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エッセイ 03 やさしさのかたまり
YouTubeを見ていると、ステキな動画に出会えることがあります。
海外のドッキリ番組に和訳をつけて紹介してくれているチャンネルがありました。
その中のひとつの動画に、
「舞台はアイスクリーム屋。少年野球のコーチが試合でミスをした息子にだけアイスクリームを買わないでいる現場を目撃したら、あなたはなにか行動しますか?」
というシチュエーションで、モニタリング番組が紹介されていました。
(あらたなYouTube動画へリンクを貼り直したので、内容の前後があります)
アイスクリーム屋のお店の中で少年野球のコーチである父親が、野球の試合でミスをした息子に向かって、
「本当にお前は俺の息子か?今日のプレーは恥ずかしいものだったぞ」
「アイスクリームはプレーが良かったものだけにやる。お前はダメだ」
と言ったあと、父親がトイレに1人で行き、息子をその場に残したとしたら、その近くにいた人たちはどのような反応をとるのか、という番組でした。
最初は大学生の青年2人が、その息子に声をかけてきました。
「自分たちも野球をやってるよ。落ち込むことないよ。アイスを買ってあげるよ。お父さんにはオレが買ったって言えば怒られないから大丈夫だよ」
と、アイスを買ってあげていました。その言葉と行動すべてがスマートでカッコいいものでした。
トイレから父親が戻ってきて、そのアイスに気付きました。
「そのアイスはどうしたんだ?」
青年が間に入ると父親は、
「俺なりの教育をしていたんだ。失敗しても報酬がもらえることは良いことではないだろう。」
と言うと、青年は、
「もし野球で勝ちたいと思うのなら、少なくとも野球とそれをプレーしていることを楽しむべきだ。自分たちも野球をしているけど、アイスを与えないことは良い教育とは言えない。そのようなことをしても意味がないことだ。だから自分はアイスを買ってあげた。このことで自分たちに怒っても良いが息子に怒る必要は全くない」
と説明をしていました。
落ち着いた言葉を通して、スポーツマンシップを伝えようとしていました。
2組目には、見た目の怖い黄色い服を着た男性が出てきました。
アイスを買ってもらえなかった息子を見て、父親に近づき、
「聞いて欲しい、今から俺を外に連れて行ってボコボコにしてもらっても構わない。どうか彼にアイスを買ってあげてくれ」
「誰もが人生において過ちを犯す。彼はまだ子供だ」
「俺を許してほしい。あなたに教育を教えるつもりじゃないんだ。ただ一人の男として伝えたいんだ」
と話しかけます。父親は
「俺なりの教育をしているんだ」と答えます。
つづけて、
「わかるよ。でも聞いて欲しい。人生とは十分すぎるほど難しい。やがて彼はそれを自分で学ぶだろう。でも彼は、父親こそが頼りになり、心の支えになることも学ばなければならない。あなたの存在は彼にとって、もっとも大切なんだ。」
「頼むから、彼にアイスクリームを買ってあげてくれ。俺が払ってもいい。アイスを買ってあげたら、彼は俺の父さんは世界一だって気持ちになれるんだ。」
この黄色の男性の言葉を聞いて、頭の中の黒い部分がさーっと奥の方へ引っ込んでいく感じがしました。
アイスを買ってあげない父親を非難するわけではなく、息子にとって父親は、なによりも大切な存在であることを伝えてくれています。
仮に父親の行動を息子の前で非難したとしたら、息子が父親を見る目に悪影響が出ることが想像できます。
父親というのは、頼りになり心の支えになるべきであると、この男性は手助けをしてくれています。
他の人に意見を言うときは、それがどんなに正しいことを伝えるときであっても「自分の中の正義を相手に押し付けてしまうことになります。」
そのことをこの2組の方々はしっかりと理解しています。
父親には父親の正義があり教育方針があります。
その部分を尊重しているからこそ、意見を言う自分に対して、父親が怒ったり不快に思うことは当然であると理解しています。
そして、そう思われることは構わないことだと伝えています。
さらに、このことで子供に対して怒るのはやめてくれ。とお願いをしています。
最初の青年たちも、とても温かでやさしい行動でしたが、黄色の男性の、父親の尊厳を保ちつつ広く大きなやさしさで、息子と父親の両方を包み込むようなこの発言には正直驚きを覚えました。
ひとつの動画でこれほどやさしさを感じられたことをうれしく思います。
ぼくも同じような過ちを犯したことがあります。ただ、ぼくはもういい大人です。ようやく気付いてきたかもしれません。人生とは十分すぎるほど難しい。
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