ワンランクもツーランクも上の3Dプリントを成功させる、Prusa MK3s + MMU2.0を安定運用してFDM方式で5色カラープリントするための教科書

こんにちは。ヨーヨーを作るメイカー、YOYOMAKERの東方ヒデキと申します。僕自身は、2014年に3Dプリンタを購入し、自宅でヨーヨーを作り始めました。以来、仕事の合間を縫いながらメイカー活動をしています。おかげさまで、ヨーヨーの世界チャンピオンとコラボして設計・企画し、自宅の3Dプリンタで作った商品の出荷数が2019年12月で4000個を超えました。ヨドバシカメラのおもちゃコーナーにも並んでいます。

さて、このnoteでは、チェコ産のFDM(熱溶解積層)方式の3Dプリンタ「Prusa MK3s(プルサ マークスリーエス、以下MK3S)」と、アドオンユニットの「MMU2.0(マルチマテリアルユニット、以下MMU)」を安定して運用し、家庭用の3Dプリンタで最大5色の3Dプリントオブジェクトを作って楽しむための改良ポイントを提供します。

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写真:MMUサンプルのGコード「3色トカゲ」ちゃん。かわいい。

なぜこうしたものを記そうと思ったかというと、日本ではPrusaMK3SとMMU2.0を組み合わせて運用している人が少ないか、いてもブログ等々で公開していないか、いずれにせよ、運用するコツや、トラブル解決の情報が非常に少ないからです。MMUを買ったはいいけど、僕、とにかく情報がなくてすごい困ったんですよ(笑)。何から改善していいかわからなかった。だから、これからMMUを使ってみようと思う人に、僕の研究というか、試行錯誤が役に立ったら嬉しいです。(2020/1/16追記、18,000文字以上あるのでちょっとずつ読むのをおススメします。)

Reprap・オープンソース精神には反しますが、技術的な部分は有料での提供とさせていただきます。とはいえ、僕自身、公式のフォーラムや海外のブログなど、無料の情報をかき集めて仕上げたセッティングだったりもします。その気になれば、僕が得たものと同じ技術情報をご自身で調べて入手することも可能です。有料ってどうよ、と思われる方も、無料で同じ情報を得ることはできるので、ぜひGoogleを使いこなしてください。

前書き

まずは、Prusa MK3sとMMU2.0をお持ちであることが前提条件となります。最近は数年前(僕が初めてFDM方式の3Dプリンタを購入したのは2014年ごろ)と違って、3Dプリンタと言ってもいろんなメーカー、いろんな種類のものが存在します。いわゆるPrusaクローン・コピーマシンや他のメーカーのマルチマテリアルシステム、ツールチェンジシステムとは関係のない話になります。購入前にご承知おきください。

また、これからPrusaMK3SとMMU2.0を購入する!という方もいらっしゃるかもしれません。一通り読んでもらって、購入の参考にしてもらえたら幸いです。もし、このnoteを読んで「こんなことしないといけないの・・・」とちょっとでも抵抗を感じた方は、購入するのをちょっと待ち、公式のアップデート・改善のバージョン(MMU3.0?)が出てからのが良いかもしれません。「いやーこんなんむしろ燃えるわー」っていう機械オタクさんには、購入をお勧めします(笑)。

また、このnoteに書いた処置を施した結果、PrusaMK3S+MMU2.0は、PLA素材専用になると思います。そもそも僕は、PETG、ABSでの3Dプリンタ運用をあまり想定していないんですね。PETGはPLAほどのカラーバリエーションがなくてプリントしてて面白くない、ABSはプリント中の臭気が気になるのです。もしPLA素材以外にも応用したい人はあくまで参考程度にして、ご自身で改造していってください。もちろんシングルモードで使う分には、PETGもABSも問題ありません。

結論:MMU2.0のエラー原因の99%はこれ

僕の結論から先に申し上げますと、MMU2.0のエラーは「チップ先の形状に起因してどっかに引っ掛かっており、本体のオートメーションではにっちもさっちもいかなくなって起きる」です!

