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空は、今は、青くないな…… #読書の秋2021

どれだけ普通だと言われようと、私の趣味は読書と音楽鑑賞です。
……まぁラノベが読書かと言われたらちょっと微妙ですが
そのラノベの定義もかなり曖昧なんで今は置いときます。

しかし、どれだけフィクションを読もうと、
結局原体験が一番刺激的で説得力があるというのが持論です。

幻想は所詮幻想。
そこに作者の思い入れが含有されていて
胸打つものももちろん往々にしてあるんですが、
実際の作者の言葉に深く共感や納得をしてしまいます。

そういう意味ではあとがきは個人的には超重要ですね。

まぁ何故か浅井ラボとか森博嗣とか
すごい好きな作品の著者に限ってあとがきをないがしろにする傾向があるんですが。笑

乙一時雨沢恵一あたりはあとがきの面白さは有名ですよね。
そんな私は上遠野浩平に一票入れます。
自身に起こった日常と著書のテーマにからめて上手く文章化しています。
もうそれだけで一冊書いてもいいんじゃないかというくらい。
(ここにこの話題挟む意味あったのかな)
(まぁいいじゃん)

そう、つまり作者の思いだけが綴られている書物を、
随筆と呼ぶわけですね。

こんな空想を思いつく方々はどういう脳内構造をしているのか。
それを一片だけでも覗き見れる数少ない手法だと思うんです。

というわけで、
ここでは私が一番読み直したであろう本を一冊紹介させてください。


■空は、今日も、青いか? / 石田衣良

2009年出版。

私は別段「池袋ウエストゲートパーク」の信者というわけではないのですが
R-25をたとえ興味ない部分でもくまなく全部読んでやろうと
毎週心待ちにしているくらい熱心に購読していたので
そこに掲載されていたエッセイがひとまとめになって出版されると見てから心待ちにしていました。

当時私はコンビニ店員をしていまして
都合よく最新号が店舗へ設置されていたので
途中からではありますがR-25は出勤時の楽しみの一つになっていました。

邂逅

私がこのエッセイにとりつかれたきっかけは、
最近の大学生が論文を書くためだけに新聞に触れていた記事のときです。

私は専門学生の頃は新聞配達をして学費を賄っていたのですが
そこで配っていたのが日経新聞。

白金高輪・三田あたりで400部くらい配ってたのかな。
全部配り終わっても予備として必ず3部余るように毎朝自転車に積むので
手元に配られずに持ち帰る新聞が必ず残るわけです。
(※3部じゃなければどこかで配達ミスが起こってるということですね)

なのでエレベーターに乗ってる瞬間とか
配達区域が区域なので平気で10階以上なんてザラ、30階50階とかあるんで、
そのタイミングで少しだけ新聞を読めるんですよ。

おもしろそうなとこだけ。つまり春秋と天声人語の部分だけ。
(だけってことはないんだけど今は割愛)

したらばエッセイの中でこう言うんです。
それだけ読むのはもったいない、と。
ズバリ言い当てられてドキッとしますよね。

おまけに石田氏は、その新聞から池袋ウエストゲートパークのいくつかの話を思いついて書き上げたと。
なんと、あの面白い小説の種がここに埋まっていた、だと。
なるほど、たしかにほんとに起こってるところから着想すれば
ある程度の説得力やリアルさといったものは自然と付加されると。

それからというもの、あまり褒められた行為ではありませんが
コンビニ店員であることをいいことに
暇な時間に読んでいたものを雑誌から新聞に変えました。
(※もちろん返品処理が終わってバックヤードに下げられたものですよ)

おかげさまで当時携わっていた創作がはかどったのもいい思い出です。
もともと活字が好きだったのが加速してしまった弊害もありましたが。
おかげで時間が足りない足りない。
mixiもやっていたのでこの頃が一番インプットもアウトプットもさかんでしたね。いやぁ充実してたわ。

読み心地

R-25で連載していたということで、内容的には時事ネタに絡めつつ
2つの対立する意見を並べて持論を展開しつつ
どちらも肯定しどちらも否定して判断の余地を残しつつ
基本的には最終的に若者頑張れとエールを送る内容。

そんなに重い展開はせず、掲載時は容量も1ページ分なので
そんなに長文を読むのが得意でなくてもサラッと読めてしまう。

まぁ端的な言い方をしてしまうと
どうとでも取れる"バーナム効果"とも言えなくもないのだけれど
けして説教臭くなく押し付けがましくもなく
「僕はこう思うけどどうかな」とあくまで意思決定は委ねる方向性。

ただこの石田衣良の遠慮がちな断定が心地いい。
虫も殺さぬような文体ですんごい余計な思考の回り道をして
正解と間違いの境目を曖昧にした上でストンと落とす。

私は幼少期から斜に構えるフシがあるので
これによって目からうろこが出て人生の指針になる!という読み方よりは
どちらかと言えば共感を得ていたのかもしれません。

なんとなく思ってたけどやっぱりそれでいいんだよねって肯定された気分。
まぁ実績も経験も私は全く劣ってますが、
いいじゃん成功者がこう言ってるんだから
似たような価値観で生きてるって思えたら自己肯定感に繋がるじゃない。

文章の書き始めを見てみると
おおよそ外的要因でなにかに巻き込まれていろいろ物語が進行してるように描かれてるんですよね。
大概なんで自分がこんなことしてるんだろうとか
小説書きの自分が応えるのもおこがましいんだけど、みたいな書き方をしています。

