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『aラストティア』~荒野の楽園編~ 第三章グオーレ王国 06情報収集

第三章グオーレ王国 06情報収集

中央の広場に着くと、グオーレ王らしき像の前でなにやら人が集まっているのが見えた。
 像の前には立て札が建てられていて、こう書いてあった。
~王子の婚約者選定の儀を行う。14歳以上20歳未満の次期王の妃になりたい者、もしくは推薦された者は明日広場にて行われる予選に参加すること。予選に通過した者は夕方より城内で行われるパーティーに出席できる権利が与えられる。奮っての参加を待っているぞ ~
「遂にチャオス王子の婚約者選定の儀が行われるのか」
「でもなー、ウォーレン現グオーレ王に比べてどうもチャオス王子は頼りがない」
「言ってやるな、それでも妃になれれば王室に入れるのだからいいもんだろ」
「王室に入れば家族も身の安全が確保されて城に住めるもんな!」
「あと1年早ければ私も立候補できたのに!」
「うちの娘も応募させなければ・・・・・・。」 
立て札の内容を見て人々が口にした。
王室に入れたら城に住めるうえに身の安全が確保されるというのはどういうことなのか。ちょっと聞いてみるか。
「チャオス王子の妃になれたら何か良いことでもあるんですか?」
 優理は話をしていた男二人に質問を投げかける。
「そりゃもちろんさ!もう一生安泰よ。水も食料も手にし放題さ。なんてったってティアの恩恵を受けられるからな」
「ティアの恩恵って?」
「おめーさん知らないのか?今のグオーレ王はティアの所持者の協力を得たおかげでいつでも自然の恵みを授かることができるんだ。畑で作物ができるのを待つ必要も、貯水地の水を分け合う必要もねぇってことさ。」
いつでも自然の恵みが手に入る?そんなわけはない。ティアの所持者はティアの精霊と各々盟約を結んでいて約束があるはず。もしそれが本当ならティアの所持者は協力しているのではなく強制されている。だから助けを求めてきたんだな。
「へー、ちなみにそのティアの所持者ってどこに居るんですか?せっかくだからどんな人か見てみたいなー」
 優理はカマをかけて聞いてみる。
「どこに居るってそりゃ城の中だろ。どんな奴かは俺もみたことねぇから分からないな。お前見たことあるか?」
「そういや俺も無いな。まぁいいだろ。現にこの国は前より活気に溢れてるからな!」
「そりゃそうだな!王子にも奥さんができるわけだし、この国は一生安泰ってわけだ。あっはっはっはっは」
「坊主聞きたいことはそれで終わりか?」
「あ、はい、ありがとうございました」
「そうかそうか、おめーさんも男じゃなかったらその身で参加できたのにな。」
 最後に皮肉を添えてから二人の男は高笑いをして去って行った。
 なるほど、今の話からすると城の中に閉じ込められているのは確実そうだ。後はどうやって中に入るかだけど・・・・・・。
「なぁそこのお嬢ちゃん、俺の推薦でチャオス王子の婚約者に立候補しないか?」
 優理が悩んでいると、近くで若い女の子を勧誘している年寄りが居た。
「そりゃできるなら私もしたいですけど、王子に気に入られるような服とか準備できませんし、明日も家族のために働かなきゃいけなくて・・・・・・」
「なーに、私に任せなさい。明日一日分の給料は私が払おう。綺麗な服も私なら用意できるから、な、是非この私の推薦で応募してくれないか?」
「わ、分かりました、お願いします」
 しつこく男が説得をすると女は折れるように承諾し、その場から居なくなっていった。
 推薦・・・・・・そうか!これならカレンと二人で怪しまれること無く城の中に入ることができるぞ。そうと決まれば次は・・・・・・。
 何かしらを思いついた優理が次に向かったのはグオーレ王国の東側だった。
 正門付近は住宅が並び建つ住宅区でグオーレ王国の国民が暮らしているようだ。さらに東に行くと、鍛冶職人や労働者がいる工場区がある。
 工場区では衣服や生活用品などを生産していて、鍛冶場では国の兵士が身につける鎧や剣を主に造っているらしい。丁度仕事終わりの時間で疲れきった表情の男達が工場区から住宅街へと戻ってくる。しかし彼らは直行して家に帰る訳では無い。男達が向かうのは工場区と住宅区の間にある憩いの場所、つまり酒場であった。
 優理は酒場なら情報がたくさん集められるだろうと思い、労働者達が帰る時間を狙って酒場に入り込む。
 未成年だしお酒なんて飲めないけど入るだけなら大丈夫だろう・・・・・・。
そもそもお酒なんて有るのか?とも思ったが、流石グオーレ王国、酒場に酒がないなんてことは無かった。
 にしてもなんでこうも大人というのはお酒が好きなのか不思議だ。元の世界でも、お酒というジャンルは無くなるどころかどんどんいろんな種類が増えて進化していた気がする。
