が生じる可能性がある場合に、事前に自分のニーズやその理由を相手に伝える時に使用します。これにより、相手との間にトラブルが生じるのを予防できます。例えば、「私は今後の会議では時間厳守をお願いしたいです。遅れると私のスケジュールが大幅に狂ってしまうので」と伝えることで、将来的な問題を予防できます。


  • 感謝をするとき(感謝のI-M)
     感謝のI-Mは、特定の行動や発言に対して感謝の意を表すことで、相手に対する敬意や感謝の意を具体的に伝えることが目的です。感謝のI-Mを使用することで、職場や家庭、友人関係など、あらゆる人間関係においてコミュニケーションを円滑にし、信頼関係を強化することができます。感謝の気持ちを伝えるだけでなく、相手の行動を認識し、その行動が他者にどのような影響を与えたのかを明確にすることができます。

 各メッセージの使用は、その時々の状況や目的に応じて適切に選択することが重要です。L.E.T.の理論では、効果的なコミュニケーションのためにこれらのメッセージを使い分けることが推奨されています。適切なメッセージを選択することで、コミュニケーションが円滑になり、リーダーとしての効果性が高まります。また、これらのメッセージを効果的に使い分けることで、職場の雰囲気が改善され、チーム全体のパフォーマンス向上にも寄与します。繰り返しトレーニングを実践し、ものにしたいものです。


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