中島秀人

24年に西部劇小説『JAKE THE STARDUST』を上梓。 是非、ご拝読のほど …

中島秀人

24年に西部劇小説『JAKE THE STARDUST』を上梓。 是非、ご拝読のほど https://www.bungeisha.co.jp/bookinfo/detail/978-4-286-24937-7.jsp

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  • 全開アイ・ラブ・ユー

    僕は、旅へ出た。17歳。9月。北海道。 学校も家族も友人も、フェリーの向こうに置いてきた。 カワサキトリプル KH400。僕の相棒。 2スト三気筒がうなり、僕の旅は始まった。

  • JAKE THE STARDUST

    西部劇小説です。 こちらに出版社の特設ページもございます。 お気になった方は是非、ご購読のほど。 書籍詳細:JAKE THE STARDUST | 書籍案内 | 文芸社 (bungeisha.co.jp)

  • DIME NOVELS

    【あらすじ】 ムショ帰りの俺は、ご親切なことに刑務所まで出迎えにきやがったCとKに誘われ、金も仕事もない身空から否応なしに、銀行強盗の片棒を担ぐことになった。 しかし、彼らから訊かされた計画は『男の仕事』には程遠い『チンピラ仕事』。 若造のUも加わり、週末の銀行を襲うのだが…。 男。報酬。裏切り。最後の笑うのは

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DIME NOVELS ダイムノヴェル第一話

 リー・マービンとジェームズ・コバーンの区別の付く奴は、男だ。 漢、と表してもいい。 二人は、共に長身で、長い顔を有しており、スクリーンの中でタフガイを演じ続けた。  片や、マービンの方は、ロバート・アルドリッジや晩年のジョン・フォードの映画に多く出演していて、四つばかり歳若のコバーンの方は、サム・ペキンパー作品の常連だった。 尤も演ずるのは両者共、西部のガンマンか兵隊ばかりだから、区別の付かない奴なら、話の途中で入れ替わっていても、違和感は無かったろう。  だが、分かる者に

    • DIME NOVELS ダイムノヴェル第六話

      Cが銃口を、しゃくってみせた。倒れているKの方へ導かれる。事後の処理を簡潔に纏めたいのだろう。明日と明後日の方向に転がる死体を集めるのは、骨が折れる。 靴の裏に、Kの血液を感じた。床まで染め始めていやがる。 「大丈夫か?」大丈夫じゃない男に訊いた。  Kは答えない。ただ視線を漂う。 「自分の心配をしろ」とC。真っ当な意見。少なく見積もっても、セコンドがラウンドの合間にコーナーで、しっかりディフェンスを固めろ、と言うくらいの真っ当さはあった。  それくらい俺は、すべき基本から逸

      • DIME NOVELS ダイムノヴェル第五話

        「ご覧のとおりですよ」荒れ放題の行内を金庫室に案内しながら、支店長は警部に答えた。「金庫の中は綺麗なものです」  金庫の中は、すっからかんである。 「被害額の方は?」 「500万は下らないでしょう。週末ですから」 「正確な額を精査しておいて下さい」 「ええ、勿論」  二時間ばかりの検分の末、警部が立ち去った後、支店長は受話器を手に取り、いつもの番号を回した。 「私です。…来ました。四人で。…警察は今、帰ったところです。…被害額は500万と言っておきました。…全て計画通りです」

        • DIME NOVELS ダイムノヴェル第四話

          「五分だ。エンジンは掛けたままにしとけ」Cが、車に残るKに指図して、残りの俺達三人は、車外に飛び出した。  疎らな往来の何人かが、俺たちに振り返った。 銀行へ向かうストッキング男の群れだ。 大体の構図は飲み込めたろう。預金者でないのは確かだ。 だから彼や彼女らは、俺たちに道を譲った。危うきに近寄らず。 俺も月々、決まった給料を貰っていれば、そうしたろう。  雑な仕事だ。入る前から犯罪を露見させていた。  先頭を行くCが、ガラス戸を押して行内へと雪崩込む。 銃声が一発鳴る。気付

        DIME NOVELS ダイムノヴェル第一話

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        • 全開アイ・ラブ・ユー
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        記事

          DIME NOVELS ダイムノヴェル第三話

          金曜の昼過ぎ、クラクションが鳴った。 下着一枚、酒の残る頭を上げ、ベッド横のブラインドを指で下ろして、窓の外を見下ろした。 眼下の路肩に、陽に焼けた黒いダッジ・チャージャー。ドアの前までの御出迎えは無い様だ。 もう臭い始めていたムショ帰りの格好に身を固めて、出て行った女房のように、ボタンを押した位では帰ってこないエレベーターを諦め、酒を抜く為もあり、階段で階下へ降りた。 無愛想なフロントのオヤジに、もう帰っては来ない旨を、軽く手を挙げて合図をし、眩しい陽光の中へ繰り出した。

          DIME NOVELS ダイムノヴェル第三話

          DIME NOVELS ダイムノヴェル第二話

           あいつと会う為に、俺は久しぶりに鉄道に乗った。 目的の駅に着く既で、列車は地下に潜った。 不意に車窓が黒く染まり、窓に俺の顔が映った。 思っていたより長く、間抜け面に見えた。不安の色が見て取れた。 そんな顔を流れ込んできた駅の明かりが、断りもなくかき消した。 数年前に来た時とは違い、降りたのは地下駅だった。 街の中の踏切の数を減らす為に、どこの鉄道会社も高架か地下か、の二者択一を迫られ、この駅は交差する他社の線が高架を走っている為に、その身を潜らせるほか無かった。 見上げる

          DIME NOVELS ダイムノヴェル第二話

          JAKE THE STARDUST 第一話

          小ぶりなステットソンハットを斜に被った男の似顔絵の入った その手配書には、こう書かれていた。 ジェイク・ザ・スターダスト。 報酬5000ドル。 生死を問わず。  それ以外は何も書かれていない。写真も無ければ、本名も罪状も。 これがジェイク・ザ・スターダストの通り名で知られる男の手配書だ。 西部一のガンマンの。 針葉樹の鋒が並ぶ深い森の中。 白煙を東に置き去りに突っ走っていた蒸気機関車が、レールと車輪の間で熱る癇癪女さながらの金切り声を響かせた。 不調法に急停止した列車は、大

          JAKE THE STARDUST 第一話