このnoteで解説する内容は、本体のオートメーションを正しく機能させ、人間の手を必要とせずに完走させるための改良あれこれとなります。

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いろいろ工夫した結果、すごくきれいにプリントできた3色トカゲちゃん。

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まさかの、ゴミのほうが倍のフィラメントを使っているというオチ(笑)。

新たな事実発覚(2020/1/16追記)、MK3のバージョンによって手を出すポイントが違うぽい

下記以降の記事を書きながら、いろんな試行錯誤をする中でどうも、Prusa MK3/MK3Sのバージョン、出荷時期によって部品が違うのではないか?もしかして僕がやってたのは、MK3の古いバージョンの部品群のせいで大改装が必要だったのではないか?という疑問が出てきました。そして、2019年に買ったMK3Sに移植したらほぼ一発でプリントがうまくいって、これが実証されました(笑)。よって、最新のMK3Sを使えば、ものすごい改良をしなくてもラミング設定(後述)のみでマルチマテリアルプリントを楽しめそうです!

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最初は、2018年8月に注文したMK3に対してMMUを設置しました。どうも、この時期同梱されていたステンレスバレルに問題があるのでは、という疑問。

この文章を読むと、E3Dのステンレスバレルの信頼性がいまいちっていう記述があるんですよね。「そんなに精度の高いステンレスバレルを作るなら特別オーダーで高価になるからね!ってE3Dに言われてショボン(´・ω・`)」みたいな雰囲気(笑)。その後の記事、MMUのアップグレード進捗みたいな記事を読むと「なんかいろいろ起きてるけど進んでるよ!」みたいな感じ。

で、MMUのシッピングの開始は2018年の11月ごろからなのです。そうすると、これより以前か、同時期に出荷されているMK3/MK3Sのステンレスバレルは精度が低い、MMUの運用には耐えられない、という可能性が大。

下記以降の記事でいじっていたPrusaMK3本体のボードが焼けてしまったので、2019年6月に買ったMK3SにMMUを移植したところ、そのまますんなり(でもないんだけど、以前よりはマシ)ロード・アンロードができるようになって、プリントできるようになったんです。とはいえ、フィラメントの通り道の問題解決としてPTFEチューブの交換や、パーツ剛性の問題はあるのでプリントし直したり、ある程度改良はしたほうが良いです。

ということで、MMUの購入を検討している人は、自分の持っているMK3本体の出荷時期を鑑みて(2019年4月ごろ以降出荷のものならおそらく問題ない)、合わせてパーツを準備しておくと良いです。組み立て済のフルセットもしくは、プルサ・スペシフィックのバレルを購入して交換しましょう。

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大丈夫、僕みたいな苦労しなくてもMMUを楽しめますよ!

著者の環境について

Prusaとの出会いと情報の環境

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2018年前半、Reprapジャパンコミュニティの新年会で、ジョセフ・プルサ、そしてそのプルサチームメンバーと飲みました(笑)。このときはビッグサイトで3Dプリンティング関連の展示会があったみたいでプルサチームの主要メンバーが来日中でした。

左下の白シャツが僕です。この年の夏、彼らがMakerFaireTokyo2018に来た時にPrusaMK3SとMMU2.0の実機を見て「これは間違いないな」と確信して購入にいたった次第です。

ReprapJapanコミュニティの中には、僕と同様にPrusaMK3SとMMU2.0を購入、使用しているユーザーが1名います。その方と情報をやり取りしたり、Prusaのジャパンローカライズを手伝っているユーザーさんとも情報をやり取りしてたり、けっこう恵まれた環境ではあります。孤独じゃないって大事。

もしこのnote読んでもよくわからなかったら、

TwitterのDMでメッセージください。もう一度言おう、孤独じゃないって大事。

あと英語。Prusaの情報は現状ほとんど英語ものばかりなので、しゃべれなくても良いですがリーディング能力は必須です。筆者はある程度、英語でのコミュニケーションできます。

Prusa MK3s

2018年8月に購入、購入当時はMK3でした。MMU2.0のキットの中に、MK3Sへのアップグレードキットも入っていたので、MMU設置のついでにアップグレードを行うことになりました。最新のファームウェア FIRMWARE 3.8.1 (1.0.6) にしています。ちなみに僕は、PrusaMK3Sを3台所持してます。説明書通りに組み立てておいてください。

