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適切とはいえないアクティブ・リスニング(A/L)の代表例(L.E.T.より)

 リーダー・エフェクティブ・トレーニング(L.E.T.)では、アクティブ・リスニング(A/L)を多用します。A/Lは円滑なコミュニケーションを行うのに非常に有用な手段です。A/Lは、相手の言葉と感情を深く理解し、それを相手に確認する方法です。

 しかし、多くの人がこの手法を誤解し、適切に実践できていないことがあります。以下に適切とはいえないA/Lの具体例とその問題点を挙げてみます。

引き出す、聞き出すことを目的とする
 アクティブ・リスニングの目的は、相手の言葉を引き出したり聞き出したりすることではありません。むしろ、相手が自然に自分の考えや感情を表現できるようにすることです。例えば、「もっと話してみてよ」とか、「それでどうなったの?」としつこく質問するのは、相手にプレッシャーを与えることになり、相手が話しにくくなる可能性があります。A/Lの本質は、相手が言いたいことを自由に話せるようにすることであり、質問攻めにすることではありません。

相手の問題を解決しようとする
 多くの場合、人は相手の話を聞くとすぐに解決策を提供しようとします。しかし、アクティブ・リスニングの目的は解決策を提供することではなく、相手が自分の問題を整理し、自分で解決策を見つける手助けをすることです。
 例えば、相手が「仕事が忙しくてストレスがたまっている」と言ったときに、「もっと効率よく働けばいいんじゃない?」とアドバイスするのは、A/Lの誤用です。正しいA/Lでは、相手の感情に共感し、「それは大変だね。具体的にはどんなことがストレスになっているの?」と問いかけることで、相手が自分の感情を整理しやすくします。

行動を変えさせようとする
 アクティブ・リスニングは相手の行動を変えさせるための手段ではありません。相手の行動を変えさせることを目的とすると、A/Lの効果が損なわれます。例えば、部下が「最近モチベーションが下がっている」と言った場合、「もっと頑張れよ」と励ますのではなく、「最近、何があったの?」と相手の感情や状況を理解しようとする姿勢が重要です。A/Lは、相手の行動を評価せずに、その人の内面を理解するためのスキルです。

ラベルを貼る、判断する
 アクティブ・リスニングでは、相手の行動や言動に対してラベルを貼ったり判断を下すことを避ける必要があります。例えば、相手が「今日はとても疲れている」と言ったときに、「あなたはいつも疲れているみたいだね」とラベルを貼るのは誤りです。正しいA/Lでは、「今日はどんなことがあったの?」と具体的な状況を聞くことで、相手の感情をそのまま受け入れます。ラベルを貼ることは、相手に対する理解を妨げるだけでなく、相手が防御的になる原因にもなります。

ロードブロックを使う
 ロードブロックとは、相手の話を遮ったり、相手の感情や意見を否定する言動を指します。例えば、「それは大した問題じゃないよ」とか、「そんなこと気にしない方がいい」といった発言は、相手の話を遮り、相手の感情を軽視するものです。これらはアクティブ・リスニングにおいて避けるべき行動です。A/Lでは、相手の話を最後まで聞き、相手の感情を尊重することが重要です。

オウム返しをするだけ
 アクティブ・リスニングは単なるオウム返しではなく、相手の言った内容と感情を深く理解し、それを相手に確認するプロセスです。例えば、相手が「仕事が大変だ」と言ったときに、「仕事が大変なんだね」とただ繰り返すだけでは不十分です。相手の感情に寄り添い、「具体的にどの部分が大変なの?」と聞くことで、相手が自分の感情をさらに掘り下げて話すことができるようになります。

適切とはいえないアクティブ・リスニングの具体例

適切とはいえないアクティブ・リスニングの具体例を挙げてみます。

アドバイスの押し付け
 「君がそんなにストレスを感じているなら、もっと早く寝るべきだよ」とアドバイスを押し付ける。このような発言は、相手の感情を軽視し、相手が自分の感情を表現する機会を奪います。正しいA/Lでは、「それは大変だね。何が特にストレスになっているのか教えてもらえる?」と聞きます。

問題の解決を急ぐ
 「そんなに悩むことないよ。もっと気楽に考えればいいんだ」と問題を軽視し、解決を急ぐ。これでは相手の感情を無視してしまいます。A/Lでは、相手が何を感じているのか、なぜそのように感じているのかを理解しようとする姿勢が求められます。

判断や評価をする
 「君はちょっと過敏すぎるんじゃない?」と相手の感情に対して判断を下す。これは相手の感情を否定するものであり、A/Lとしては誤った対応です。正しいA/Lでは、「そう感じるのには何か理由があるの?」と尋ねることで、相手が自分の感情を説明する機会を提供します。

オウム返しだけを行う
 相手が「最近仕事で上司と意見が合わないんだ」と言ったときに、「上司と意見が合わないんだね」とオウム返しするだけで、深い理解や共感を示さない。正しいA/Lでは、「具体的にどんな場面で意見が合わなかったの?」と質問し、相手がさらに詳細を話せるようにします。

 これらの誤った方法は、アクティブ・リスニングの本質である「相手の感情を理解し、受け入れる」という点から外れています。A/Lは、相手が自分の感情や考えを自由に表現できる場を作ることを目指しています。そのためには、相手の話を遮らず、相手の感情に寄り添い、理解を深めることが重要です。相手の問題を解決しようとしたり、行動を変えさせようとするのではなく、相手が自分の感情や考えを自由に話せるようにすることがA/Lの目的です。

カフェでの会話中に誤ったアクティブ・リスニング(A/L)の例が描かれています。左側では、リスナーが積極的に質問を投げかけたり、不要なアドバイスをしたり、問題を解決しようとしたり、ラベルを貼るなどの誤りを犯しており、スピーカーはフラストレーションを感じています。例えば、リスナーの吹き出しには「どうしてこれをやらないの?」や「あなたはいつもこう言うよね」と書かれています。

背景には対照的に正しいA/Lのシーンが描かれており、リスナーは注意深く耳を傾け、うなずきながら、「もう少し詳しく教えてくれますか?」といったオープンエンドな質問をしています。この場面では、スピーカーは理解され、安心して話している様子が伺えます。正しいA/Lの重要性と誤ったA/Lが相手に与える影響を視覚的に強調しています。


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