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使いたい小麦がある

国産小麦を知っていますか?

私は恥ずかしながら、パン屋で働くまで国産小麦を知りませんでした。
というか、産地を気にしたことがありませんでした。パンを作るなら強力粉、みたいな。

よくそれでパン屋をやろうと思ったなと声が聞こえて来そうですが、、当時の私は気持ちだけで、知識も技術もなかったので。。

国産小麦と言っても種類は様々

国内で流通している小麦の大半は外国産です。最近ではスーパーでも国産小麦を見かけるようになりました。家庭でパンを作る方には常識ですし、国産小麦を謳っているパン屋も多いです。現に私が働いていたパン屋では、国産小麦15種類ぐらいを使い分け、ウリにしていました。

最初はなんでこんなに多くの種類を、、と思っていましたが、一口に国産小麦といっても品種はたくさんあります。そして同じ品種でも産地によって全く変わります。

もちもちなパンになる小麦もあれば、パリッとしたパンになる小麦もある。あっさりした味、複雑で濃い味など様々。

パン屋ではそういった小麦の特徴を活かし、ブレンドして使うことが多いです。既に製粉会社が扱いやすいようブレンドしているものもありますが、それをさらにブレンドするのが大半だと思います。

粉をブレンドする理由

こういうパンが作りたい!という完成イメージがある場合、一種類の粉で実現は難しいです。もちっとしたパンに向いている粉は、歯切れが悪かったり、ボリュームが出にくかったりします。そこに歯切れのよい軽めのパンになる小麦をブレンドすると、もちっとしつつも、すっと噛み切れるパンを作ることができます。特徴を理解し複数の粉を掛け合わせていくことで、イメージを実現させることができます。

他にも、こういう素材を使いたいというときに、素材の味を存分に引き出すためにブレンドしたり。この小麦の風味を味わって欲しいけど、全部この小麦にすると重くなりすぎる、、というときにブレンドしたり。

小麦にも得意分野、苦手分野があります。だからそれを互いに補うことで、より美味しいパンにする。それがブレンドする理由です。

粉の組み合わせ、組み立て方を私はパン屋で学びました。といっても、パン屋では細かく教えてはくれません。それぞれのパンの配合を見て、粉を調べ、特徴を知り、実際にパンを作り、食べて、ああだからこの粉を使っているんだとか、そうやって学んでいました。

国産小麦に興味があれば、こちらのサイトがおすすめです。大手製粉会社が出している小麦粉のブランドがまとまっていて面白いです。

小麦にも新米のように新麦がある

新麦は桜前線のように、南から北へ北へと徐々に上がっていきます。面白いです。

新麦で作られた小麦粉は、通常のものより少し水分が多いのか、同じ水分量だと若干生地が緩くなる気がします。風味は通常のものより香りが豊か。
新米と聞くとそれだけで美味しそうですが、パンも新麦で作ってますと言われたら、それだけで少し美味しさアップです。この季節だけの特別な小麦なので、興味があれば是非。既に九州産小麦は解禁しています。

最近よく目にする国産小麦も、たくさんの種類があることがわかったと思います。同じ品種でも、産地や育てる人によってかなり変わります。そして鮮度も味の一つ。挽き方でも変わりますが、今回は割愛します。

使いたい小麦がある

長々と書きましたがここからが本題です。
自分でパン屋を開くとき、ここの小麦を使いたいと思っていた小麦があります。

一つ目は、マルマメン工房さんの小麦です。
鹿児島でやるからには、鹿児島の小麦を使いたい!そう思っていたのですが、、ない。。

小麦を育てるのに雨の多い鹿児島は向いていないのか、ほぼ作っている農家さんがありませんでした。ちょっとは作られていそうですが、調べても出てこない。。
諦めるしかないのかと思っていたところ、霧島で作られている方がいました。無農薬・無化学肥料。さらにクラウドファンディングで製粉機まで。すごい。。
既にクラウドファンディングは終わっていたので支援はできませんでしたが、是非この方の作る小麦を使ってみたいと思っていました。

そして先日、マルマメン工房さんのミナミノカオリを購入することができ、自宅でパンを作りました。
味もですが、何より香りが印象的。粉から起こしたルヴァン(発酵種)がものすごく良い香りでした。柑橘系のような香りがして、この種でパンを作ったら間違いなく美味しいだろうな、、という香り。

パン屋をやるときは、是非使わせていただきたい思ってます。一人でやられているようなので、あまり量は手に入らないと思いますが、特別なカンパーニュを焼きたいです。

そしてもう一つは、ろのわさんの小麦です。
ろのわさんは、私が働いていた店で使っていて知りました。熊本県菊池市で有機栽培をしている農家さんです。
鹿児島でやるからには、地域を応援、還元するためにも、できるだけその土地、近くの土地で取れたものを使いたいです。だからメインは九州産の小麦を使います。

こちらの小麦で作りたいのは、食事に合わせる大きなパン。ロデヴ。小麦の味をしっかり感じ、内層は大きくうるっとしている。一口噛めば小麦の香りが広がり、パンなのにジュワっと水分を感じる。主張もするけれど、食事を引き立て、食事もパンを引き立ててくれる。そんなパン。
ちなみに、働いていたときのこの小麦の発注は私が担当していました。まさかまた発注できる日がくるとは。

私にできることはパンを作り届けること

国産小麦は徐々に生産する方も増えてきています。地域のブランドとして打ち出すところもあります。
一方で、キタノカオリのようにすごく美味しい小麦でも、栽培が難しく生産量が減っている小麦もあります。

私ができることは、生産者の方の想いを引き継いでパンを作ること。そしてそれを食べてくれる方にしっかりと届けること。

挙げた農家さん以外にも使ってみたい小麦はまだまだありますが、まずは今ご縁をいただいた小麦で、一つ一つ、自分にできることをやっていこうと思います。

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