※前述の通り、2018年代のMK3本体の場合は、ホットエンドをプルサ・スペシフィックに変更、もしくは後述のような改造が必要。

Prusa MMU2.0

2018年11月にプレオーダー(予約)し、2019年3月末に到着。早々に組み立てたものの、マルチマテリアルユニットのテストGコードによるプリントがうまくいかず、解決の糸口も探れなかったため、半年ほどシングル射出で運用していました。シングルモードで運用中も、いろいろと調べて、2019年8月ごろからPrusaのフォーラムや有志の記事で有用そうな情報を探してひとつひとつ検証し始め、ようやくテストGコードの「3色トカゲ」のノーエラープリントに成功しました。説明書通りに組み立てておいてください。

使用フィラメント

今回の改良を通じて、僕が使用していたフィラメントは下記の2色です。

結論、こういった安いフィラメントでも問題なく使用できます。っていうか、汎用PLA(中華製安PLA)で使えなかったら意味なくね、って思ってます。Colorfabb、Protopasta、Fillamentum、Plusamentなど、お気に入りのメーカーの素材はたくさん持っていますが、もったいなくてこの実験には使ってません。

パソコン環境

パソコン自体は、Windows10を使っています。CADはFusion360、スライサーにSimplify3D(シンプリファイ3D)をメイン、サブとしてPrusaSlicerを使っています。このnoteで記述している改善においては、基本的にはパソコンでファームウェアをいじる作業は不要です、Arduinoを使ってファームウェアのパラメーターを変えてみたりなどなどしてはみましたが、公式の最新版を使うのがよろしいかと感じます。PrusaSlicerを使いながら得たセッティングは、随時、このnoteに追記していきます。購入してくれた人には公開、活用してもらえるようにしたいと考えています。

工具・道具・材料

MMUを安定運用する改良を施すにあたって準備しておくと便利なツール類を記述しておきます。

・リューター

・ビット(1.9mm~2.1mmの開口ができるもの、リンクは一例)

・ピンセット

・ニッパー

・外形4mm、内径3mmのPTFEチューブ(1mあれば十分)

・フィラメント Colorfabb XT-CF20

・カッターの刃

・硬化ノズル(E3D Herdend Steel Nozzle等)

・直径10mm厚さ3mm程度の円形ネオジウムマグネット

0.トラブルからエラーを見つけ、潰す

この項目では、なぜ有料で公開するに至ったか?僕がどういう考え方で課題を見つけて解消していったのか?を話します。

■有料公開にしている理由

Prusa MK3s + MMU2.0に限りませんが、FDM方式の3Dプリンタを安定的に運用するにあたっては、どうしてもトライアンドエラーが必要になってきます。3Dプリンタは家電と異なり、スイッチをオンすれば良いという単純な機械ではないのです。最近は、家電に近いもの、試行錯誤をしなくてもきれいにプリントできる3Dプリンターが増えてきてはいます。技術の進歩は速いなぁ。

一方で、トライアンドエラーの情報蓄積が非常に少なくなってきているように感じます。トラブルが少なく便利に使えるものが増えたのは良いことですが、トラブった時の情報がないというのも考え物です。

僕自身はYOYOMAKERという活動のブログで、CADの使い方や3Dデータの公開などもしています。このnoteで書いている内容は、もともとは、そちらでひとつひとつ連載記事を書いて、フリーの情報として提供しようと考えていました。でも、MMUのトラブルや改良のポイントはたくさんあってというかありすぎて、ブログの連載では情報としてまとまりそうにないぞ、とMMUをいじくりながら思ってました。

と、グダグダ言ってはきましたが、このnoteに書いている試行錯誤の記述ややったことなどは、週末土日の数時間ずつを半年間費やして出来上がってます。Prusaよ、マジでもっと精度高めてからロールアウトしてくれ…。人柱代金だと思ってください。

とはいえ、5,000円出せば、おんなじ苦労しなくても済むんです。現在、MMUでプリントはできてますが、たまに発生するトラブルの対処法やPrusaSlicerの設定など、情報がどんどん増えそうなので、将来的に値上げする可能性あります。いまのうちにどうぞ。