けど好奇心からなのか小説のネタになるからかもしれないという打算でも働いているのか、ほとんど断る意思もなさそう。
仕事だからといい切ってしまってもいいんですが、何事も楽しむ思想、
それが結局思考を豊かにする行動なのかもしれませんね。

雑感

問いかけが多いのも特徴かもしれません。
これに対してどう思う?と、まるでエッセイの話題として提示されたものをそのまま疑問形にして読者に投げかけるような。
それ以外の文章はまるでそのためだけの盛大な前フリに過ぎないみたいな。

実際に編集者からそういったものがなされたかは定かではありませんが
とにかく普段の生活風景からも他者からのボールを受け取りまくり、
少しおまけ付けて投げ返してくれます。
この本を読めば、何かが解決することはないかもしれないけど
当たり前にそこにあって見失いかけてたものを再確認できる、
能力がないんじゃなくて忘れてるだけなんだよと諭されている
そんな気分になれます。

けして特別なことをしているわけじゃない。
特別なことを学んだわけでもない。
特殊な状況も普段の生活も同じ温度感で過ごせる
それが多分一番面白いことなのかもしれない

空はいつでもそこにあって、たとえ曇っててもその事実は変わらない。
明けない夜はない、じゃない。
明けてなくてもそこには存在しているんだ。

そんなの当たり前なこと。
でもその当たり前がわからなくなるから、こうして視界が曇るんでしょ。

そういうのを忘れかけたときに、読み直すようにしています。
一つのテーマは2ページほどで終わるので読み進めたり
必ずしも順路を追って読まなくてはいけないわけでもない。

なのでぺらっとめくってそこだけ読む、みたいなこともできます。

そこにはこう書いてるように見えるのです。

うまくいかないことだらけの毎日が、
こんなにも理想とは違う毎日が、
それでも二度と戻らない貴重な一日なのだと
忘れずに生きていますか


Afterword -20211019-

まぁなぜか最後に藤田幸也の詩集の中の【砂時計】から引用しましたが
私の好きになる文字書きは同じようなこの内容の文章が必ず出てきます。

私は今暗雲真っ只中ですけどね。
だからちょうど読み直したところでもあります。

思えば子供の頃も
爆笑大問題という番組の一つのコーナー、
太田光の「今週のコラム」が大好きでハマっていた時期があります。

基本的にボケ倒すのですが
同時に色んなことに造詣が深い太田に、
お笑いなのに勉強熱心だな……だから私は爆笑問題が好きなんだ、
ちゃんとフリとオチとそれを肉付ける中間の細かい情報ネタが盛り込まれている漫才のほうが好きなんだ、
と自分の嗜好に理由付けがされていくのを感じていました。

どの分野に於いても、
創作物に携わっている人の語っている姿が一番かっこいい。
もしくはそれが垣間見れるこういう動画やインタビューとかも。

作品は購入した人のものだから
解釈はそれぞれの人の中で決めればいい、とよく言う人がいますが
それはそれとしてどういう思いでそれを作り出したか私は知りたいのです。


石田衣良のR-25でのエッセイをまとめたものは計3冊出てまして、
いずれも薄くて読みやすいです。

このエッセイに出逢ってから、
どの作品書いてるか知らないまま自叙伝を購入することもありますね。
それが入り口になってやっと作品に手を出す、とか。

でも読んでない本もいっぱいあるなぁ……
とくに巻数重ねてるもの。
それこそ池袋ウエストゲートパークがそれに相等します。苦笑。

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[追記]
石田衣良さんのYouTubeあったんだ!?
今知ったのでここに追記、添付します。
あとでまとめて見ておこう。

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あ、そう言えばついにIWGP、ブルーレイ化が発表されましたね。

実は、たまたま去年にキングの側近、
G-ボーイズのエンデンジャーと知り合いまして、
今年の誕生日に彼からお酒をいただきました。
その説はありがとうございます。

彼が今何をやっているかは以下の動画を見ればわかりますよ!

車に乗ると性格が変わりますが
その時以外は超絶腰が低くてめちゃくちゃ人がいいです。
この動画を見ればわかりますね。



さらに余談ですが、note初投稿で触れた、

私が影響された文章書きというのは壁井ユカコ氏です。
内容というよりは、句読点を挟まずずらーっと一息で起承転結まで収めるというスタイルがかっこいい、面白いと思ったのがきっかけです。

ヲタク特有の早口みたいで読んでて熱量が伝わりそうな気がしてでもそれが逆にクールに見えるんじゃないかって思ってるんですがこれは逆にオタクに失礼ですねすみません。

みたいな感じ。(?)

まぁここはnoteで横書き縦読みなので多様はしませんけどね。


ところで、一番初めに"ライトノベルの定義が曖昧”と書きましたが、
これを見てどう思いますか?

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この中で一番うしろ(され竜)だけライトノベルですが
一番質量(ページ数)も内容も重いです。
いったいどの辺りがライトなのでしょうか。

川上稔に至ってはさらにこの3倍位の厚さです。
もはや鈍器ですよ。
知識が武器ってそういう……(違)

#読書の秋2021

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最後まで長文お読みいただき誠にありがとうございました。 つっこみどころを残してあるはずなので 些細なことでもコメント残してくれると嬉しいです!