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突然の雨だった。

バケツの水をひっくり返す雨
って、たぶんこんな感じなんだ。

ついつい、どこかの農家の納屋だろうか、
廃屋とは行かないまでも、今にも崩れそうな小屋の軒先に
僕は避難したんだ。

高校3年が終わろうという早春。
もう授業はとっくに終わっていて、入試連敗続きの僕は
4月からの「浪人生活」が予定されていた。

卒業式など出る気もなく、僕は旅に出ていたんだ。

「ひゃぁあ!!」

そんな声と共に、ばたばたとバックパッカーそのものの女が
同じ軒先に避難してきた。

「参ったなぁ~。」

僕に気を遣うわけでもなく、その女は
どかどかと僕の隣に「はまってきた」

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「おっと、先客いたか、ちょっとお邪魔していいかな?」
「・・はい・・、どうぞ。」

突然、雷鳴がした。
大きい、すぐそばに落雷したのかも知れない。

「きゃっ・・!」

女はいきなり抱きついた。
「わ!・・」

こわいのは同じだ、僕も彼女に抱きついていた。

「あ・・すみません!」
「少年、キミも雷はこわい?」
「そりゃこわいですよ。」
「そうか、気が合うね。」
「そういう問題ではないと思いますが。」
「あはは、そうね。」

雨は通り雨で、ひととおり降りまくったあと、
ウソのように晴天になった。向こうには虹が見えている。

「わぁ!虹。」

女はそう言って大きく背伸びをすると
着ていたTシャツをおもむろに脱いで
ぎゅっとぞうきん絞りした。

結構な水が絞り出た・

僕は目のやり場に困っていた。
すると女はケラケラとわらった。

「なぁんだ、ボク、照れてるの?あたしの胸なんか、
お相撲さんよりちっちゃいから。あはは。これだってお飾りブラ。」

ちょっとむっとしたのは「ボク」という子ども扱いだ。
ああ、このおねえさんは、僕を子どもにしか見てないのだ。

でも、無理はないか・・。

「興味あるのか?少年。」
その女はじっと僕を見てつぶやいた。

「何にですか?」
「きまってるでしょ。・・キミは童貞だろ。」


ストレートに来た。
この女は、僕の「変化」を見逃してなかったのだ。

「深いわけは聞かない約束。あたし、キミさえよければ、いいよ。」

「え?・・」

彼女は、軒先から納屋の奥に、僕を誘っていたのだ。








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