■僕はこうやって考えました

僕は危惧してます。最近の技術系のブログによくありがちな、SEOで上位表示されるものが製品レビューばかりで技術的な解決方法が見つからないような時代になっているということを。マジで、PrusaとMMUを扱っている人の、日本語の情報が出てこないです。

最近どうかなーって思ってるのが、YouTubeで、日本語で3Dプリンターと検索すると、YouTuberがアピールしている「こんな価格でこんなにきれいなもの作れるの!?」みたいな動画が200万回再生を超えて支持を得ていること。ただそれは、僕のように3Dプリンタをほぼ日常的に運用している人間にとっては、技術的に困ったときに観ても何も得るものがないという動画だったりします。

技術蓄積の公開は、今はYouTubeという選択肢もあって、素敵な時代です。今後、僕のYouTubeチャンネルでもMMUを解説する動画をあげていくので、そちらも参考にしていってください。

このnoteは、Prusa MK3s + MMU2.0に関するトライアンドエラーを蓄積し、後に続く人に託せるようなものにしていきます。文章と写真と動画、ひとつにまとめるには、noteはすごく良いですね。

Prusa MK3s 自体は非常に優秀な3Dプリンタです。今まで使っていたマシンがなんだったのかと思うほどパフォーマンスが良いです。1度組み立てたらほとんどメンテナンスがいらないし、安定してプリントをしてくれます。ただやはり、プリントが連続して失敗するときや、どうしてもうまくプリントできないときはあって、そんなときはどこに原因があるのか?を経験値から自分で探していくということを習慣にしていく必要があります。

MMUにおいても同様の考え方で取り組んでおります。

いわゆるFDM方式の3Dプリンタのトラブルについては、おそらく様々な解決方法があります。僕の場合はこうだった、ということですので、参考にしてもらいつつ、使えそうな改善案を使ってください。何事にも因果関係があります。3Dプリンタのトラブルもそうで、ひとつひとつ紐解いていけば必ず原因にたどり着きます。原因にたどり着けば、改善案も浮かびます。

3Dプリンタサークルみたいなのがあればみんなでワイワイやりながら「ああ、あの機械ね、ここが詰まりやすいんだよね、この部品外してこうすれば解決するよ」という会話で情報をシェアし、すぐに解消もできようものですが、そんなサークルは存在しえないのですよ、今はもう、マシンの種類が多すぎます。2017年頃から、Amazonで中国製の低価格3Dプリンターが跳梁跋扈したためです。どこのメーカーの何なのか、そして何のパーツを使っているのか、何のボードを使っていて、ファームウェアは何なのかが、違いすぎます。僕自身、中華製の3Dプリンターを4台持っていたことがあって(すでに全部処分しました)、「基礎設計は同じでも、ディテールがまったく違う」んですよね。だから発生するトラブルも、根治療法がしにくくなっていると感じます。

ちなみにここでいうトラブルというのは「3Dプリントがうまくいかないこと全般」を指します。ノズル詰まり、フィラメントのロードができない、ファーストレイヤーの剥がれ等々も含めてトラブルです。Prusa MK3sはそもそもそうしたトラブルが少ない3Dプリンタではありますが、MMUを組み合わせたとたんにかなりの厄介者になります(笑)。

起きたトラブルに対して、ここが原因だったのでは?と推測し、エラーに対処する手を施して再度テストランさせる、ということに繰り返し取り組むことで、MMUにまつわる問題も必ず解決できます。この教科書はそうやった結果出来上がってます。より安定したマルチマテリアルの3Dプリントを楽しみましょう!複数カラーの3Dプリント、マジで楽しいです。

2020/1/2追記

フォーラムに、僕が遭遇したエラーとほとんど同じかそれ以上のエラーの記述とそれに対する回答を発見しました。これを自力で解決すれば5,000円払わなくて済みますよ!

以下からは有料となります。

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ワンランクもツーランクも上の3Dプリントを成功させる、Prusa MK3s + MMU2.0を安定運用してFDM方式で5色カラープリントするための教科書

YOYOMAKER

4,980円

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