ムダに教養がつくかも知れない不定期な雑学講座の連載(講義中は寝ないこと)~社会制度を考える~ 「年金制度」とはいかなるものであろう。その1

*そもそも年金って何だや?ヽ(・△・?)*

 まずはこの命題から入っていきましょう。

 年金というのは、手っ取り早く言ったら「軍退役後の保障」であり、戦死した軍人の遺族の補償的な性格を持っていました。
 ですから、年金の始まりってのは、もともと明治時代にさかのぼります。

 明治8年(1875)、海軍の退役軍人に対して、「海軍退隠令」というのが出されて、退役後の生活保障のために「恩給」を給付する制度が始まりました。
 まぁ、命をかけて国に奉仕したんですから、お疲れ様の意味もあったでしょうが、いつまでもジジイに居座られたんじゃ、海軍自体の新陳代謝がなくなり、軍隊の弱体化を招くのを防ぐ仕掛けでもあったわけですな。

 これはいいね!(=´∇`)ってんで、まぁ、陸軍軍人や官吏、そして教職員や警察官にも広がっていったわけです。
 国家国民のために長年奉仕した「恩給」という形の年金制度ができていったというわけです。これが公務員の「共済年金」の始まりでございます。

 じゃあ、年金ってのは、公に関する仕事についた人でないと、もらえないわけ( ゚∀゚ )カッ??というと、さにあらず。

 だいぶ遅れましたが、昭和15年(1940)に「船員保険法」という法律が決められました。また、この制度には、初めて医療や労災保険もついておりました。
 この仕組みは現在の厚生年金とほぼ同様ですが、これには「戦時体制」というものが絡んで参りまして、いわば国策として進められたんです。

 というのは、企業が掛金を年金原資という形で、まとまったお金が準備できるようになるため、国家総動員法下での戦費の一時調達に有効に働いたに違いございません。だから、政府も企業に対しこういった年金という形での「出資」を大いに奨励し、戦費に充てたというわけです。

 その後昭和17年(1942)には、工場で働く男子労働者にも同様の「労働者年金保険法」、昭和19年(1944)には女子や男子事務員にも適応できる、現在と同様の「厚生年金保険法」と名前も改められました。
さて、これで公務員には恩給制度、賃金労働者には厚生年金制度。として、国や企業が退職後の給付をある程度保障する制度が出来上がりました。

 さて、戦争が終わり、国の仕組みもがらっと変わりましたので、今度は公務員の「恩給制度」が見直されたわけです。
 つまり、今までの官吏とは違い、「全体の奉仕者」となったわけでございますゆえ、恩給制度は、旧軍人を抜かして廃止されました。
 そのかわり、厚生年金と同様に、掛金を負担する共済年金に切り替わったわけです。 
 昭和34年(1959)に国家公務員共済組合が、昭和37年(1962)には地方公務員共済組合ができまして、ほぼ現在の制度が出来上がりました。

 また、厚生年金も、昭和29年(1954)に制度が改善されてほぼ現在の形になったほか、私立学校の恩給制度と、厚生年金保険に加入していた私立学校が一緒になって、「私立学校教職員共済組合」が誕生しまして、現在の私学共済につながるわけです。

 *では、こういった「勤め人」じゃない人たちの年金って、いつできたの?(・Д・?)

  
 共済年金にも厚生年金にも加入していない、自由業や農林水産業などの人たちは、現在「国民保険」に加入しています。では、このような制度はどうやってできたんでしょうね。それをざくっとみていきましょう。

  昭和34年(1959)に、高齢者を対象に福祉年金制度が始まったんですが、こいつは保険料がいらない社会福祉的なものでした。
 これが本格的に年金制度としてスタートしたのは、その2年後の昭和36年(1961)で、これまでどの年金にも加入できなかった自営業者なども加入できる、拠出型の仕組みにした「国民年金法」がスタートしたわけです。

 現在の「国民皆保険制度」はこの時点で確立したわけです

 さて、その後の経済成長とともに、それぞれの年金制度は充実していきました。
 世の中がもう高度成長期でイケイケドンドンでしたから、厚生年金基金制度が作られて、厚生年金の給付金が上乗せされて給付できる制度が生まれたわけです。

 さらには物価スライド制や、再評価制度など、景気上昇に伴う物価上昇(インフレ)に応じて給付される仕組みが整ったわけです。厚生年金はこのように整備されていきました。

 ところが、こういった中、年金をめぐる問題点もいろいろと表れてきたんです。

 というのは、この当時は、厚生年金、国民年金、共済年金、それぞれが違った仕組みを持っていて、それぞれの格差感が広がっていたのです。

 この問題はそれぞれの生まれが違う制度だから無理もないことなのですが、こういった金に絡む問題はどうしても不公平を持つのは致し方ないことでございます。

 また、高齢化の進行や生活の向上に伴いまして、掛け金と給付金とのバランスがどうも具合よくなくなってきて、将来的に破綻が予想されるという問題もうまれました

 また、国民年金は任意加入であるため、無加入で無年金者になる人が、特に女性を中心に増えてきたという問題もうまれました。

 こういった問題に対応するために、昭和61年(1986)から年金制度が大きく変えられました。

 つまり、現在の年金制度の基本となっている「基礎年金制度」というやつです。国民年金自体をすべての国民に共通の基礎年金として位置付け、すべての人がかならず加入するべきものであるという仕組みに変えたのです。

今回の講義は現代社会を考える内容です。若い人にも正しく理解し、この制度自体のあり方を考える必要があります。すなわち答えがないのです。
4単位を予定しています。一緒に考えて参りましょう

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