DIME NOVELS ダイムノヴェル第三話
金曜の昼過ぎ、クラクションが鳴った。
下着一枚、酒の残る頭を上げ、ベッド横のブラインドを指で下ろして、窓の外を見下ろした。
眼下の路肩に、陽に焼けた黒いダッジ・チャージャー。ドアの前までの御出迎えは無い様だ。
もう臭い始めていたムショ帰りの格好に身を固めて、出て行った女房のように、ボタンを押した位では帰ってこないエレベーターを諦め、酒を抜く為もあり、階段で階下へ降りた。
無愛想なフロントのオヤジに、もう帰っては来ない旨を、軽く手を挙げて合図をし、眩しい陽光の中へ繰り出した。