 なんとなく興味を持ってしまった優理は大人に紛れるためにも一杯だけお酒を買って空いている席に座った。
 周りの大人達はお酒が来るまでは疲れ切った表情で暗いのに、乾杯して飲み始めると陽気に笑って叫んで、楽しそうに語る。
 もしかして、お酒というのはエリクサーとかポーションみたいに回復効果があるのか?ファンタジーの冒険者達は毎回お酒を飲んでいたのか!?
 俄然目の前のお酒という代物に興味が沸いてくる。
せっかくだし一口だけ・・・・・・とゆっくり口に酒を運ぶ優理。
「まずっ!なんだこれただ苦いだけで全然美味しくない」
 お酒はポーションではなかった。よくこんなもの美味しそうに飲めるもんだ、とお酒のはいったコップを机に置く。すると優理の狙い通り、遠くからさっき見た立て札の内容が聞こえてくる
「なぁ聞いたか?チャオス王子の話」
「あぁ聞いたぜ、ついにあの臆病チャオスも結婚するんだな。」
「おまっ、臆病チャオスって、国の兵士に聞かれたら殺されるぞっ」
「笑ってるからおめぇも同罪だ。どんな子が選ばれるかねぇ」
「そりゃチャオスが選ぶのはおっぱいが大きくて、足の綺麗な女だろ」
「チャイナ服とか着させたらイチコロかもな」
「それはお前が見たいだけだろ。まぁ丈の長いドレスとか着るよりは生足とか見えて良いかも知れないなー」
「胸元は絶対開けろよ」
「知るかっ!」
 ニタニタした顔して、公共の場でする会話の内容じゃないだろう。まぁ僕としてはありがたい情報だけど。ちゃんとメモしないとな。えーと、チャイナ服・胸元・巨乳・生足っと。ん?向こうの若い男達の話も気になるな。
「最近茶髪で短髪だった若めの男来なく無いか?」
「あー、そんな奴いましたね。まぁ出入り激しいっすからねうち、誰が居て誰が居ないかなんてわからないっすよ」
「それもそうか。最近起きた天変地異のせいでまたこの国にやってくる浮浪者も多いからなー。そんな訳の分からない奴まで入国自由で働きに来るんじゃ分からないよな」
「そーっすよ、僕らは働いて稼いで食べるので精一杯ですからね。周りなんて気にしちゃいられねーっす」
 天変地異! その言葉を聞いて優理はその二人のところに近づいて話しかける。
「あの、すみませんちょっとお話いいですか?」
 二人の男は急に声をかけられて驚いていたが、席を一つ空けてくれた。
「ありがとうございます。僕、今日グオーレ王国にやってきた者なんですけど、一体いつからこの国はあったんですか?」
 男はなんでそんな質問するんだ?という顔をしながらも答えてくれた。
「いつから存在していたか?えーっといつからなのか正確には分からないが、少なくとも1年前には存在してたよ。俺がグオーレ王国にきたのがそれくらいだからな」
い、1年前!?そんなに前からあったのか・・・・・・。ん?ちょっと待てよ。
「ち、ちなみになんですけど、このセピア世界に来たのはどのくらい前からですか?」
「セピア世界に来たのは確か2年くらい前だな」
「あーそれは俺も同じっすね。でも確かグオーレ王国自体は50年くらい歴史ある国っていう噂もあるらしいっすよ」
 2年どころか50年!!??そ、そんな馬鹿な・・・・・・。だめだ、予想外過ぎて頭が追いつかない。
「あ、そうなの?それは知らなかったわ。で、兄ちゃんはなんでそんなこと知りたかったんだ?」
「あ、えーっと僕の村は凄く貧しかったので、グオーレ王国は凄い栄えているなって思って知りたかったんですよ」
 咄嗟に理由を考えて口から発した。
「そうだったのか。なら良かったな、この国でちゃんと働けば生活に困ることは無いだろから頑張れよ!」
 男はグットサインを向け、優理の肩をボンと叩いて言った。
 痛いなぁ・・・・・・力加減考えろよ、ほんと酒によった大人はろくでもないな。
 優理は作り笑顔をして右肩を押さえながら席に戻り、考え始める。
 このセピア世界について知らないことは多すぎるが特に気になっている点が2つあった。1つは異世界なのか現実なのか。もう1つはいつから存在しているのかということだ。   
1つめについては現実であり異世界であるというのが結論でいいと思うが、2つめは全く検討がつかなくなってしまった。なぜならグオーレ王国は栄えすぎているからだ。
天変地異による世界の滅亡から更正まで、優理がヒロキチ村長の村で目覚めるまでの期間で行われたとしたら明らかにこの現状はおかしい。仮に男の言うように50年以上前からあるなら納得は行くが、それは現実では無く完全な異世界。しかし2年前にこのセピア世界に来たという人物も居る。つまり僕もきっとこの世界に来たのは2年前ってことで・・・・・・。
 あー、考えても分からないことばかりだ!これは後でカレンにも一緒に考えてもらうことにしよう。

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