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”教えない教育”もある!?

九州大学の工学部では、数年前に改組があって、第Ⅰ群からⅥ群までの6つの学科のグループに分けました。私が授業を担当する地球資源システム工学科は、Ⅳ群に属しています。また、Ⅵ群はチョッと特殊で、大学に入学した後で希望の学科を選べるようになっています。ただし、希望が多いと成績順になってしまいますが・・・。

先週末にⅣ群の学生向けのオムニバス形式の授業をしてきました。これはⅣ群の学生がどの学科を選ぶのかをサポートする”学科/研究室紹介”の授業です。私は『地球を読み解く科学の眼鏡』というテーマで、物理探査学の紹介をしてきました。

授業の最初にアンケート用紙を配布し、授業の感想や質問・コメントなどを書いてもらいました。今週の初めごろ、アンケートをまとめたものがメールで送られてきました。概ね好意的なコメントが多かったのでホッとしましたが、中には私の拙著『はじめの一歩 物理探査学入門』を高校時代に購入したという生徒がいて驚きました。さすが、九大生。

今の大学の授業はきちんとしていますし、講義の内容も充実しています。これは当り前のことですが、実は私が大学に入学したころの専門科目の授業は壊滅的でした。他学科の学生たちと一緒に受ける講義はまともでしたが、資源工学科(当時)の専門授業はデタラメでした。当時の講義時間は110分と長丁場でしたが、20分遅れて来て20分早くやめる先生がいました。また、教科書を棒読みするだけの先生もいました。休講もかなり多かった気がします。「こんな授業で良いの・・・?」とマジメな私は常に思っていました。

授業はいい加減でも、試験には難しい問題が出ます。物理探査学の試験では、授業で習っていない問題まで出ました。こんなの解けるはずもありませんが、持てる知識を総動員して解答欄を埋めました。授業は前期&後期の通年でしたから、二回目の定期試験の時には『物理探鉱学』という旧字体の本を買って、必死に勉強しました。これが本当に読み難い本で、物理探査の勉強というより、旧字体の漢字の勉強のようでした。

昔の大学は、何も教えてくれませんでした。しかし、教えてくれないことがわかったので、自分で自ら学ぶことを覚えていきました。今の大学は親切に色々と教えてくれますが、果たして”自分で学ぶ力”が育っているかと言われると疑問が残ります。

先生が何かを教えようとする際に、明示的に”正解”を与えても学習者(生徒)の力は育ちません。理想的な教育は、先生は生徒が自ら答えを見出していくための仕組みを設け、生徒が自分の頭でじっくり考え、学問の本質に自らの力で気づくように配慮することです。こうすれば、生徒の学力・能力向上が期待できます。実は「教えない教育」 というのもアリなのです。

大学も一種のサービス業です。学生さん(の親)から授業料を頂いて、講義や実験というサービスを提供しています。授業が休講になると、かつての私もそうでしたが、「ラッキー!」と喜ぶ生徒がいます。しかし、実はその分のサービスを受けられないので”アンラッキー”な状態なのです。大学の授業だけではなく、何はともあれ、自分で学ぶことは重要です。『学問に王道なし』なので、自分で切り開くしかありません。

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